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世界8位のイタリアに完敗。日本代表、『超速』を出せず
「ブレイクダウン周辺の圧力が強かった」とイタリアとの攻防の体感を話したリーチ マイケル主将。(撮影/松本かおり)
2024.07.21
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世界8位のイタリアに完敗。日本代表、『超速』を出せず

田村一博

 ワールドランキング通りの点差、試合内容となった。
 つまり、驚きのない結果に終わった。

 7月21日(日)、札幌ドームでおこなわれた日本代表×イタリア代表は、サモア、トンガを巡るパシフィックツアーの最終地として日本で戦ったイタリア代表が42-14と快勝した。
 奪ったトライは5つ。日本代表は2つだった。

 6月22日のイングランド戦から始まった、日本代表のサマーシリーズ。JAPAN XVとして戦ったマオリ・オールブラックス戦2試合も含め、前週のジョージア戦まで4試合は、すべての試合で日本が先攻してきた。

 しかし、この試合は立ち上がりの3分にPGで先制を許すと、8分にはラインアウトからの攻撃でフェーズを重ねられ、仕上げはFBアンジュ・カプオッツォ。好ランナーがトライラインを越えた。

 13分には攻撃の途中、ラックからこぼれたボールを足にかけられ、FLロス・ヴィンセント→SHマルティン・パジェレロと繋がれてインゴールに入られた。
 キックカウンターからFBカプオッツォに走られたのは37分。最後はLOアンドレア・ザンボニンに5点を追加した。

 スコアは0-24まで開いた。
 日本代表がいつものように序盤にペースをつかめなかったのは、超速ラグビーの芽を摘んできたからだ。
 青いジャージーの男たちは忠実にダブルタックル。ボールキャリアーのクリーンな球出しを遅らせた。

2トライを挙げたCTBディラン・ライリー。(撮影/松本かおり)

 また、ブレイクダウンでの攻防で日本が少しでも停滞すると、第二波の圧力もかけた。

 日本代表は途中、自分たちの時間を作ることはできた。
 ハーフタイム直前、自陣深い位置で相手がこぼしたボールをすぐに外へ運ぶ。CTBディラン・ライリーがロングを走り切った。SO松田力也のコンバージョンキックも決まり、7-24としてハーフタイムを迎えた。

 後半の序盤も攻め続けた。
 2分にインターセプトからCTBディラン・ライリーがトライを奪う(Gも決まり14-24)。7分にPGを決められて14-27とされるも、その後、敵陣深くで攻め続けた。

 日本代表は後半9分から8分間に、イタリアのゴールライン前で13フェーズ、12フェーズと攻め続けたことに加え、10メートルと22メートルライン間でも10フェーズを超える継続を見せた。

 ただ、それでもインゴールにボールを置けない。エディー・ジョーンズ ヘッドコーチは、「ゴール前のエリアの決定力を高める策を考えなければいけない」と試合後に語った。

 結局日本代表は、19分にPGを追加され、その後の時間帯でも2トライを奪われた。
 1万7411人のファンを熱狂させることはできなかった。

後半はテリトリー、ポゼッションとも相手を上回った日本代表。順目へのアタックが奏功した。(撮影/松本かおり)

 リーチ マイケル主将は試合後、前半のPGチャンスにショットを選択しなかったことに触れ、「後半20分からの勝負に持ち込むためには、(PGを)狙ってスコアを重ねる方がいいのかもしれない」とした。

 試合後の記者会見でジョーンズHCは一貫性が足りないと言い、「うまくいった時間帯はあったものの、ハンドリングやラインアウトでミスが出てスコアできなかった。これが自分たちの現状」と話した。

 新体制として動き始めて約2か月。テストマッチ3戦を含む、5試合を戦った。
 若い才能を見つけ、伸ばしているのは事実だ。指揮官は、選手たちの取り組む姿勢も評価する。

 成長を続けているのも真実だ。
 だから、自分も含め、報道陣、ファンが結果をほしいことはよく分かるが、本当に手に入れたいものを掴むにはプロセスが必要だと言った。
 約2か月前の始動の時期をチーム誕生の時とするなら、いまはまだ「幼稚園児」と言った。先は長い。

「テストマッチでプレーすることに慣れることが大事。たとえば、ジョージアとイタリアではスクラムの組み方も違う。そういう経験が糧になる」

 力は伸びている。
 しかし困難にぶつかった際、試合中に自分たちで解決策を見つけられないのが現在の力だ。
 ジョーンズHCも選手たちも悔しさをぐっと噛み締め、少しずつ前に進んでいる状況だ。

 8月、9月にはパシフィック・ネーションズカップが開催される。その準備が8月には始まるだろう。
 進化のスピードを高めるためにも、晩夏には勝利を重ねたい。

何度も鋭く走ったイタリア代表FBアンジュ・カプオッツォ。(撮影/松本かおり)

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