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NPCで日本選手対戦。三宅駿はカンタベリーの10番。紙森はウェリントンで勝利に貢献
カンタベリーの三宅駿(左)とウェリントンの紙森陽太。(撮影/松尾智規)

NPCで日本選手対戦。三宅駿はカンタベリーの10番。紙森はウェリントンで勝利に貢献

松尾智規

 9月に入りニュージーランド(NZ)に春がやってきた。
 数週間前の寒さが信じられないくらい、日差しが温く心地よい陽気の中、スーパーラグビーの選手がずらりと並ぶ豪華なメンバーがそろったNPC(NZ国内選手権)の試合で、日本人対決があった。

 8月29日(水)に三宅駿(みやけ・しゅん)が、地元のクライストチャーチでカンタベリー代表デビューをした。
 その4日後の試合のメンバーに再び三宅の名前があった。デビュー戦のベンチスタートから先発メンバーに昇格。歴史のあるカンタベリー代表の背番号10の赤黒ジャージに日本人が袖を通す快挙だ。

 過去には、アンドリュー・マーティンズ、ダン・カーター、リッチー・モウンガなど、レジェンドたちが袖を通している。

◆カンタベリー×ウエリントンの好カードに日本選手出場の喜び。


 三宅のカンタベリー代表での初先発となる試合は、9月1日、クライストチャーチ市内から北へ車で45分ほどの所にあるランギオラで、ウエリントンを迎えておこなわれた。

 カンタベリーのメンバーを見ると、キャップホルダーのPRジョー・ムーディーとCTBブレンドン・エノー、三宅の高校時代一緒にプレーしたLOザック・ギャラハー、近い将来オールブラックス入りが期待されているLOジェイミー・ハナ、NPC終了後に横浜キヤノンイーグルスに移籍するFL/NO8ビリー・ハーモンを含む実力者が先発メンバーに名前が挙がった。

 ベンチを見ても、FLトム・クリスティー、1キャップホルダーのCTBダラス・マクロードなどスーパーラグビーの選手の名前が登録メンバーにずらりと並ぶ。

三宅は、カンタベリーで初の先発となった。(撮影/松尾智規)

 一方のウエリントンも豪華なメンツが揃っている。
 ハリケーンズで活躍するPRザヴィア・ヌミア、LO/FLケイリヴ・デレイニー、FLブラッド・シールド、NO8ピーター・ラカイ、CTBライリー・ヒギンズ、1キャップホルダーのCTBピータ・ウマガ‐ジェンセン。
 モアナ・パシフィカでプレーする11番ペペサナ・パタフィロ、14番ジュリアン・サヴェアの実力者が先発メンバーに名前が挙がった。ベンチにもスーパーラグビーの経験がある選手が居るなど豪華なメンバーとなっている。

 このメンバーの中に17番を付けた日本人のPR紙森陽太(かみもり・ようた / 日本ではクボタスピアーズ船橋・東京ベイ所属)の名前があった。

 試合は、序盤から押し気味のウエリントンがカウンターアタックからチャンスを掴みLOデレイニーがインゴールに抑えて先制する(7-0/10分)。
 このトライをきっかけにウエリントンに勢いがつき、前半だけで4トライ。前半終了間際に1ペナルティーゴール(PG)を追加して、31-0とウエリントンが大きくリードを奪ってハーフタイムに入った。

 後半に入りカンタベリーが3トライを返すも、ウエリントンは2トライを追加。前半の得点差が影響して21-46の大差でカンタベリーが敗れて2連敗。ウエリントンは開幕から4連勝と好調をキープした。
 ウエリントンの出来の良さが目立った試合。その要因は、FWが常に優勢だったことだ。豪華なBK陣が自由自在に攻撃できたことが大きい。

 その中でもひと際目立ったのは、12番ヒギンズ、13番ウマガ‐ジェンセンのCTBコンビだった。
 実力がありながらも、ハリケーンズでは層の厚いCTBにより出場機会に恵まれなかった。しかしこの試合では、その鬱憤を晴らすかのようにプレー。カンタベリーのディフェンスを何度もこじ開け、チームを勢いづけた。

◆「今日は全然」と三宅。紙森はクロッティと会う


 カンタベリーの司令塔の三宅は、序盤こそ巧みなパスを何度か見せていた。
 しかし徐々にFW戦で劣勢になった事で攻撃面でもプレッシャーを受ける。前半途中で肘を痛めてからは厳しいプレーが続き、ハーフタイムで交代となった。 
 試合後の三宅は、「今日は、全然でした。フィジカルでやられました。ビデオを見て来週出直します」と肩を落とした。負傷した肘は、数分間、少し痺れがあったそうだ。しかし、大事には至らなかったようだ。

 ウエリントンの紙森は、後半20分から登場した。
 試合を通じてカンタベリーを圧倒したスクラムは、紙森が入った後も変わらず、押し続けた。常にプレッシャーをかけていた。
 何度かボールキャリーで突破を試みるプレーも見られた。出場した20分間を常にひた向きにプレーする姿が印象的だった。

 今季3試合目の出場を終えた紙森は試合後、「今日はウエリントンがすべてにおいて勢いがあり、良い試合ができたと思います」と話し、愛嬌のある笑顔で素直に勝利を喜んだ。
 スーパーラグビーでバリバリやっている選手に囲まれている。その環境について、「やっぱり、レベルの高さ、フィジカルの強さと、日本と違う部分がいっぱいある。非常に良い経験をさせてもらっています」と言い、「(自分自身)まだまだな部分も多くあるので、成長できるように精一杯頑張ります」と続けた。

スピアーズ再会。昨季まで在籍していたライアン・クロッティ(右/現・カンタベリー)が紙森に駆け寄った。(撮影/松尾智規)

 英語に関しては、「自分は得意ではないので、勉強しながら話しています。プレーでは、特に問題はないです」
 NZに来てからも勉強を続け、単語をつなぎ、「しっかりやれている」そうだ。

 気になる食生活については、「自炊していますが、特に今の所は困っていません」と話した。日本から来て、食生活に苦戦する人は少なくない。適応力の高さを感じさせた。

 紙森に話を聞いている途中でカンタベリーのCTBライアン・クロッティ(昨年までスピアーズでチームメイト)がやって来た。クロッティが「紙森、お疲れ、久しぶりね、元気?」と日本語で話しかけた。
 久しぶりの再会とあり、2人に笑みがこぼれる。クロッティが英語と日本語を織り交ぜて話し、「私が(紙森の)先輩ね」など、じゃれ合う場面も見られた。

 ラグビーはもちろん、食生活も含め、とても充実したNZ生活を送っている紙森。ウエリントンでのプレーは期限付きとなっている。しかし、スピアーズから同チームに加わっている加藤一希(かとう・かずき)とともに、NPCシーズン(プレーオフも含めて)の最後まで滞在するようだ。
 今回カンタベリー相手に圧勝した試合内容、充実したメンバー、そして若手の成長から見ると、ウエリントンが決勝に行く可能性は十分にある。

 カンタベリーは今回の敗戦で2勝3敗と、苦戦している状況だ。スーパーラグビーのメンバーも大勢いる。チームが “クリック”すれば(噛み合えば)、巻き返していける実力はある。

 今回の試合では、三宅と紙森が一緒の時間帯にピッチに立つことはなかったが、プレーオフのどこかで、両チームが対決する場面を再び見られるかもしれない。
 NZの地で日本人選手の活躍は、まだまだ続く。

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