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グリーン×ゴールドの12番は、豪快に何度も走った。
この試合でプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出された南アフリカ代表のCTBチュミザ・ガウェは、10回のボールキャリーで66メートル走り1トライ(南アフリカ協会のHP参照。以下同)。資料には166センチ、81キロとあるが、本当はもっと重そうだ。
日本代表のディフェンスに食い込み、チームに勢いを与え続けた。
9月27日に南アフリカ・ケープタウンでおこなわれた『WXV2』(女子ラグビーの世界大会/ディビジョン2)の開幕戦、南アフリカ代表と日本代表の試合は、31-24のスコアで前者が勝利した。
前出のガウェだけでなく、南アフリカの選手たちはサクラフィフティ―ンの選手たちより、大きく、パワフルだった。
赤×白のジャージーは、必死にタックルし、結束して個の強さに対抗したが、及ばなかった。
先制したのは日本。前半10分、時間をかけて積み上げてきたモールを押し切った。
20分には、その先制機を活かす。ゴール前のラインアウトでモールを警戒する相手の裏をかいた。
確保したボールを受けたCTB弘津悠が防御裏にグラバーキックを転がし、SO大塚朱紗がチェイス。インゴールに押さえた。
サクラフィフティーンが前半に奪ったトライはその2つだけ。
相手にスクラムで圧力をかけられ、モールや、ピック&ゴーで攻め切られること3度。前半は12-17とリードされて終わった。
お互いが自分たちの強みを軸にトライを取り合った前半。それは後半も変わらなかった。
ただ、リードした南アフリカが先手を取り続けたからサクラフィフティーンは苦しかった。
勝者に勢いを与えたのは後半5分のトライだ。
日本は南アフリカのタテへのランを受け続け、重ねられること8フェーズ。最後は左のアウトサイドをパリ五輪にも出場したWTBアヤンデル・マリンガに走り切られた。
コンバージョンキックも決められ、12-24と差を広げられた。
9分にはラインアウト後のモールを押し、FL齊藤聖奈がタイミングよく持ち出してトライ。その4分後にもラインアウト後のモールから攻め、その後のアタック後に再び齊藤がインゴールに入った。
後半14分に24-24と追いついたものの、得点はそこまでだった。
18分に奪われた勝ち越しのトライは、シンビンで一人少ない時間帯だった。
SO大塚が、ラックでのクリーンアウト時に肩が相手の頭部にヒットしたとされて一時退場。その直後のPK→ラインアウト→モールで奪われたものだった。
30分過ぎにはスクラムから攻め続け、FW、BK一体となって前に出た。トライラインに迫り、最後はPR峰愛美がゴールポスト下に入ったが、直前にオブストラクションがありTMO判定を経てトライキャンセルとなった。
その後も日本は敵陣深くに攻め込み、77分にはゴール直前で得たPKからLO吉村乙華が速攻。トライラインまで数センチのところまでボールを運んだ。
後退しなかった相手ディフェンダーのタックルで阻止された。タックラーにはイエローカードが提示されたが、ペナルティトライをサクラフィフティーンに与えてもいい状況だった。
得点差が示すように、ボールをよく動かす日本、パワフルな南アフリカとスタイルこそ違えど、チームの総合力では大きな差はなかった。
サクラフィフティーンにとっては悔しい試合だった。
長田いろは主将は、「自分たちが準備してきたことを、FWもBKも出せて(ボールを)つなげられました。自信を持って試合に臨んだので、そこがうまくいったのはすごくポジティブな気持ちです」と前向きに話した。
ただ、相手のモメンタムを受けてうまくゲームを進められなかったことを反省。次戦に向けて、トライを取り切る力を上げたい、ミスをなくしたいと話した。
レスリー・マッケンジー ヘッドコーチは、「スピードとフィジカルに関しては出せていた」と選手たちを称えた上で、「防御時のラインスピードはもっと上げられるはず。そして、もっとコネクションを密にできるはず」と注文を口にした。
巧みなグラバーキックでトライを呼んだCTB弘津は、キャッチ&パスに注力して準備してきたことを伝えた。レシーバーの前めに放るパスを徹底したことで、アタックラインのスピードが増したと感じたようだ。
2トライの齊藤は、ラインアウトのモールについて、「いいセットアップができれば自分たちの思うような低い姿勢で組める。トライに結びつけられる」と手応えを話した。
齊藤はこの試合で10回のボールキャリー。98メートルのランメーターと、21タックルはチームでナンバーワンと、トライシーンだけでなく攻守で貢献度が大きかった。
この試合、日本が202のパスをしたのに対し南アフリカは80。タックルはそれぞれ、169と200だった。
ボールをよく動かして攻めた日本は、守っては、ランで攻めてくる相手に何度もタックルしたことが分かる。そして、南アフリカも必死に守った。
試合終了後の選手たちの喜びようと、スタンドの沸き方に、熱の入った試合だったことが表れていた。