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魂のハカ。キャップホルダー含む実力者並ぶ。対JAPAN XV第1戦のマオリ・オールブラックスは、想像している以上に強力
キャプテンを務めるFLビリー・ハーモン。(撮影/松本かおり)

魂のハカ。キャップホルダー含む実力者並ぶ。対JAPAN XV第1戦のマオリ・オールブラックスは、想像している以上に強力

松尾智規


 鳥肌が立つほどの迫力満点のHAKA(ハカ)「Te Timatanga(テ・ティマタンガ)」を試合前に披露するマオリ・オールブラックスが来日中だ。

 第1戦は、6月29日(土曜日、現地時間19時キックオフ)に秩父宮ラグビー場で、第2戦は、7月6日(土曜日、現地時間18時キックオフ)に豊田スタジアムでJAPAN XV と対戦する。2014年以来、10年ぶりの来日とあり、ラグビーファンも楽しみにしているだろう。

 指揮官のロス・フィリポHCをはじめ前日本代表の指揮官ジェイミー・ジョセフ氏も含んだセレクター陣が選んだ28人のマオリ・オールブラックス。メンバーの中にはスーパーラグビー・パシフィックで優勝したブルーズから7人、準優勝のチーフスから6人が選ばれるなど豪華なメンバーとなっている。
 また今回の遠征では、10人の選手が初選出となった。

ニュージーランド代表57キャップと経験のあるPRジョー・ムーディー。(撮影/松本かおり)

第1戦のメンバーは、4人の代表経験者をはじめ強力布陣。

 6月27日に第1戦目のメンバーが発表された。
 その中には、PRジョー・ムーディー(57キャップ)、FL/No8カレン・グレース(1キャップ)、SHテ・トイロア・タフリオランギ(3キャップ)、CTBクイン・トゥパエア(14キャップ)といったオールブラックスでテストマッチ経験のある4人が含まれている。

 背番号1を付けるムーディー(クルセイダーズ)は、スコッドの中で最も多いキャップ数で経験豊富。強いスクラムは健在で、2015年以来9年ぶりにマオリのジャージを着る。
 ムーディーと同じクルセイダーズで活躍するグレースは背番号8を付けて先発出場。常にひた向きなプレーと高いワークレイトでピッチを駆け回る姿が印象的だ。

 背番号12を付けるトゥパエア(チーフス)は、2年前に膝の大ケガをしていなければ、昨年のワールドカップに出場していただろう。ケガ明けの今年は、代表復帰はならなかったが、調子が戻ってこれば代表返り咲きも十分あるだけに今回の遠征で良いパフォーマンスを見せたい。

 ベンチスタートとなった、タフリオランギ(チーフス)は、2018年以代表から遠ざかっているものの素早いボール捌きは健在だ。
 代表経験者以外のメンバーを見ていくと、スーパーラグビーで活躍した選手を中心に豪華なメンバーが選ばれている。その中でも注目する選手を挙げてみたい。

 FW陣から見ていくと、スーパーラグビーの決勝でもフロントローながらもワークレイトの高さを披露し優勝に貢献したPRマルセル・レナタ(ブルーズ)に注目してほしい。背番号3を付けて渾身的なプレーを見せてくれるだろう。

 背番号4を付けて出場するLOアイザイア・ウォーカーレアウェレ(ハリケーンズ)は、フィジカルとラインアウトの強さが魅力で、代表入りの声も聞こえてくるなどNZ国内での評価は高い。課題の規律を含め安定感のあるプレーを継続的にできれば代表入りが見えてくるかもしれない。

 FW第3列陣は、クオリティーの高い選手が揃っている。
 まずは6番キャメロン・スアフォア(ブルーズ)は、癌の治療をしながらスーパーラグビーでプレーをした勇敢な選手だ。体調が万全になれば身体の強さを活かしたプレーで代表入りも期待される。
 7番を付けるビリー・ハーモン(ハイランダーズ)は、昨年オールブラックスXVで来日して共同キャプテンを務めた。今回の遠征もキャプテンに選ばれておりリーダーシップがある。FW第3列の3つのポジション全てをこなす万能な選手でディフェンス、ブレイクダウンで抜群の強さを見せる。
 近年はボールキャリーで前に出る力も付けてきている。来シーズンは日本に移籍を決めており活躍する姿が今から目に浮かぶ。

NO8に入ったカレン・グレースら、FWはハードで機動力あり。(撮影/松本かおり)

