logo
【Just TALK】「何であそこまで『行き切っちゃった』んだろう。反省します」。下川甲嗣[日本代表]
イエローカードを提示された後、ジョージア代表HOヴァノ・カルカゼに駆け寄り、謝罪する下川甲嗣。(撮影/松本かおり)
2024.07.15
CHECK IT OUT

【Just TALK】「何であそこまで『行き切っちゃった』んだろう。反省します」。下川甲嗣[日本代表]

向 風見也


 ラグビー日本代表の下川甲嗣(かんじ)は7月13日、宮城・ユアテックスタジアム仙台でのジョージア代表戦にフランカーとして先発した。

 自軍ボールキックオフの直後にロータックルを決めた。以後、身体を張った。

 チームが先制する前半3分までの間には、おとり役を担った直後に接点をサポートしたり、中央突破を披露したり。トライラインの近くで連続攻撃を活性化した。

 7-6と1点リードの14分には、敵陣22メートル線付近右でパスをもらうや2人のタックラーを引きずり前進。その流れで10-6と点差を広げた。

 続く18分には自陣22メートル線付近で走者へ刺さり、まもなくジョージア代表のエラーで攻守逆転。さらなる加速を期待させたが、まもなく、アンドレア・ピアルディ レフリーがゲームを中断した。

 テレビジョン・マッチ・オフィシャルというビデオ判定に移り、さかのぼって17分の攻防での下川の行為を再確認した。

 場所は自陣22メートルエリア右中間。下川は、密集でジャッカルを試みる相手フッカーのヴァノ・カルカゼの上体に絡み、捻り上げるような形で地面になぎ倒していた。

 通称「クロコダイルロール」。安全性確保の観点から、今季より厳しく取り締まられている動きだった。20分、下川はイエローカードを受け、一時退室中の判定でレッドカードに格上げされた。退場となった。

 ここから長らく数的不利を強いられた日本代表は、ジョージア代表の力強さに苦しみ23-25と惜敗。このほど約9年ぶりに復帰したエディー・ジョーンズヘッドコーチにとっての、現体制下テストマッチ初勝利はお預けとなった。

 ハードワーカーのひとつの誤りについて、指揮官のジョーンズはこう振り返った。

「甲嗣は意図的に汚いプレーをする人ではない。昨今のレフリングでは、過去にペナルティにならないものにもレッドカードが出ることを受け止めなくてはいけない。いい経験と、学びになった試合だと思います」

 本人の心境は。
 試合後のミックスゾーンで応じた。

試合序盤からハードワークを続けていたのだが。(撮影/松本かおり)

——率直に、今日はどんな感想をお持ちですか。

「率直に…。まず、そうですね。ああいうプレーをしてしまって、相手の選手、チーム、日本代表を応援してくださるファンの皆様に、申し訳ないです」

——イエローカードを提示されてから、引きはがしたカルカゼ選手を探して謝罪してからグラウンドを離れていました。

「その時にできることは、それしかない。すぐに謝りにいきました」

——カードがイエローのままで10分後に復帰できるか、レッドとなってそのまま退場するかが決まるまでは時間がありました。

「(その間は)戻った時には…(挽回しよう)と考えていました」

——件の「クロコダイルロール」については、最近になってジャッジが厳格化されています。

「ルールのことはさておき、誰が見ても危険なプレーだったので」

——気持ちが空回りしたのか。

「自分も…。何というんだろう…やった瞬間に、何であそこまで『行き切っちゃった』んだろうという気持ちがあります。反省します」

 身長188センチ、体重105キロの25歳。福岡の修猷館高、早大を経て2021年に現東京サントリーサンゴリアスに加わった。実質的に初年度となった2022年1月からのシーズンで主力となり、同年秋に初めて日本代表入りした。

 サンゴリアスの採用として下川を獲得した宮本啓希氏(当時)は、この人の資質を「その時に自分が何をしないといけないのかを理解する力がある」と評した。

サンゴリアスでの練習中、初めて取り組んでミスをしたプレーを、直後の自主トレーニングで改善しようとする姿が目立ったという。

 下川は昨秋、フランスでワールドカップに初出場。帰国後に挑んだ国内リーグワン1部では、連戦のさなかにも体重を落とさないよう食事とリカバリーを管理。昨季終盤より「2キロ」多い状態で閉幕できた。

 体制を刷新させたいまのジャパンからも声がかかった。6月29日、7月6日には若手中心のJAPAN XVのフランカーとして、対マオリ・オールブラックスシリーズで献身。東京・秩父宮ラグビー場、愛知・豊田スタジアムでの2連戦を1勝1敗とし、ジョージア代表戦を迎えていた。

 真面目さと勤勉さで知られるから、ジョーンズHCも「甲嗣は意図的に汚いプレーをする人ではない」と言い切れるのだろう。

当事者はこうも述べた。

——試合が終わったばかりのなかで恐縮ですが、今後、この経験をどう活かしていきたいと考えていますか。

「まずは相手選手に怪我がなかったのが不幸中の幸いというか…。自分としては、クリーンなプレーを心がけてプレーしたいです」


ALL ARTICLES
記事一覧はこちら