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サヴェアからスポンジのように吸収したい。ロトゥ・イニシ(トンガNO8)はコストリーの元チームメートで、日本好き
プレーは激しいが、笑うとかわいい。(撮影/松本かおり)

サヴェアからスポンジのように吸収したい。ロトゥ・イニシ(トンガNO8)はコストリーの元チームメートで、日本好き

田村一博

 手に入れたプレー環境の高さが、成長の速度をはやめてくれている。
 トンガ代表の8番を背負うロトゥ・イニシがいい働きをした。

 9月14日(土)に秩父宮ラグビー場でおこなわれたパシフィックネーションズカップの5位決定戦、トンガ×カナダでのパフォーマンスは勝利への貢献度が高かった。

 ファイナルスコアは30-17。自らトライを上げるシーンはなかったけれど、チームにモメンタムを与えるプレーをした。
 ボールキャリー10回はSOのパトリック・ペレグリーニと同数のチーム最多。64メートルのゲインメーターも記録した。タックル8回はチーム3番目。タックルブレイクも3回あった(チーム2位)。

 今大会はどの試合もパフォーマンスが安定している。

 プールステージの2戦目、フィジー戦には19-50と敗れるも、その一戦でも10回のボールキャリー。12回のタックルと積極的だった(いずれもチーム2位のスタッツ)。
 初戦のサモア戦(17-43)では9キャリーで2トライと決定力を見せた。18回のタックルは運動量の豊富さを表している。

 3試合連続で80分、フルタイムでプレーして大会での全試合を終えた。
 攻守の両局面でブレイクダウンへの参加数も多く、チーム内での信頼も高まっている。

 PGで先制され、19-10のスコアでハーフタイムを迎えたカナダ戦は、後半28分には22-17と迫られる場面もあった。決して、ラクな試合ではなかった。
 イニシ自身も「厳しい試合になることは分かっていました」と話し、「しっかりとゲームプランに沿って、着実に実行することが大事だった」と続けた。

 1999年3月26日生まれの24歳。幼い頃からニュージーランドで育ち、タカプナラグビークラブの出身。10代でノースハーバー州代表(NZ国内州代表選手権)に選ばれ、2022年シーズンからはモアナ・パシフィカにも加わり、スーパーラグビーの舞台に立った。

 モアナ・パシフィカでの存在感も年々増している。
 2季目に6試合に出場すると、3季目の2024年シーズンは12試合に出場して11戦先発。CTBの兄、フィネとともに2025年シーズンまで契約を延長した。

ボールキャリアーとして秀でている。(撮影/松本かおり)

 2024年シーズンはCTBのフィネとともにファンが選ぶプレーヤー・オブ・ザ・イヤーに共同選出された。さらにロトゥに関しては、チーム表彰で「年間最優秀フォワード賞」「年間最優秀アタッカー賞」「プレイヤーズ・プレイヤー賞」に選ばれている。

 カナダ戦に勝利し、大会での5位を決めた後、自身のプレーについて問われたイニシは、「自分の仕事はボールをキャリーすることで、そこが自分の強み。キャリーして倒されても、立ち上がって前に出る。その自分の役割を着実に遂行した」と話した。
「それを繰り返すことで、バックスが得点する土台を作りました」。

 2024年シーズンまでに、モアナ・パシフィカでのプレー経験も3季に増えた。出場機会も順調に増え、レベルの高い選手たちの中で揉まれる環境が成長速度を高めてくれていると感じる。

「試合の最中、ずっと周りに注意を向けている」と話す。
「ボールキャリーをしている時も、オフ・ザ・ボールの時も、しっかり戦いの中に自分を置き続けるようにしています。ディフェンスでもアタックでもチームにコミットし続けています」

 ボールが自分の手にない時も役割を見つけ、プレーするのがインターナショナルプレーヤーのスタンダードだ。

 学ぶ意欲が高い。だから、2025年シーズンからオールブラックスのNO8、アーディー・サヴェアがモアナ・パシフィカに加わることになってときめいた。

「世界最高のプレーヤーがチームメートになると聞いて、驚いたし、嬉しかった。たくさんのことを学べる。僕はスポンジのように、彼からすべてを吸収したいと思っています。そのためにも、できるだけ(多くの試合で)一緒にプレーしたいですね」

 ウェストレイクボーイズハイスクール時代は、現在日本代表でプレーするティエナン・コストリーとともにプレーした。静岡ブルーレヴズのPRショーン・ヴェーテーもチームメートだった。
 ともに戦い、大会で優勝したこともある。

「自分自身も日本が好きで、昨年は旅行で来日しました。ディズニーランドで彼女にプロポーズをしました。お陰で、いまはフィアンセとなりました」

 日本の話になると目を輝かせ、「何度でも来たいところ」と言って、「(将来)チャンスがあれば、日本に住んでプレーするのもいいかもしれないですね」と続けた。

 NZラグビー育ちだけに、同国代表への可能性はあった。しかし早々にセブンズ代表でプレーするなど、トンガ代表への思いは強く、揺るぎない。
 この人の価値観は、愛情がすべてなのかもしれない。

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