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【サニックスワールドラグビーユース交流大会】人生が豊かになる時間。高校生のワールドカップ、宗像で始まる。
前回大会優勝の大阪桐蔭はイングランドのSGSフィルトンカレッジに24-0と完勝。(撮影/松本かおり)
2025.04.29
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【サニックスワールドラグビーユース交流大会】人生が豊かになる時間。高校生のワールドカップ、宗像で始まる。

田村一博

 深夜に振り出した雨は昼前まで続いた。
 4月28日の福岡県宗像市は、雨のち晴れ。午後になるとグローバルアリーナを囲む山の緑は強い日差しに色を濃くした。
 そんな気持ちのいい場所で、高校生のワールドカップが始まった。

『サニックスワールドラグビーユース交流大会』は今年で26回目。ユース世代(高校生)の単独チームが世界のあちこちから集まる世界で唯一の国際大会として広く知られている。

昨年度の花園、今春の選抜と連覇の桐蔭学園は台湾のジエングオ ハイスクールを59-0と圧倒。(撮影/松本かおり)


 開催日は4月28日(月)から5月5日(月・祝)まで。4月28日、29日は女子セブンズの好ゲームも見られる。
 4月30日、5月2日、同4日は休養日も、Bチーム同士の練習試合をおこなうチームもあれば、地域交流や観光に出掛けるところもあり、有意義な時間を過ごす。

 今年も初日から好ゲームが相次いだ。
 昨年の大会で史上初めて日本チームで頂点に立った大阪桐蔭は、イングランドのSGSフィルトンカレッジに24-0と完勝した。

 この試合でゲームキャプテンを務めた大阪桐蔭のLO泊晴理(とまり・せり)はミスを反省しながらも、「ディフェンスで圧倒していきたいと思っていました」と、相手を無得点に抑えたことを評価した。
 大会のディフェンディングチャンピオンという立場については、「今年には今年のカラーがある。自分たちのラグビーを貫いていきたい」と話した。

写真左上から時計回りに、フィジーのラトゥ カダヴレヴ スクール、NZのハミルトン ボーイズ ハイスクール、台湾のジエングオ ハイスクール。(撮影/松本かおり)


 前年の大会でも3試合に出場した泊は、この大会の価値を「海外のチームと戦えるので、フィジカルの強化にもなる。この経験を、自分たちの目標である花園優勝につなげていきたい」とした。
 大きな相手に、自分たちが日頃からこだわっている低いプレーで対抗することを確認。この試合でもロータックルを実行した。

 この日のレフリーはニュージーランドのショーン・カラー氏。自分たちはスクラムを低く組みたい。相手は高い。そういった違いに苦労したところはあった。しかし泊は試合中のコミュニケーションが難しかったと振り返りながらも、「アイ・ドント・ノウ・イングリッシュ」と呟きながらもなんとか意思を伝達し、乗り切ったと笑う。
 いろんな国のカルチャーが混じり合う1週間は、いつもと違う経験ができる時間となる。

地元・東福岡は京都工学院と対戦。47-12と快勝。(撮影/松本かおり)


 昨年大会準優勝で、昨年度の花園、今年3月の全国選抜大会を制している桐蔭学園も、台湾のジエングオ ハイスクール(建国高級中学)を59-0と圧倒した。
 オーストラリアのバーカーカレッジとの接戦を26-19で制した東海大大阪仰星は、試合終了間際にWTB小池慶太郎が決勝トライを挙げる、しびれる勝ち方。佐賀工はフィジーのラトゥ カダヴレヴ スクールに7-27と大きくリードされる展開となりながらも、そこから28-27と逆転勝ちした。ラストプレー、WTB岩屋武琉のコンバージョンキックがゴールポストに当たりながらも入った時は、スタンドが沸いた。

 この大会は、海外チームとのラグビースタイルの違いを知ると同時に、世界は様々なカルチャーで成り立っていることを知る機会。10代の若者たちがフィールドの内外で触れ合い、知見を豊かにする。
 その価値は四半世紀の間に広く知られてきた。大会参加を希望して、その思いが今回やっと叶った高校もいくつかあった。

写真左上から時計回りに、大阪桐蔭のゲームキャプテンを務めた泊晴理。ラフボロー カレッジのマーサ・ハラム主将。のんびりした空気も魅力。四日市メリノール学院の河内陽愛主将。(撮影/松本かおり)


 セブンズが実施されている女子では、イングランドのラフボロー カレッジが初出場だった。主将のマーサ・ハラム自身はフランスや南アフリカへのラグビーツアーを経験したことがある。しかし「チームメートのほとんどは、今回が、海外で初めてラグビーをプレーする機会です。みんな、すごく楽しそう」と瞳をキラキラさせていた。

 三重の四日市メリノール学院に7-41と振り回された試合内容を振り返り、「タフな時間。あんなにはやいテンポのラグビーは初めて。学ぶことがたくさんありました」と話した。
 シーズンの多くを15人制に費やす同カレッジのメンバーは50人。今回は12人がツアーに参加している。来日してからの数日の間に、日本のお辞儀など、感謝の表し方などにも違いを感じ、「カルチャーの違いを知ることも、このツアーの目的」とした。

 快勝した四日市メリノール学院も今大会が初出場。キャプテンの河内陽愛(ひより)は、アメリカ・ノースカロライナの学校が日本ツアーに来た時に一度試合をしたことがあるが、「なかなかできない経験」と、国際大会でプレーできる喜びを話した。

写真左上から時計回りに、四日市メリノール学院、ラフボロー カレッジ、華やかデザインのレフリージャージー、福岡ラグビーフットボールクラブ。(撮影/松本かおり)

「みんな、楽しみにしていました。試合は、相手の方が大きく、コンタクトでは苦しみましたが、自分たちのラグビーを出せた」
 部員は31人。15人制と7人制の両方に取り組む活動をしている。大会2日目の夜には、全チームが参加するウェルカムパーティーも催される。その場で披露する余興の準備も万端だ。

 大会の歴史の中で、ワールドカップの舞台に立つ選手たちを何人も輩出してきた。世界の舞台で活躍する選手たちの若き日の想い出の中に、宗像の地が刻まれているなんて素敵。
 2025年の大会の記憶も一人ひとりの選手がそれぞれの国、地域に持ち帰って、平和とラグビーの絆が広がっていくきっかけとなる。


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