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【Just TALK】学びの虫。森田佳寿コーチングコーディネーター[東芝ブレイブルーパス東京]
高い指導能力でチームに貢献する森田佳寿コーチングコーディネーター。(撮影/松本かおり)
2024.06.18
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【Just TALK】学びの虫。森田佳寿コーチングコーディネーター[東芝ブレイブルーパス東京]

向 風見也


 チャンピオンチームの名セコンドだ。

 今季のリーグワンで14季ぶりの日本一に輝いた東芝ブレイブルーパス東京で、魅力的なアタックを作り上げた指導者のひとりが森田佳寿コーチングコーディネーターだ。日本代表に入閣したダン・ボーデンアシスタントコーチ、新加入のSOリッチー・モウンガらとともに、フィールドに質的優位、数的優位を生む作戦を考えた。

 2022-23シーズンオフに出かけた期間中の海外留学、自身の考えについて語った。

——森田さんはシーズン開幕前に、海外留学をされました。

「ノーサンプトンがメインで、ウエールズのラグビーも見たくて、スカーレッツに。そこにも少し話したいコーチがいたので。あとは、これまでに行ったことあるチームに知り合いのコーチがいて、彼らと『最近どんなことをやっているの?』のような話を。(期間は)8月くらいでした。

(目標は)まずは自分が成長すること。また自分が成長することは、チームをより良くすることにもつながる。僕が学びたいことを明確にして(出発しました)。

 アタック、選手に提供する練習、1 週間のプログラム、中期的な計画も含めて、去年より改善しないといけないところ、少し変更したいところがあったので、そのエリアに関する僕の意見を持った上で、他のチームがどうやっているのかを知りに行きました。具体的に『これ』とは言わないですけど」

——言える範囲でインスピレーションを受けた言葉はありますか。

「ノーサンプトンのヘッドコーチのサム・ヴェスティのラグビーが好きで、今回はほぼほぼ彼と話すために行ったようなものでした。

『僕だったらノーサンプトンでこんなアタックをするよ、というものをプレゼンしてくれ』と言われ、彼らのプレーを数試合見て、僕が普段リーグワンでするような分析とプレゼンをしました。飲みに行くなど、他にも彼らとはかなり親密に交流しました。

 傍から見ていて彼らのラグビーが好きで、実際に考え方に触れて共感することが多かったです。

 これは、その場で僕が話したことなんですけど…。

 僕らはシェイプ(攻撃布陣)を使ってプレーするし、ラインアウトからもある程度は『こうなるだろう、だからここでこう当たって…』と計算してプレーする。そのような決め事、ストラクチャー的な部分は、すべていまの整備されたディフェンスを崩すために——いまのところは——有効だからやっているわけです。ただ、日本人にしろ、外国人にしろ、何十年も好きでラグビーをやってきて、いいキャリアを重ねてきた選手たちは、きっとシェイプをするためにラグビーをしてきたわけではない。

 僕らもシェイプを使ってプレーしているのは、最終的にはシェイプの外に抜け出し、カオスを作り、アンストラクチャーの状況を生むため。
 
 何が僕らのDNAかと言えば、相手のディフェンスの裏に出たところからボールがとめどなく動き続けるところです。オフロードパスを使い、テンポ、スピードでプレーしていく。そこで選手が目で見て、何が起きているかを感じて、コミュニケーションをして、ボールを自分たちで判断して動かしていく。

 その状況になるためのフォーマットとして、シェイプを使っている。

 …という話を(ノーサンプトンのコーチに)して、『そうだよな!』と意気投合して楽しかった」

——ブレイブルーパスは魅力的な攻め方をします。大型選手を相手の小柄な選手へぶつけたり、相手防御の手薄な箇所にきれいなキックパスを通したり。

「うちにはいろんな選手いるので、その強みが活きるように配置します。そこ(狙った場所)にボール動かすための選手の理解とスキルセットを準備します。(シーズン中は)これを繰り返します。そのままトライができればいいですけど、相手が強くなると、それ(攻めの設計)は向こうの構造を崩すための口火のひとつ(でしかなくなる)。その後、誰かがバッキングアップをして(抜け出した走者を)止めに来ます。ただ、僕たちの選手はその後に自由に判断する。

 自由に判断することは誰にでもできることではなく、目の前の画をしっかりと見て、誰かとコミュニケーションを取って、思ったことを遂行するためのスキルセットを発揮して…と(必要項目が)様々あります。ただ、そこが僕たちの選手の優れている点です。自由なフェーズを作り出すために、いくつかの決まり事、計画したことがある、という感じです」

 クラブ関係者は「森田には世界で通用するコーチに成長してほしい」と、大きなビジョンを描いている。本人は「そんなん、誰が言ってるんですか?」と笑いながら、こう続けた。

「目指しているところはありますし、僕の日々の選択——どういう学びを得るか、どういう振る舞いをするか、どういう仕事をするか——はそちらの方向に行っています。でも、そんな先々のことを言うのは…。いっこ、いっこです」

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