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テストマッチらしい緊張感のある40分で始まった。
前半を終えて10-10。後半20分を過ぎても20-10(フィジーのリード)と、勝負の行方は、まだ分からなかった。
しかし、ファイナルスコアは41-17と開いた。
9月21日(土)、花園ラグビー場でおこなわれたパシフィクネーションズカップのファイナル、日本代表×フィジー代表は、結果的にフィジーが勝った。
それぞれ奪ったトライは5と2。日本は終盤に崩れた。
キックオフ後、先に自分たちの時間を作ったのは日本だった。
キックオフ直後から、掲げる超速ラグビーを全開。7分には相手反則を誘い、FB李承信のPGで先制。そして20分には右スクラムから攻め、CTBディラン・ライリーが好走からトライを挙げて10-3とした(Gも成功)。
フィジーのHOテヴィタ・イカニヴェレ主将は戦いを振り返り、「日本は序盤に強みを出した。前半はフィジカルも強かった」と話した。
だから、日本ペースに引きずり込まれないように全力で抵抗。防御で圧力をかけ、攻めてはFWのピック・ゴーで前に出た後、ボールを動かした。
32分には日本側が蹴ったボールがディフェンダーに当たり、弾んだところを足にかけて走った。
WTBヴアテ・カラワレヴがインゴールへ入り、10-10としてハーフタイムに入った。
何度も好機を作るも、パスミスやハンドリングエラーで、なかなか攻めきれなかった前半の日本。
フィジーは少ないチャンスをものにして得点した。
同点で残り40分となり、「自分たちの勝利を確信した」のはフィジーの方だった。
チームを率いるミック・バーン ヘッドコーチ(以下、HC)は、今大会の戦いを振り返り、「どの試合も後半に得点を重ねてきた」と言った。
「私たちは、最高レベルのコーチ、スタッフを揃えて、フィットネスとフィジカルを高めてきました。前半をこのスコアにできれば、必ず勝てると確信しました」
後半は、その言葉通りの展開となった。
フィジーは16分にSOケイレブ・マンツのPGで勝ち越すと、19分にはスクラムから攻めて7フェーズを重ねる。最後は途中出場のWTBポニパテ・ロンガニマシがトライ。20-10とした。
その3分後、日本が敵陣22メートルライン付近でラインアウトを得た。
しかし、スローイングのボールは後方へ抜け、FBマンツが50/22メートルキック。フィジーはそこから日本陣に居座り、27分にトライで加点する。Gも追加して27-10として流れをつかみ、さらに2トライを重ねた。
あのラインアウトが成功していたら、日本はスコアを詰め、逆転できただろうか。
テストマッチとは拮抗した中で、いかに自分たちが突破口を開くか、相手に勢いを与えないか。その観点から考えれば、悔やまれるシーンとなった。
SO立川理道主将は、競っている時間帯の攻防を「アームレスリングのような展開だった」と話した。
その中で好機を攻め切れなかったことについて、「前半、勇気を持ってもっと自分たちのスタイルを出せていれば。10番として引っ張れなかったことが悔しい」と話した。
試合後のエディー・ジョーンズHCは、「エフォート(努力)は良かった」と選手たちを労いながら、この試合に関しては、すべての面で相手が上だったとした。
「セットピースのコンテスト、ブレイクダウンのコンテスト、そして空中戦。すべて勝つことができませんでした」
現体制始動時と比べれば良くなっているとする。
立川主将のリーダーシップのもとチーム内のコネクションは深まり、それがフィールド上でも生かされている。今大会では、好アタックを何度も見せられた。
チームカルチャーの醸成も進んでいる。
その一方で、「きょうの試合は、自分たちの現状を確認するとても良い機会になった。不足している部分が何か確認できた」と話した。
変革と進化には痛みが伴う。
プレッシャーがかかった状況で、何名かの選手は古い癖に戻ってプレーしてしまっていたと指摘した。
「オーソドックスなプレーに戻ってしまっていた。そういったジャパンは強くないと実感できたと思います。やはり他のチームと差をつけるところはスピードであり、大胆さ、果敢な判断ができるところ」
超速を貫く意志の徹底を、あらためて強調した。
この日のフィジーは、自分たちの強みと日本対策をうまくミックスさせて戦っていた。
サイズとパワーで上回っている。ピック・ゴーで人を集め、空いたスペースにボールを運んだ。
日本は同じことはできない。3つのパスをつないでのボールキャリーと前進を目指している。
「そこで世界一になっていきたい。それができれば、ディフェンスにどんどんプレッシャーを与えていける」
この日は、ハンドリングミスが多発した。スキルレベルについて苦言を呈した。
PNCが終わり、チームは一時活動を休止。次は、10月26日におこなわれるニュージーランド代表戦への準備から活動が再開する。
「起こったことは起こったこと。過去は過去。これからは、次に起こることに集中します」という指揮官は、日本代表として初めて勝利するために、スピードあるプレーで勝負を挑みたいと話した。
そのオールブラックス戦、欧州遠征と続く戦いに臨むスコッドについて質問が出ると、これまで何度も言ってきたが、それでも伝わっていないなら謝罪するし、「100回でも何回でも伝えます」と言った。
「前回のワールドカップでジャパンは、とても年齢層の高いシニアプレーヤーたちで戦いました。今回自分が就任した際に任された仕事というのは、ジャパンの新しいスコッドを形成することです」
「若いプレーヤーは嫌いですか?」の言葉に続けた。
「本当に何度でもお伝えします。自分は100パーセント、若い世代、次の世代のプレーヤーたちを輩出していかないといけないと確信しています。新しくフレッシュなタレントを発掘していきます」
そして、(試合の)結果ベースで考えるのではなく、チーム、選手たちの成長という視点で見つめれば、予想していたより先に進んでいると締め括った。