正武と書いて「せいぶ」。ラグビーマンの父・恒輝さん(早大OB)がセービングから名付けた。
派手なプレーやトライより一本のセービングの方が美しい、という考えが反映されている。
帝京大学の1年生、福田正武が8月2日から始まる『男子セブンズTID熊谷合宿』に参加する。
今回の参加メンバーには、7月15日に開催されたジャパンセブンズで活躍したメンバーも多く含まれている。福田も同大会に参加していた。
セブンズの才能を早くから評価されている。
世界と戦える可能性を秘めたタレントをユース世代から発掘し、育成・強化するプログラム、男子セブンズユースアカデミーには中学2年の時にすでに呼ばれた。
2020年2月に実施された同アカデミーにテスト生として招かれた中学生たちの中には、高槻市立芝谷中3年の矢崎由高らの名前がある。
福田はさらにその1学年下。国見町立県北中(福島)の2年生時には才能を見出されていた。
國學院栃木高校進学後も継続的にセブンズユースアカデミーに参加し、全国高校セブンズで活躍。2年時にはニュージーランドでおこなわれたワールドスクールセブンズに派遣され、アジアンドラゴンズの一員として戦った。
15人制では高校2年時からレギュラーポジションを確保。FBやCTBで活躍し、SOでのプレーも可能だ。
帝京大に入学したこの春、東日本大学セブンズで優勝したチームで活躍し、決勝の明大戦でトライも挙げた。春季交流大会(15人制)の東海大戦にも1試合出場し、順調な足取りで成長を続けている。
ジャパンセブンズでは、初戦で神奈川タマリバクラブに勝ち、次戦では準優勝した大阪府警察に敗れた。続くNECグリーンロケッツ東葛に勝って5位となったものの、個人的には、社会人チームとの対戦時に「コンタクトプレーで自分が穴になった」と反省した。
「大学に入って周囲とそこに差があると感じたのでウエートトレーニングに取り組み、もっと走れるようにしているのですが、まだ足りていないとあらためて分かりました」
ただ、「アジリティは通用しました」と手応えもあった。
この大会の1回戦で対戦した神奈川タマリバクラブは、父が在籍していたこともあり、自分も幼い頃から所属していた古巣だ。
セブンズにこだわりを持って取り組んでいるクラブだ。そこにいる大人たちは、その魅力を教えてくれた恩人でもある。
「もっとも影響を受けたのは父ですが、竹山さん(将史/関東学院大OB。現・日本ラグビー協会職員で、今大会にも出場)もうまかった。でも、みなさん、歳をとりましたね」と、33-12と勝った余裕からか笑顔を見せた。
父の出場はなかった。もし対戦があれば「もう48(歳)ですから、さすがに勝ちます」と即答した。
169センチ、75キロと小柄。
部内のセレクションを勝ち抜いてセブンズ大会への出場を重ねた。ただ、それで満足するつもりはない。「もっと体を作って、(大学の)15人制の試合にも出たい」と先を見る。
少年時代からレスリングや柔道、バスケットボールやビーチラグビーを経験し、そのすべてをいま、ラグビーに生かしている。
15人制で大学トップチームの出場機会をつかむための努力も、自分の将来をより明るくしてくれるものとなるだろう。
セブンズの魅力を「カオスの状況の中で、どれだけ気持ちを見せられるか(が重要で楽しい)」と言う。
ジャパンセブンズが開催されたのはパリ五輪の前。「(出場メンバーは)目指している方たちなので、どれだけやれるか楽しみ」と話した。
自分の番は4年後か、その先か。
真紅のジャージーを着て大学日本一に貢献したい。
サクラのエンブレムを胸に、世界を転戦できるようになったら最高だ。
19歳。どの道に進むか選ぶのではなく、すべてを手にしたい。