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【パリ2024パラリンピック/車いすラグビー】日本、白星発進! 55-44でドイツを破る
「今までやってきたことを、すべてコートで体現する」と自身2度目のパラリンピックに臨んだ橋本勝也。(撮影・ WWR / Megumi Masuda)

【パリ2024パラリンピック/車いすラグビー】日本、白星発進! 55-44でドイツを破る

張 理恵

「1、2、3 ニッポン!!」
 心ひとつに。世界の頂へと続く挑戦が始まった――。

 パリ2024パラリンピックが華々しく開幕した。
 史上最多となる168の国と地域のパラアスリートが出場し、9月8日までの12日間にわたり、22競技549種目で熱戦が繰り広げられる。

 競技初日の8月29日、プールAの日本(世界ランキング3位)はドイツ(同9位)との初戦に臨んだ。
 2008年の北京パラリンピック以来、4大会ぶりのパラリンピック出場を果たしたドイツ。世界大会レベルの公式戦で日本と対戦するのは、その北京2008大会(※)となる。今回のパリ大会には女性選手2名を擁する12人のメンバーで臨んでいる。(※今年1月、日本で開催された3か国対抗の国際親善大会「2024 ジャパンパラ車いすラグビー競技大会」で対戦)

 車いすラグビー(8か国が出場)は、シャン・ド・マルス・アリーナを舞台に5日間の日程で競技がおこなわれ、4チーム総当たりのプール戦を実施したのち、各プールの上位2チームが準決勝進出となる。

2004年のアテネからパラリンピック6大会連続出場を果たした島川慎一。(撮影・ WWR / Megumi Masuda)

 試合は、立ち上がりから一進一退の攻防となった。
 緊張と平常心が入り混じる日本は、動きに硬さが見られ、時折、張り詰めた空気が流れる。開始から4分、日本はメンバーチェンジをおこない、すぐに2つのターンオーバーを奪うと流れを引き寄せる。しかし、パスをカットされるなど相手の反撃を受け、13-12で第1ピリオドを終えた。

 徐々に自分たちのリズムを取り戻した日本は、第2ピリオド開始早々に、5連続得点を挙げ、一気にドイツを引き離す。後方の観客席からでも見てとれるような高い集中力で、相手に隙ができるとすぐさま反応しプレッシャーをかけた。
 一人ひとりのパフォーマンスとともに、連係の精度も高まり、前半を28-19で折り返した。

 会場には日本からも多くの応援団がかけつけ、どこを見渡しても、びっしりと寄せ書きがされた大きな日の丸が揺れていた。

会場には日本から多くのファンがかけつけた。(撮影・ WWR / Megumi Masuda)

 後半に入ると、ワイドに走ってスペースを広く使う得意な展開も見え始め、かと思えば、ディフェンスのシステムを変えながら緩急をつけたりと、相手を惑わす。
 チームで唯一、パラリンピック初出場となった草場龍治も、持ち前のスピードとハードワークで走り続けた。池崎大輔の強烈なタックルに、会場から「オー!」という低いため息がもれ、聴衆も白熱する激しいラグビーが展開された。
 日本は12人のメンバー全員が出場し、それぞれのラインアップが自らの役割を果たして55-44で勝利。大事な初戦を白星で飾った。

 自身初の大舞台となった東京パラリンピックでは、チームで一番短かったプレータイムに悔しさ涙を流した橋本勝也。「今大会で自分が一番輝いてやる」と、この日のコートに立った。
 試合前の国歌斉唱では「東京パラリンピックからの3年間の思いがフラッシュバックしていた」という。「今までやってきたことを、この5日間で、すべてコートで体現する」と初戦に臨み、磨き上げたチェアワーク(車いす操作)やスピードで、自身の目標を有言実行する活躍を見せた。
 会場からの大きな声援に「自分たちがどれだけ周りの方々に支えて頂いているかを改めて実感した」と語り、「応援してくれる方々と一緒に、最高の景色を見たい」と決意を新たにした。

力強い走りと強烈なタックルでチーム最多の18得点をマークした池崎大輔。(撮影・ WWR / Megumi Masuda)

 自身4度目となるパラリンピック出場を果たした池崎は、「パラリンピックという大きな舞台、これまで自分たちが求めている結果が出せていない中で、そこに向けてパリまでやってきたという思いはある。でも、そこに意識を強く持ちすぎず、いつも通りの自分たち、いつも通りのプレーをしようと落ち着きを持ってコートに入った」といい、この日、チーム最多の18得点をマークした。

 前日の開会式、そして初戦の試合会場でもファンの大きな応援を浴びた。「これがパラリンピックだ。パラスポーツの魅力、車いすラグビーの魅力を、結果をもって発信し、恩返しをする。そういう舞台は整っているので、あとは自分たちがしっかり自分たちのプレーをするだけ」と表情を引き締めた。

 8月30日、日本は、予選ラウンド2戦目となるアメリカ(世界ランキング2位)との一戦に臨む。

パスとランを強みとする中町俊耶はクローザーとしての役目も果たした。(撮影・ WWR / Megumi Masuda)

【車いすラグビー試合結果 8月29日(競技初日)】
オーストラリア ◯ 55 – 58 ● イギリス(プールB)
アメリカ ● 51 – 48 ◯ カナダ(プールA)
フランス ● 53 – 51 ◯ デンマーク(プールB)
日本 ● 55 – 44 ◯ ドイツ(プールA)

【パリ2024パラリンピック 車いすラグビー日本代表】
倉橋 香衣  0.5 F
長谷川 勇基 0.5
若山 英史 1.0
小川 仁士  1.0
草場 龍治  1.0
乗松 聖矢 1.5
羽賀 理之 2.0
中町 俊耶 2.0
池 透暢 3.0
池崎 大輔  3.0
島川 慎一 3.0
橋本 勝也  3.5

※数字は障がいの程度や体幹等の機能によって分けられるクラス(持ち点)。数字が小さいほど障がいが重いことを意味する。「F」は女性選手。

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