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23人のハードワーク届かず。サクラフィフティーン、アメリカ相手に今度は3点差惜敗
ミッドフィールドで効果的に動き続けたCTB古田真菜。(撮影/松本かおり)
2024.08.18
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23人のハードワーク届かず。サクラフィフティーン、アメリカ相手に今度は3点差惜敗

田村一博


 テストマッチで勝つのは、どんな展開だろうが簡単ではない。
 8-11。
 サクラフィフティーン惜敗が、あらためてそう伝えた。

 8月17日、静岡・エコパスタジアムでおこなわれた女子日本代表×女子アメリカ代表は、最後の最後まで勝負の行方が分からぬ展開も、最後はアメリカが僅差の勝負を制した。
 同11日に北九州で戦った第1テストマッチは17-17の引き分け。両チームの力は拮抗していた。

 試合前日、FL長田いろは主将は「アタックでもディフェンスでも前に出続ける」と覚悟を口にした。
 前戦の戦いを踏まえ、「守る時間が長すぎた。ボールを奪い取らないといけない」とも話した。

 その言葉通りのプレーを遂行した試合だったけれど、勝てなかった。

 先制したのはアメリカ。日本は前半立ち上がりから自陣に攻め込まれ、スクラムのコラプシングでPKを与える。6分過ぎ、ラインアウトから押し込まれてインゴールに入られた。

 しかし、この日のサクラフィフティーンはよく攻めた。短く、テンポのいいパスを使ったアタックが相手の圧力を分散させて前に出る。敵陣で過ごす時間は長く、ポゼッションで相手を上回った。

 29分、背番号8の齊藤聖奈がラックからボールを鋭く持ち出し、インゴールへ入る。同点に追いついた。
 22分過ぎからアメリカ陣で攻め続けていた。最後はラインアウトから14フェーズを重ねて攻め切った。

NO8齊藤聖奈のトライシーン。いろんなボールのもらい方で前へ出た。(撮影/松本かおり)

 37分にSO大塚朱紗のPGで勝ち越した時も、スクラムから攻めて14フェーズ。相手のノットロールアウェイを誘って3点を加えた。

 ハーフタイムを8-5とリードしたサクラフィフティーン。アメリカのWTBテス・フュリー主将が、「前半は35分間守っていた感じ」と振り返るほど、小柄なチームがよく攻めた。

 前戦と違いアタック面の時間を増やせたのは、コミュニケーションをより密にして、動き続けたからだ。長田主将は、「そのお陰で一人ひとりのポジショニングが的確になり、相手の圧力を分散させられたから」と話した。

 後半に入り、アメリカも対応。その影響で攻めあぐんだ時間もあった。
 ミスで攻撃を終えるシーンも多かった。結果、攻め切れず、その先にある勝利をつかめなかった。後半は無得点に終わった。

 クリーンブレイクを許したのは後半3分過ぎ、敵陣深い位置での相手ボールラインアウト。果敢な攻撃を受け、途中出場のテッサ・ハーンにロングゲインされた時だけだった。
 長田主将はアウトサイドを何度も走られた前戦との違いを、「ラック周りをしっかり固めて前に出られなかったので、しっかり(外まで)間隔を保って守れた」と対応策が奏功したことを伝えた。

 攻守とも課題を修正して臨んだ試合だけに勝ちたかった。
 前半、粘り強く攻めて敵陣深くまで攻め込んで得たチャンスだったのに、(トライを)取り急いで逃したシーンがあった。
 勝負どころで得たPK機。3点を刻まず、ラインアウトからのモールを選択。取り切れなかったシーンが何度かあった。

 LO吉村乙華は、前戦でうまくいったモールを止められ、「繰り返しFW合宿でやってきたことがあったので、それで勝負したいと思いましたが、相手が対応してきた」と話した。

2戦続けての奮闘も勝利に届かなかったサクラフィフティーン。WXVで経験を生かしたい。(撮影/松本かおり)

 レスリー・マッケンジーヘッドコーチは、選手たちのハードワークを認めながらも「ゲームマネジメントをもっと学ばなければ」。
 また、ミスや反則で、自分たちから相手にチャンスを与えたことを悔やんだ。

 アメリカの後半の得点は2PG。前述の、唯一許したクリーンブレイク後にオフサイドからPGを決められた(後半6分)。
 後半37分には、キックチャージから反則。PKを与えた後、ラインアウトから攻められて再びペナルティを取られてPGを決められた。

 サクラフィフティーンは、最後の最後まで諦めなかった。
 試合開始から80分が過ぎたホーンがなった後も攻め続け、反則を誘い、83分過ぎには相手ゴール前のラインアウトを得た。
 しかし、モール後のラックから攻めるもオブストラクションの反則。攻め切れないままフルタイムを迎えた。

 この日のアメリカは、前戦から先発メンバーを何名も変更して臨んだ。シオネ・フコフカHCはその理由を、「初戦に出た課題を解消するため戦術理解が深く、プランを実行するための選手たちを選びました。(9月開幕の)WXVの準備のため、多くの選手にプレーするチャンスを与えたい。そして、トレーニングで頑張った選手を起用しました」と試合前日に話していた。

 同HCは戦いを終えて、「素晴らしいコンテストだった。トライも少なかったが、いい試合」と話し、激しく体を張り続けたサクラフィフティーンに敬意を表した。来月、より強力な相手と戦うWXVへのいい準備ができたと、収穫、手応えを言葉にした。

 WXVの最上位グループで戦う相手に対し、2戦を通じて自分たちのディフェンスが通用する体感をサクラフィフティーンも得た。
 長田主将は、「日本のファンに、自分たちのラグビーを見てもらえたのは嬉しい」と話した。

 今回、勝利は届けられなかった。吉報は、WXV(2部)の舞台となる南アフリカから届けたい。
 初戦は9月29日。地元・南アフリカとの一戦からハードな戦いは始まる。

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