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この1年で10キャップを得た。
ワールドカップ(以下、W杯)の舞台にも立ち、日本代表指揮官が代わっても同じように起用されるのは、誰からも信頼されるからだ。
スポーツライターの藤島大さんがパーソナリティを務めるラグビー情報番組「藤島大の楕円球にみる夢」が、8月5日(月)、夜6時からラジオNIKKEI第1で放送される。
今回のゲストはラグビー日本代表の長田智希(おさだ・ともき)。24歳と若いが、浮ついたところがない。落ち着いたトークが印象的だ。
テストマッチ3試合を含む、今夏の「リポビタンDチャレンジカップ2024」5試合、すべてに先発で出場した。背負った背番号は11、12、13。ミッドフィールドでもアウトサイドでも、自分に与えられた役割を果たせる人だ。
本人は「ボールを受けた時に相手との距離が少しある13番(CTB)が好き」と話す。
エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ(以下、HC)が目指す「超速ラグビー」の中で求められるのは、ボールを持っていない時の動き。ハードワーカーの長田が認められる理由のひとつがそこだ。
藤島さんは、長田に「二度と同じミスをしない男」という印象を持つ。6月、7月におこなわれたイングランド、ジョージア、イタリアとのテストマッチは3連敗。しかし、そこでも学び、成長した。
イングランド戦の滑り出しは最高だった。キックオフからの20分、超速ラグビーを実践すると相手は対応できなかった。
しかし、やがて自分たちも息が切れる。スタートダッシュの良さを勝利につなぐにはどうしたらいいのか。越えなければいけない高いハードルを初戦で感じた。
ジャパンXVとして戦ったマオリ・オールブラックス戦では、自分たちのスタイルを追求することだけに注力。1勝1敗の結果に「やれる」手応えをつかむも、やはりテストマッチとなると違う。
ジョージア戦もイングランド戦同様、滑り出し満点も、最終的に寄り切られた。
イタリアには完敗だった。
2023年のW杯直前にも戦い、長田はその試合にも出ている。「今回の方が差を感じました」と体感を話す。
世界は待ってくれない。敗戦から学ぶのはあたりまえ。向上心高く、毎日を過ごす。
ジェイミー・ジョセフ前HC体制時と現在の違いを話す。
以前は細部まで組み立てられているシステムの中で役割を遂行していた。
いまは超速というコンセプトのもと、集団ではやく動く、判断する、連続させることを追求する。
やり甲斐がある。探究心が高いから向いている。
得意とするボールを受ける前にディフェンダーからズレるプレーは、少年時代に自分で考えて身につけたものだ。
所属する埼玉パナソニックワイルドナイツを選んだのも、「CTBの層がどこよりも分厚いと思ったから」という。
1999年11月25日生まれ、京都府出身。小学校4年の時に、幼なじみに誘われて、京都の亀岡ラグビースクールで競技を始めた。
京都の神川中から大阪の東海大仰星高に進学してラグビー部でプレー。1年時はリザーブとして花園優勝を経験し、2年時には準優勝、3年では主将として、花園で全国制覇し、高校日本代表にも選ばれている。高校では、文武両道に励んだ。
早稲田大に入学。1年生でレギュラー、U20日本代表も経験。2年時に全国大学選手権で優勝に貢献した。
主将を務めた4年時には、大学選手権で明治大に敗れてベスト8。卒業後に埼玉パナソニックワイルドナイツに加入して2022〜23年シーズンの序盤から先発に定着、リーグワンの新人賞に輝いた。
シーズン終了後には日本代表に選出され、2023年7月のサモア戦で初キャップを得た。9月、10月にフランスで開催されたW杯ではプールステージの3試合でプレー。大舞台の印象を、普段のテストマッチとは「まったく違った」と話した。
準備と経験が何よりも大事とあらためて知った。
「W杯では緊張もあり、自信が減っていくような感じになるんです。大会がどういうものなのか理解せずに行き、メンタルの準備が足りませんでした」
メンタルはパフォーマンスに直結する。それはリーグワンのファイナルで2シーズン続けて負けたことでも分かった。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイに敗れた2022-23シーズンは、自信を持って臨んだ試合でミスが出た。攻め切れない。心のどこかにスキがあったかもしれない。
2023-24シーズンは東芝ブレイブルーパス東京に、その日の勝負で負けた。
謙虚に徹底して準備を重ねる。その自信を持って戦いに臨む。すべてのカテゴリーに共通する勝負の鉄則だ。
大きな勝負をどんどん経験している。学びと経験の深さが増す。成長できる環境に感謝する。
番組の中では、藤島さんが見た長田の高校3年時の花園での秋田工との試合の記憶も辿る(3回戦)。
結果的に大会を制した東海大仰星に秋田工が乾坤一擲の勝負。27-27と引き分けに終わる。トライ数で上回った長田主将率いるチームが次戦に進んだ一戦からも、成長の糧を得た。
番組の収録は、ワイルドナイツが拠点とする熊谷ラグビー場に隣接するクラブハウスでおこなわれた。常にパフォーマンスを見つめ直して、進化を続ける選手の心の動きが伝わってくる。
▽ラジオ番組について
ラジオNIKKEI第1で8月5日夜6時から全国へ放送。radiko(ラジコ)のサービスを利用して、PCやスマートフォンなどで全国無料にて放送を聴ける。音楽が聴けるのは、オンエアのみの企画。
放送後も、ラジコのタイムフリー機能やポッドキャストで番組が聴取できる。U-NEXTでも配信予定。8月12日の同時刻には再放送がある。