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元スコットランド代表主将のグレイグ・レイドローが、国内リーグワンで今季から1部に昇格する浦安D-Rocksのヘッドコーチに就任した。同部で昨季まで務めたアシスタントコーチから内部昇格した。
現役生活の晩年は、D-Rocksの前身であるNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安でもプレーしていた。
縁のあるクラブにおいて人生で初めて指揮官となったのを受け、8月28日、千葉県内で会見した。
「若く経験のないコーチですが、現役生活の長いキャリアのなかでたくさんのヘッドコーチと働いてきた自負があります。それを活かして率います」
約50分、壇上で語り、閉会後は会場の入り口付近へ移動。抽選でこのカンファレンス参加したファンクラブ会員が帰るのを見送った。
その後、メディアの希望で囲み取材も実施した。
――すでにチームは練習を始めているようです。
「いい練習ができている感覚。もちろん試合がないためプレッシャーは少ない状況ではありますが、自分たち(スタッフ)が作ろうとしている環境に選手たちが前向きな反応を示してくれています。昨季の入替戦の直後から『この勢いを殺さないでいこう』と伝えていました。当時の雰囲気をそのまま引き継げている気がします」
――いま話題に挙がった昨季の終わり頃について。2部の順位決定戦の期間中、当時アシスタントコーチのレイドローさんがチームに好影響を与えたようです。内山浩文ゼネラルマネージャーが会見でも話していました。
「(それが何を指すのかは)内山さんに聞いてみないとわかりません。ただ、私は、常にプレッシャーのある環境で戦ってきました。順位決定戦の重圧があるなかで、頭をクリアにして、冷静さを保って戦う(ことの重要性を説いた)。それが(クラブに)評価されたのではないでしょうか。自分はプレッシャー下でのメンタルスキルを持つことが重要だと思っています」
――ヨハン・アッカーマン前ヘッドコーチ時代から引き継ぎたいこと、いまから新しく採り入れたいことをそれぞれ。
「ヨハンはすごく考えている、冷静なコーチ。特にFWの部分でたくさん彼から学びました。チームとしてFWに求められるタフさはヨハンが培ったもの。それをさらに高めていきたいという考えはあります。引き続き(選手に)挑戦を課していきます。
一方、自分は、ラグビーをどのようにしてプレーするべきかについてはっきりとしたビジョンを持っています。それをプレッシャー下で遂行できるよう落とし込みたい。そのための環境を作っていきたいです」
――現在、チームからSHの飯沼蓮主将、PRの竹内柊平選手、CTBのサミソニ・トゥア選手が今年の日本代表へ招集されています。
「(自軍の)たくさんの選手が、日本有数のトップレベルの選手と肩を並べて戦える機会を得れば得るほど、チームにいいことをもたらす。特にTK(竹内)はジョージア代表やイタリア代表相手にもいいスクラムを組んでいる。ソニ(トゥア)はもとから持っているパワーに加えスキルも学んでもらえたらと考えています」
世界的なSHのヘッドコーチ就任。ラブコールを送ったクラブ関係者は「インターナショナルのコーチへとキャリアを繋いでもらいたい」と展望する。
「だから、その都度、その都度、そこ(本人へのオファー)を確認しながらこちらの契約年数を増やしていくのか(を検討する)。一番は、彼のキャリアにコミットすること。本人はスコットランド代表には…(携わりたいはず)」
囲み取材では、その論旨をもとにした問いもあった。レイドローはまず、スマートに返す。
――レイドローさんご自身の夢は。例えば、代表のヘッドコーチになるなど。
「いまのところはそういった夢はないです。D-Rocksのベストを引き出すのが一番。何に集中しなければいけないのか、というところが、一番のフォーカスです。先にフォーカスしすぎると、いまがおろそかになる」
明言を避けたところで、スタッフが「そろそろ最後の質問を」と促す。
――改めて、将来的にスコットランド代表を率いたい気持ちはないのですか。
「いまの話、聞いていましたか?」
本人は苦笑して続ける。
「もちろん、長くコーチをやる道のりのなかで、スコットランドへの愛国心や情熱は強く持っているし、絶対に(代表指揮官になりたい思いが)ないとはいえないのですが、いまはコーチとして学び、成長する。その後は、なるようになる」