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「超速」の発信源。齋藤直人(SH)、イングランド撃ちへ「果敢に」
細部に「はやさ」を求める日本代表。宮崎合宿で意識を高めた。(撮影/松本かおり)
2024.06.22
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「超速」の発信源。齋藤直人(SH)、イングランド撃ちへ「果敢に」

田村一博


 すでに19キャップを持っていても、新体制の一歩目の試合でスターターを務められるのは嬉しい。
 6月22日におこなわれる日本代表×イングランド代表で齋藤直人が9番のジャージーを着る。

 試合前日の会見で、「エディー・ジャパンの初陣。そのメンバーに入れたことは本当に嬉しい。最高のプレーをしたいし、勝ちたいです」と話した。

 初キャップは2021年6月のブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦。代表デビューから3年が経っても、フレッシュな気持ちを忘れない。
 その一方で責任感も増す。19キャップは、イングランド戦で先発15人の中で2番目に多い。周囲をリードする立場になったことを自覚する。

 2023年ワールドカップで3位となったイングランドから勝利を得るためには、「まずは相手の土俵で戦わないことが大事」と言う。
「(昨年W杯から)多少メンバーは変わっていますが、イングランドのラグビーのスタイル自体は伝統的なもので、あまり変わらないと思います」

「強いセットピースとフィジカル、キック。ハイボールを使ってくる。『かわす』って表現は正しいか分かりませんが、それらについて対策してきたことを出すことが大事」

 ただ、決して受け身にはならない。
「絶対に(空いている)スペースはあるので、そこにどうボールを運ぶか」だ。
 そして、試合時は高温、多湿も予想される。日本独特の気候にイングランドは疲れるだろう。もちろん自分たちにも疲労が襲ってはくるけれど、その時間帯にギアを上げたい。
「9番として、そこでリードする」と話す。

 チームとしての準備期間は豊富にあったわけではない。
だから、相手チームの一人ひとりについての対策を万全にするより、自分たちがやるべきことにフォーカスしてきたと言う。

 ただ相手の司令塔、マーカス・スミスを自由に動かしてはいけないと分かっている。
「うまくキックも使ってきますが、ランニングや、ひらめきのあるプレーが得意な選手です。それを頭に入れてプレーします」

 19キャップの経験の中で増やした引き出しの中にはいくつもの選択肢がある。
 その中で最適なものを、瞬時に判断して使うつもりだ。

 チームが掲げる「超速ラグビー」について、「単にボールを持ち続けることではない」とする。
「少しのスペースやチャンス、そういったものを見逃さずに、どのエリアからでも、いろんなオプションを持ちながら攻める。それが大事なポイントと思っています」

 9 番はいつもボールの近くにいる存在。「チャンスを常にうかがって、勢いが出ていたり、少しでもチャンスがあるのなら果敢に仕掛けていく」と積極的にプレーするつもりだ。

 相手が自分に圧力をかけてくることは重々承知している。
「特に 9 番からFWへのアタックシェイプのところに、かなりはやいラインスピードと強いタックルでプレッシャーをかけてくると思っています」

 そんな局面で、ジャパンがこだわるディテールが生きる。
 ボールをもらう前の動きで、ボールキャリアーが勢いをつけて前に出る。その選手の両サイドにサポートがついてブレイクダウンを制する。
 結果、ジャパンのテンポが生まれる。

「そこが、ゲームの中の大きなポイントのひとつになると思います。(そのエリアの)いちばん近くにいる人間として、フォワードはもちろん、全体をドライブします」 

試合前日の会見に登場。「最高のプレーをしたい」。(撮影/松本かおり)

 宮崎合宿の前、エディー・ジョーンズ ヘッドコーチに「日本で一番アタッキングな 9 番になるつもりで来い」と言われた。
 新しい代表は新鮮だ。練習に刺激も多い。新しいチームメートとの会話も楽しんでいる。

 8月には27歳になる。自分が若い頃にしてもらったことを若手に返す年齢。普段からコミュニケーションをとることを意識する。

 イングランド戦前日の練習は、ファーストジャージーを着ておこなった。初めてそれに袖を通す選手たちもいる。
 それを掴んだ喜びを味わってほしい。感謝や感激。いろんな思いもわくだろう。首脳陣の配慮によるものだった。

 ロッカールームでは、胸中を言葉にする者もいた。普段より口数が少なくなる選手も。
「エディーさんにいわれたことがあります。誰だって、緊張するのは当たり前。経験のある選手は、そういうことを若い選手に伝えてあげてほしい、と」
 そんな気遣いを自然体で実行する。

 若い選手たちが多い現代表の強みを、「恐れ知らず」と言う。
「若さゆえ、失敗を恐れない。一緒にプレーしていて、そう感じる。それを期待してのメンバー選出だと思います」

 ただ、うまくいかないこともきっと出る。その状況が自分の出番。「そんなときこそ、シンプルなワードで自分たちの立ち返る場所がどこなのかを示す。それが大事」と、平常心へ導くつもりだ。

 リーグワン終了後、4 シーズン在籍した東京サントリーサンゴリアスからの退団が発表された。
「いい意味で、本当に居心地の良いチームでした。なので、(あらためて)チャレンジする環境に身を置いてより成長したいと思い、(移籍を)決めました」と、宮崎合宿中に話した。

「いまは日本代表に集中」とする9番は、2027年W杯に絶対に出場したい。ワールドクラスの選手になって、その舞台に立つ。
 イングランドに勝って、さらなる高みへと続く道を駆け出せたら最高だ。

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