 BK陣に目を向けると、ハーフ団は、9番サム・ノック(ブルーズ)、10番リヴェス・ライハナ(クルセイダーズ)のコンビとなった。ノックは近年のマオリ・オールブラックスで顔なじみとなっておりハカの指揮をするほどチームの信頼を得ている。

 代表経験のある12番トゥパエアとCTBコンビを組むのはチーフスのチームメイトのダニエル・ロナ。昨年はスコッド外からケガ人のバックアップでシーズン途中にチームへ合流した。即座に活躍し、一気に名を売った。
 力強いボールキャ―リだけでなく、WTBも対応可能なスピードもある。将来が期待される。

 WTB/FBも能力の高い3人が揃って先発する。
 本職はCTBながらも今回左WTB(11番)で出場するベイリン・サリヴァン(ハリケーンズ)は、昨年オールブラックスXVで来日した時にも見せた力強いボールキャリーが魅力だ。ディフェンスを含め安定感が出てこれば代表入りも見えてくる。

 右WTB(14番)で出場するジョシュ・モービー(ハリケーンズ)は、昨季はFBが多かったが、今年は主にWTBでの出場。スピードとランニングスキルの高さを披露した。

 FBには、コール・フォーブス(ブルーズ)が入った。スコットランドで経験を積み2021年に代表に召集されるほどの実力者。昨年NZに帰国し、今季からブルーズ入り。堅実なプレーと強気のランが魅力だ。

 ベンチに目を向けると、FW陣では、昨年オールブラックスXVで来日したHOタイロン・トンプソン、PRオリー・ノリス(ともにチーフス)の2人が控える。機動力があり、後半からのインパクトに期待される。

 FL/N08テ カマカ(TK)・ハウデン(ハリケーンズ)は、FWの層が厚いハリケーンズでなかなか出番が与えられなかったが能力は高い。ダイナミックなランが魅力で、ラインアウトの良さから時にはLOに入る事もあり万能だ。経験を積めば将来が楽しみだ。

 上記に挙げてない選手も能力が高く、昨年来日したオールブラックスXVにも引けを取らないほど強力なメンバーと言っていい。パワーとスキルを兼ね揃えたプレーは観客を魅了するだろう。

 なお、この試合で初めてマオリオールブラックスとなる選手は、5番ラグラン・マクファネル(ブルーズ)、10番ライハナ、13番ロナ、15番フォーブス、19番マックス・ヒックス(ハイランダーズ)、そして一人だけスーパーラグビーの正スコッド外から選ばれた23番タナ・トゥハカライナ(NPCワイカトでチーフスのトレーニングスコッド)の6人だ。

試合前日のキャプテンズランは、雨の降るグリーロケッツの我孫子グラウンドでおこなわれた。(撮影/松本かおり)

準備期間は短いが、指揮官はポジティブな発言。

 6月25日(火)にメンバー発表、翌日26日に長時間のフライトで来日。27日(木)と28日(金)の2日間での短い期間の調整で当日の試合に挑むマオリ・オールブラックス。
 しかし、指揮官からは、「ハイテンポな試合になることを予想している。相手には十分な準備時間があることは分かっているので、最初からベストの状態で臨まなければなりません。この挑戦を楽しみにしていますし、チームも準備万端だ」というコメントがでた。準備期間の短さを言い訳とせず、ポジティヴな発言は頼もしい。

 タイトなスケジュールとNZと日本の季節が逆で気候にも慣れていない事も含め、第1戦に関しては、条件が厳しい。その状況から、JAPAN XVがマオリ・オールブラックスのスキを突くなら、1戦目の立ち上がりから一気に仕掛けることが大事になってくる。

 そしてパワーでディフェンスをこじ開けようとするマオリ・オールブラックス相手にJAPAN XVが対抗できれば、試合が面白くなりそうだ。そうでなければ、準備不足ながらもマオリ・オールブラックスに分があるだろう。
 エディー・ジョーンズHCが掲げる「超速」ラグビーをJAPAN XVがマオリ・オールブラックス相手に通用するかも注目したい。

 試合直前におこなわれるハカ(テ・ティマタンガ)は、マオリ族の血が流れている選手たちのみで構成されたチームでおこなう。当日の試合のメンバーに入ってない選手も参加する。
 マオリ魂が入ったハカを見ると鳥肌が立つほどだ。それくらい迫力が半端ない。なかなか見る事ができないマオリ・オールブラックスのハカ、そして熱いプレーに、日本のファンも感じるものがあるはずだ。

ALL BLACKSの公式「X」より。


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