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スピードスターもパワフルなランナーもいた。
セミファイナルまでの大阪府警察のパフォーマンスを見ていたら、頂上決戦はクロスゲームになると思われた。
しかし、決勝のスコアは男子セブンズTIDチームBが40-0と圧倒。開始3分に星遥大(開志国際→関東学院大1年)が先制トライを奪うと、6トライを重ね、攻撃力の高さを見せた。
7月15日、秩父宮ラグビー場で『なの花薬局ジャパンセブンズ2024』が開催された。
出場したのは10チーム。リーグワンから唯一出場したNECグリーンロケッツ東葛が天理大、帝京大に敗れるなど、若い才能が躍動するシーンが多かった。
帝京大は、今春開催された「東日本大学セブンズ」で優勝してこの大会への出場権をつかんだ。大学の部、社会人・クラブ・オープンの部がおこなわれた「関西セブンズフェスティバル」の優勝チーム、天理大、大阪府警察も参加した。
「九州セブンズ」準優勝の福岡工業大や、昨年の東日本クラブセブンズのファイナリストであるサムライセブン、神奈川タマリバは、それぞれ自分たちのカラーを出した。
北海道バーバリアンズも、一人ひとりが個性豊かに戦った。
優勝した男子セブンズTIDチームBは、日本のセブンズの未来を担うセブンズ・ユース・アカデミー出身の大学生を中心に構成、出場した2チームのうちのひとつだ。日大の後藤翔大(2年)が主将を務めた。
同主将は大会を振り返り、「1試合目は、あんまり自分たちのラグビーができなかったのですが、試合を重ねるごとに改善することができた。チームとしても成長。優勝することができ嬉しいです」とコメントを出した。
この日の観客数は3226人(入場料無料)。キャプテンは、「1日に何試合もある中でセブンズ特有の試合展開もご覧いただき、歓声も送っていただきました。それも力になりました。応援ありがとうございました」と感謝の言葉も忘れなかった。
先制トライを奪った星の、キレ味鋭いランニングも目立ったが、大会を通じて安定したプレーを見せたのが山口泰輝うだった。
2023年度に大学選手権3連覇を達成した帝京大のFBは、シーズン終了後、レッドハリケ―ンズ大阪にアーリーエントリーで加わり、2試合に出場した。
4月からは仕事にも就く22歳はリーグワン終了後もトレーニングを継続し、7月には練習を再開したチームの活動に参加。セブンズTIDの定山渓合宿(北海道)を経てこの日を迎えた。
「大学生とも、いいコミュニケーションを取れました。やってきたことを出せた」と戦いを振り返った。
チームの全員が頭に入れて戦ったことがある。
ディフェンスで上がり続ける。意思統一し、スペースにボールを運び、攻める。一人ひとりの個人技、スピードを活かすことに注力した。
コミュニケーションを密に戦えたことは、決勝戦のあるプレーにも見られた。
前半終了間際だった。相手ペナルティからのリスタート時、山口は防御裏のスペースにうまくショートキックを転がす。それに反応した佐藤亮吾(秋田ノーザンブレッツ)がトライを挙げた。
「相手はペナルティで慌てていたので、上がって(守って)くると思っていました。佐藤とコミュニケーションが取れていたので蹴りました」
この日の山口は正確なキックオフ、コンバージョンキックでもチームへの貢献度が高かった。
6歳で長崎ラグビースクールに入った。小1で始めたサッカーも梅香崎中での部活動まで続け、キックも武器として持つ好ランナーへと育った。
長崎北陽台高では3年時に高校日本代表に選出される。帝京大でもチームの優勝に貢献した。
中3時からセブンズ・ユースアカデミーに名を連ね、高校時代も継続的に同アカデミーに招集された。ユースオリンピックの予選にも参加している。
大学では特に上級生になってからは15人制に専念したけれど、セブンズ愛は胸に秘めたまま。自由度の高いこの競技が好きだ。
フィジー、台湾、アメリカ。仲間と世界のあちこちに行った。セブンズは、どこに行ってもスタジアムの空気がにぎやか。その雰囲気も気に入っている。
「チームと話し合ってから」と前置きしながら、レッドハリケーンズでは、15人制とセブンズの両方に取り組んでいけたら、と話した。
セブンズ歴が長いから、楽しむことの大切さも知っている。この日も、TIDチームの看板を背負い、「勝たなければいけない」と緊張気味の若手の心をほぐすように振る舞った。
ピッチの上だけでなく、ロッカールームでもチームを引っ張った。