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セブンズの世界、広がる。福田正武(帝京大1年)
ジャパンセブンズ時の福田正武。「セービングはそんなに得意ではありません」。弟・恒秀道(つねひでみち)は國學院栃木の2年生。(撮影/松本かおり)
2024.08.02
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セブンズの世界、広がる。福田正武(帝京大1年)

田村一博


 正武と書いて「せいぶ」。ラグビーマンの父・恒輝さん(早大OB)がセービングから名付けた。
 派手なプレーやトライより一本のセービングの方が美しい、という考えが反映されている。

 帝京大学の1年生、福田正武が8月2日から始まる『男子セブンズTID熊谷合宿』に参加する。
 今回の参加メンバーには、7月15日に開催されたジャパンセブンズで活躍したメンバーも多く含まれている。福田も同大会に参加していた。

 セブンズの才能を早くから評価されている。
 世界と戦える可能性を秘めたタレントをユース世代から発掘し、育成・強化するプログラム、男子セブンズユースアカデミーには中学2年の時にすでに呼ばれた。

 2020年2月に実施された同アカデミーにテスト生として招かれた中学生たちの中には、高槻市立芝谷中3年の矢崎由高らの名前がある。
 福田はさらにその1学年下。国見町立県北中(福島)の2年生時には才能を見出されていた。

 國學院栃木高校進学後も継続的にセブンズユースアカデミーに参加し、全国高校セブンズで活躍。2年時にはニュージーランドでおこなわれたワールドスクールセブンズに派遣され、アジアンドラゴンズの一員として戦った。

 15人制では高校2年時からレギュラーポジションを確保。FBやCTBで活躍し、SOでのプレーも可能だ。
 帝京大に入学したこの春、東日本大学セブンズで優勝したチームで活躍し、決勝の明大戦でトライも挙げた。春季交流大会(15人制)の東海大戦にも1試合出場し、順調な足取りで成長を続けている。

 ジャパンセブンズでは、初戦で神奈川タマリバクラブに勝ち、次戦では準優勝した大阪府警察に敗れた。続くNECグリーンロケッツ東葛に勝って5位となったものの、個人的には、社会人チームとの対戦時に「コンタクトプレーで自分が穴になった」と反省した。

「大学に入って周囲とそこに差があると感じたのでウエートトレーニングに取り組み、もっと走れるようにしているのですが、まだ足りていないとあらためて分かりました」
 ただ、「アジリティは通用しました」と手応えもあった。

 この大会の1回戦で対戦した神奈川タマリバクラブは、父が在籍していたこともあり、自分も幼い頃から所属していた古巣だ。
 セブンズにこだわりを持って取り組んでいるクラブだ。そこにいる大人たちは、その魅力を教えてくれた恩人でもある。

「もっとも影響を受けたのは父ですが、竹山さん(将史/関東学院大OB。現・日本ラグビー協会職員で、今大会にも出場)もうまかった。でも、みなさん、歳をとりましたね」と、33-12と勝った余裕からか笑顔を見せた。
 父の出場はなかった。もし対戦があれば「もう48(歳)ですから、さすがに勝ちます」と即答した。

 169センチ、75キロと小柄。
 部内のセレクションを勝ち抜いてセブンズ大会への出場を重ねた。ただ、それで満足するつもりはない。「もっと体を作って、(大学の)15人制の試合にも出たい」と先を見る。

 少年時代からレスリングや柔道、バスケットボールやビーチラグビーを経験し、そのすべてをいま、ラグビーに生かしている。
 15人制で大学トップチームの出場機会をつかむための努力も、自分の将来をより明るくしてくれるものとなるだろう。

 セブンズの魅力を「カオスの状況の中で、どれだけ気持ちを見せられるか(が重要で楽しい)」と言う。
 ジャパンセブンズが開催されたのはパリ五輪の前。「(出場メンバーは)目指している方たちなので、どれだけやれるか楽しみ」と話した。
 自分の番は4年後か、その先か。

 真紅のジャージーを着て大学日本一に貢献したい。
 サクラのエンブレムを胸に、世界を転戦できるようになったら最高だ。
 19歳。どの道に進むか選ぶのではなく、すべてを手にしたい。

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