Keyword
復帰戦で迷いなくプレーができた。
8月11日、福岡・ミクニワールドスタジアム北九州でサクラフィフティーンこと女子日本代表は、女子アメリカ代表と17-17。後半38分まで3点をリードしていた。しかし、最後に追いつかれる展開となった。
全員でタックルした80分。サイズで上回る相手に、何度もボールをロストさせた。攻撃面でも、2トライの相手を上回る3トライを奪った。
14番を背負った松村美咲も、トライこそなかったけれど何度も好走を見せた。
まだ19歳も、今回のアメリカとの第1テストマッチで6キャップ目となった。
怪我の影響もあり、テストマッチは昨年(2023年)10月27日に戦ったWXV(女子の世界大会/南アフリカ開催)でのスコットランド戦以来だった。
今年5月の太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ 鈴鹿大会の試合中に眼窩底骨折の怪我を負った。
5月下旬のアジアチャンピオンシップ、6月のフィジー遠征ではプレーできなかった。
約10か月ぶりだったテストマッチ前、「久しぶりに桜のジャージを着て代表としてプレーできる。すごくワクワクしています」と胸の高鳴りを口にしていた松村は、実際に試合でものびのびとプレーした。
得意なキックでチームに貢献。ランプレーでも積極的に走り、空いたスペースを前進。狭いスペースに切れ込む動きでも前に出てチャンスを作った。周囲にモメンタムを与えるパフォーマンスだった。
怪我からのリハビリ中、2か月ほどコンタクトプレーができなかった。その間、重点的に取り組んだスピードトレーニングの成果か。
「会う人、会う人に大きくなったと言われる」という体躯は169センチ、71キロ。ダイナミックに動いた。
WTBとして意識したのは、バックスリーのユニットで連係して動くことだ。攻守の切り替え時、攻撃でも防御でも瞬時に反応することに注力した。
試合前日、「アタックの時、すぐに空いたスペースにボールを運ぶことを求められています」と話したことを忠実に遂行した。
戦いを終え、「チームとしても個人としても、前で止めるディフェンスやトランジションからのアタックと、準備してきたことが通用した部分もありました。ただ、引き分けで終わって悔しい思いをしました。2戦目は必ず勝ち切りたいです」と振り返った。
3歳の頃、当時暮らしていた香港でラグビーを始めた。帰国後、杉並少年ラグビースクールでの活動と並行してサッカーもプレー。東京都のトレセンに選出された。左右両足で防御裏に転がすキックが得意なのは、幼い頃から磨いてきた感覚があるからだ。
中学時は千歳中のラグビー部に所属し(世田谷区ラグビースクールにも登録)、U20日本代表の海老澤琥珀(日本代表合宿にも参加)や伊藤利江人は同中学時代のチームメートだ。
高校は関東学院六浦に進学して力を伸ばした。高校3年時にはサクラセブンズに選出され、HSBCワールドラグビー・セブンズシリーズのラングフォード大会に出場した。
U18花園女子15人制にも出場はしているが、15人制に本格的に取り組んだのは、昨年(2023年)、サクラフィフティーンの活動に加わってからだ。
所属している東京山九フェニックスの15人制シーズンも経て、知見を増やしている。
「まだまだ知らないこともできないことも多い。でもそのぶん、いろんなことをまだまだ吸収して伸びていけるのでは、と思います」と話す。
しかし、テストマッチデビューとなった昨年10月のフィジー戦で2トライを奪い、すでに6テストで5トライと結果を出せているのは、視野の広さがあるからだ。
本人は、「いろんな選択肢を持つのがいいとは思います」と前置きした上で、相手との間合いがあるWTBやFBでのプレーが気に入っている。
「グランドを広く見ることができるし、スペースを使い、アタックで勝負できるのがいいかな」と話す。
オールブラックスのダミアン・マッケンジーが好きだ。独特のスペース感覚を持っている。
サクラフィフティーンの指揮を執るレスリー・マッケンジー ヘッドコーチは、「彼女がいま入っているポジションがベストポジション。いろんな機会を得て、そこでしっかりと仕事することも(起用の)目的としているので、その中で成長していってほしい」と話す。
U18花園女子15人制でのプレーぶりを視察した際に可能性を見抜いた同HCは、「純粋に良いアスリートだからこそ若いにもかかわらずシニアレベルへのファストトラックに乗ったし、このスポットにいます」と言う。
復帰戦での活躍については、「サイズもそうだが、勇気があるから、しっかり肩を当てられていた」と評価した。
8月17日に静岡・エコパでおこなわれるアメリカとの第2テストにも14番で先発する。
パワフルな相手に、持ち前の思い切りの良さで勝負する。