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【Just TALK】「若い選手の感情が、ミスでぐちゃぐちゃにならないように声をかけてあげる」。ディラン・ライリー[日本代表]
イタリア戦では2トライを奪った。(撮影/松本かおり)
2024.09.05
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【Just TALK】「若い選手の感情が、ミスでぐちゃぐちゃにならないように声をかけてあげる」。ディラン・ライリー[日本代表]

向 風見也


 口ひげがキレイに整っている。そのことを日本語で質問されると、英語で通訳がなされる前に笑った。

「あまり、深い意味はなく、ただただ長くなって、唇に当たって邪魔になっていたので、整えました。鼻下をきれいに剃ることはないかな、と思っています」

 ラグビー日本代表のディラン・ライリーは、南アフリカに生まれ、10歳でオーストラリアに移住。2018年に日本の現埼玉パナソニックワイルドナイツに入団すると、強くて速くてスキルの高いアウトサイドセンターとして頭角を現す。

 2021年に代表デビューを果たし、2023年にはフランスでワールドカップに初出場。身長187センチ、体重102キロの27歳は今年、エディー・ジョーンズ ヘッドコーチのもとでもナショナルチームに入っている。大幅に若返ったチームにあって、存在感を示す。

 オンライン取材に応じたのは9月4日。8月から参戦するパシフィックネーションズカップ(PNC)のアメリカ代表戦を、3日後に控えていた。

——昨年までのジェイミー・ジョセフ前ヘッドコーチ体制下といまとの違いは。

「新しいコーチ、スタイル、ラグビーを経験しているなか、多くの学びがある。前のスコッドは年齢が高く経験値があったのに対し、エディーさんはより若くエナジーのあるチームを作っています。日本国内にタレント性がある選手がたくさんいるなか、次のワールドカップに向けて土台作りをしていると感じます。長い学びの期間を経て成長できるチームです。

毎週、毎週、ビルドアップしているのが現状です。先週(後述)は自信をつけられました。その上にさらに積み上げてゆく形で、このシーズンを乗り切りたいです」

——前体制時といまとで、アウトサイドセンターの役割に違いはありますか。

「大きな違いはないと思っています。似ている点を挙げるなら、自分の最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、自分自身のプレーをやらせてくれるところです」

1997年5月2日生まれ。南アフリカ・ダーバン出身。187センチ、102キロ。(撮影/松本かおり)

——現スコッド内にあって希少なワールドカップ経験者。周りをフォローアップする役割を期待されています。

「そのことについて自分がたくさんのことをしているとは思っていません。チームにはポジションごとに素晴らしいリーダーがいる。BKではハルさん(立川理道主将)。PNCの期間中、よくリードしてくれています。FWでは坂手(淳史)が長い間リーダーシップを取っています。自分はその後ろで、できる限りのサポートをしている状態です。フィールド上で周りに自分ができることとしては…。(精神的に)アップダウンのある若い選手が、ミスを続けて感情がぐちゃぐちゃになるようなタイミングで、声をかけてあげる。

オフ・ザ・フィールドでは、より選手たちがコネクトできるようなことをします。何か特別な出来事を、というよりは、毎日の積み重ねでコネクションを作る。たとえばランチで、いつも同じ人と過ごすのではなく、別な人と一緒に座り、日々のことについて聞く。そうしてお互いを知ってゆく。ここ数週間、そのことへ選手がより積極的になっていて、繋がりがフィールド上であらわれています」

——カナダ代表とのPNC初戦(日本時間8月26日/バンクーバー)は55-28で勝利。序盤に大きくリードしながら、中盤以降は膠着状態に陥りました。

「より容赦なくプレーし続けること、適応することが大事です。テストマッチは、一瞬でどんな展開にもなりえます。またトレーニング中は何かミスがあれば流れを止め、どう修正するかを皆で話す時間がありますが、試合中はそれができない。何か起こったことに対していかに速くコネクションを取り、リアクションすることが必要です」

——次のアメリカ代表戦でのキーポイントは。

「アメリカ代表はフィジカルが強く身体が大きい。自分たちは試合の最初からそこにマッチしにいく。FWは大事な役割を担っています。BKは前回のカナダ代表戦で見せたように、試合の最初から展開の速いラグビースタイルする。そしてそれを長く続ける。試合のなかで、自分たちの成長を見せていくことが大事です」

——次戦の会場は熊谷ラグビー場。ライリーさんが所属する埼玉パナソニックワイルドナイツの本拠地です。

「自分自身にとって、熊谷では初めてのテストマッチです。ワイルドナイツファンの前でできるのは楽しみです。日本代表が最後に熊谷でテストマッチをおこなったのは2019年のワールドカップ日本大会前の南アフリカ代表戦だったと思います。それは(代表入り前の)自分も観に行っていて、よく覚えています。

熊谷は素晴らしいスタジアムであり、グラウンドですが、それ以上に、そこに来ていただけるファンが特別です。(近隣のトレーニング場では)外で長く私たちの練習を見てくれたり、出待ちをしてくれたりしています。彼らがそこにいることを感じています。ずっと使っている会場で試合ができるのは楽しみ。できるだけ多くのファンに来ていただきたいと思っています」

2027年のワールドカップは、ライリーが競技を始めたオーストラリアでおこなわれる。ここまで21キャップを取得した本人は、地に足をつけている。

「前回のワールドカップ(フランス大会)では多くの学びを得られましたが、いまは直近のパフォーマンスにフォーカスしています。毎週、一貫性を持ったいいパフォーマンスができれば、それが自分の自信に繋がり、さらに一貫性のある働きにも繋がっていくと思っています。この先、何が起きるかはわからない。だから、その時のパフォーマンスにフォーカスしたい。それが目標です」

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