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1993年12月4日に30-21で勝って以来、31年ぶりの筑波大戦勝利だった。
青山学院大が9月29日に秩父宮ラグビー場でおこなわれた関東大学対抗戦で今季初勝利を挙げた。
23-22だった後半28分、ゴールポスト下にトライを奪い、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出されたLO荒川真斗は、そのシーンを振り返り、「みんなが作ってくれたスペース。そこに自分がボールを置いた」と話した。
1週間、2週間準備をしてきたからつかめた勝利ではないと話した。
「このチームが始まってから取り組んできたことを出せました」
相手は愚直に体を当ててくる。
「それ以上に(自分たちも体を)当てて、走り切ると決めていました」
前半5分に先制点を許したものの、青山学院大の勝利への思いはまったく揺るぎなかった。
前半19分のトライは、スクラムから攻めた。やや左のスクラムから右へ攻め、ブレイクダウンができる。そのすぐ横のスペースに切れ込んだWTB川端航聖がインゴールまで走った。
26分には、スクラムで得たFKからゴールラインに迫り、FWで攻め立てる。最後はPR木村陽太がインゴールにねじ込んだ。
バワーを見せた木村は「ゴール前5メートルを攻め切ることにこだわってきたことが生きた」と言った。
前半を17-10とリードして終えた青山学院大は、後半も先手を取り続けて、ゲームの主導権を握り続けた。
後半8分にPGを追加。10分にWTB飯岡建人に走られてトライを許すも、13分にPGで加点。23-15とリードを保った。
ブレイクダウンで対抗できたことが大きかった。
創部100周年の青山学院大は、今季のターゲットを『全国大学選手権8強』として部の歴史を変えようとしている。河村主将は、2月から「コンタクトで負けない、走り勝つ、といった基礎的な部分にこだわって積み上げてきた」と話す。
練習量は昨年と比べて2倍強。走る距離も3倍に増えた。
「どんなチームが愛されるのか。どうすれば80分を戦い終えて笑えるチームになれるのか」と考えて日常を過ごしてきたことが、この日の結果に結びついた。
前述の後半28分、荒川のトライは、CTB榎本拓真が猛タックル、相手にボールをこぼさせたところから始まった。
芝の上に転がったボールを仲間が蹴り込み、筑波大ゴール前へ。キャリーバック後のスクラムから攻めてトライが生まれた。
榎本が鋭く踏み込んだタックルを振り返る。
「外が余っていた(外にアタッカーがたくさんいた)のですが、判断し、思い切り出ました」
この日チームは、好ランナーが揃う筑波大に対し、SOにボールを大きく動かされないように、圧力をかけていこうと話していた。
それでも、オーバーラップ状態を作られているならステイして、下がりながら追い込むのがセオリー。しかし、試合の中で何度か走られたシーンがあったから詰めた。
開幕から明治大に17-73、帝京大に5-40と敗れたものの、それぞれの試合を検証し、あらためて自分たちがやるべきプレーを明確にした。そして、選手間の信頼も密になっていたから、一瞬の状況判断に周囲も呼応した。
試合後の記者会見で河村主将は、今季のチームの変化をいくつか挙げた。
挨拶をする。靴を整頓して並べる。時間に余裕のある4年生がいるなら、練習前のグラウンドの準備を率先してやる。
そんなこともチームが結束するための要素になり、この日の勝利が訪れたと話した。
試合後、スタジアムの前で作ったハドルの前で主将は部員たちに言った。
「きょうは勝ったけど、目標は全国ベスト8。また火曜日から、試合のメンバーだけでなく、全員でやろう」
この秋、31年ぶりの筑波大戦勝利の次は、何が待っているだろう。