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【JAPAN XV】チームが苦しいときに、この人。立川理道の価値と思い
日本代表キャップ56。自然体でリーダーシップを発揮できる人。(撮影/松本かおり)
2024.07.06
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【JAPAN XV】チームが苦しいときに、この人。立川理道の価値と思い

田村一博


 15歳も違うと、お互いに知らないことは多々ある。
 それも楽しい。
 立川理道は相好を崩し、若い選手が多いチームに加わって過ごした数日間のことを振り返る。

 12月には35歳になる。ハタチになったばかりの矢崎由高ら大学生と話していると、確かにジェネレーションギャップはあるのだがチームメートだ。
「よく話しかけてくれます。僕からも話します。(いろんなことを知れるし)助かっています」

 若い選手たちが顔を歪めて取り組む練習に飛び込んで5日。チームに合流した月曜日の練習は「めちゃくちゃきつかった」。
 7月6日(土)に豊田スタジアム(愛知)でおこなわれるマオリ・オールブラックスとの第2戦には、ジャパンXVの22番で出場予定だ。

 56も持つ日本代表キャップを最後に手にしたのは2022年6月のウルグアイ戦だった。
 その前、55個目のキャップは2018年6月、豊田スタジアムでのジョージア戦で得たものだ。

 代表チームの空気を吸うのは久しぶりも、その間、クボタスピアーズ船橋・東京ベイの主将としてリーグワンの優勝をつかむなど、経験値を高めた。
 エディー・ジョーンズ ヘッドコーチは、立川をひとりのプレーヤーとして頼りにすると同時に、様々なことに向き合ってきた知見を周囲の選手たちにシェアしてほしいと期待する。

 指揮官の思いを汲み、本人も動く。
 ジャパンXV は、HO原田衛、SH齋藤直人の2人が共同主将を務め、チームをドライブしている。
 選手たちはみんな真面目で、ハードワークはチームのカルチャーとして浸透。立川は合流してすぐ、そんな集団と感じた。

 その上で、「(チームやみんなが)しんどいときに、ひと言ふた言いえる存在でいたいと思っています」と話す。
 長年リーダーを任されている人格者。その価値をジョーンズHCはよく知っている。

 スピアーズでのシーズンを5月4日に終えた。
 その直後、代表活動への参加打診もあった。しかし怪我などもあり、菅平合宿(5月下旬)には合流できず。コンディションの回復とともにトレーニングを再開し、「いつ呼ばれてもいいように準備はしていました」という。

 他の選手たちと比べると合流が大きく遅れたけれど、スピード感あるスタイルは、もともと自身が得意としているものだ。「10番でも12番でも、その時の状況に合ったプレーをする」と頼もしい。

 チームが掲げる「超速ラグビー」を、こう理解する。
 ボールをよく動かし、サポートの寄りもはやく。(何度でも)すばやくボールを出して、ボールを的確なスペースへ。そこで生まれた勢いを止めないように全員が動く。

 細部については現チームのこだわりがあったり、サインのコールについても覚えないといけないことは多いけれど慌てることはない。
 コーチ陣や周囲の選手とのコミュニケーションを増やし、しっかり本番に間に合わせられるのはベテランならではの対応力だ。

 チームはイングランドとのテストマッチ、マオリ・オールブラックスとの初戦に敗れ、なかなか勝利に近づけない。
 2012年、ジョーンズHCが初めて日本代表を率いた年もそうだった。同年春、アジア相手に4連勝のスタートを切ったものの、フィジー、トンガ、サモア、フレンチ・バーバリアンズには敗れた。

 しかし、そんな苦しい時期を乗り越えた先にあったのが、2015年ワールドカップ(以下、W杯)での南アフリカ代表撃破だ。
 そんな成功へと続く道を中心選手として歩んだ者として、現在のチーム、選手の立場に思いを巡らせる。

 必死に練習しているのに結果が出ない。そのもどかしさは、自分自身何度も感じてきた。
 ただ、メンバーがどうであれ、日本代表は勝たなければならない。結果を求められる存在。その考えはぶれない。

 現代表の選手たちが毎日精一杯生きていること、それでも結果が残らずもがいていることは知っている。
 チームも、一人ひとりの選手たちも着実に成長している。いま土台を築き、そのまま進んでいくなら、きっと2027年のW杯で成功できると信じる。

 そんな前提があろうと、「それでも(いま)勝たなければいけないのが日本代表」とくり返す。
「ファンの方々には結果だけで判断してほしくないとも思いますが、選手が少しでも負けても仕方ないと思うなら勝てない」
 自分自身も含め、どんな試合、どんな相手でも勝つ。そんな強い決意で戦う姿勢だけは貫くつもりだ。

 オーストラリアでW杯が開催される2027年は、38歳になる年。「正直、いまはそこまでは考えられていない」と素直に言う。

「ハードな練習で追い込まれています。一日一日、チームに対してできることを一生懸命にやることが、いま、自分に求められていることだと思います」

 最善を尽くす毎日がなければ、栄光の日はやってこない。やるべきことをやり続けていれば、その日はいつ訪れてもおかしくない。
 どちらも真実だ。

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