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W杯イヤーのNZ女子『スーパーラグビー・アウピキ』開幕。ブルーズが連覇に向け好発進
開幕戦で躍動したブルーズ・ウィメンズのWTBポーシャ・ウッドマン・ウィクリフ。(Getty Images)

W杯イヤーのNZ女子『スーパーラグビー・アウピキ』開幕。ブルーズが連覇に向け好発進

松尾智規

 夏の終盤を迎えているニュージーランド(以下、NZ)で女子のスーパーラグビーが3月1日に開幕した。
 今年で4年目を迎えるNZ女子『スーパーラグビー・アウピキ』は、強い日差しの下で幕を開けた。

 大会の参加チームは、北島からブルーズ・ウィメンズ、チーフス・マナワ、ハリケーンズ・ポウア、南島からマタトゥ(クルセイダーズとハイランダーズの連合軍)の合計4チーム。ホーム&アウェーで6試合戦いレギュラーシーズンの上位2チームで決勝をおこなう。

 過去の優勝チームは、アウピキ元年の2022年はチーフス・マナワ、2023年はマタトゥ、2024年はブルーズ・ウィメンズとなっている。
 今年はアウピキの優勝チームが、タズマン海峡を挟んだ隣国、オーストラリアのスーパーラグビー女子の優勝チームと戦う事が新たに追加された(Women’s Super Rugby Champions Final )。
 昨年は、齊藤聖奈、永田虹歩のふたり(ともに三重パールズ)の日本代表選手がスーパーラグビー・アウピキに初参加した。惜しくも優勝を逃したチーフス・マナワでプレーしたFL/NO8齊藤は、大きな選手に囲まれながらも、果敢に体を張る姿が印象的だった。2トライを挙げるなど、高いレベルの中でも攻撃センスを披露した。 
 優勝したブルーズ・ウィメンズでは、HO/PR永田虹歩が試合を重ねるごとにステップアップしていく姿が印象的だった。決勝では途中出場から右PRに入り、ワークレートの高さと安定したスクラムで優勝に貢献した。
 今年のアウピキに日本人選手の参加がないのが寂しいが、8月、9月にイングランドで開催されるラグビーワールドカップに向け、各選手がNZ代表入りのアピールをする場となる。熱い戦いが期待される。

昨年の大会にはサクラフィフティーンの齊藤聖奈もチーフス・マナワでプレーした。(撮影/松尾智規)


◆マタトゥがタレント揃いのチーフスに勝利。


 今季のオープニングでは、チーフス・マナワがホームのハミルトンにマタトゥを迎えて戦った。
 今年のNZは、冷夏と言えるほど気温が上がらない日が続いていたが、この日は日差しが強く気温が高かった。両チームとも急な暑さに対応できていない印象で簡単なミスを連発し、試合が途切れる場面が続いた。
 スコアボードに初めて得点が刻まれたのは22分。WTBルィビ・トゥイのトライでチーフス・マナワが先制した。35分にPGを加えたチーフス・マナワが8-0とリードして前半を折り返した。 

 ロースコアの前半と打って変わって後半に入るとスコアボードが活発に動いた。マタトゥは、57分のCTBエイミー・デュプレッシーのトライをきっかけに勢いを出した。
 波に乗った相手に、一時は20-31と突き放されたチーフス・マナワは、終了間際にWTBトゥイがこの日2つ目のトライを挙げ、6点差まで詰め寄った。しかし試合を通じてミスの多さが尾を引いて逆転には至らなかった。

 結局、マタトゥが25-31で逃げ切ったこの試合。前評判では、ブラックファーンズ(女子NZ代表)経験者が多く、タレント揃いのチーフス有利の声が多かっただけに、アップセット勝利と言っていいかもしれない。

 勝利したマタトゥは、この日何度も良い突破をしていたCTBデュプレッシー(2トライ)の他に、昨年代表デビューをしたSHマイア・ジョセフ(前日本代表の指揮官ジェイミー・ジョセフの娘)が、得意のキックを織り交ぜながら印象的なプレーを見せていた。

マタトゥのSHはマイア・ジョセフ。父はジェイミー。(Getty Images)


◆ポーシャの圧巻トライも出た! 昨年王者ブルーズが圧勝、連覇に向けて好発進


 開幕第2試合目は、4チームの中で唯一優勝がないハリケーンズ・ポウアがホームのウエリントンにブルーズ・ウィメンズを迎えておこなわれた。
 試合開始からブルーズが力の差を見せつけるもハリケーンズ・ポウアも粘りを見せる展開となった。2トライを奪ったブルーズがハーフタイムまでに17-0とリードを奪った。
 後半に入るとブルーズの攻撃に磨きがかかり、試合は一方的な展開となる。この試合で2トライの12番ルアヘイ・デマント、1トライを挙げた13番シルビア・ブラントなど代表勢の流石のプレーが目立った。5トライを追加し、50-10と圧勝した。

 試合後のインタビューでは、ブルーズのキャプテンLOマイア・ルースは、「スコアはともかく、スキルセットに関しては満足していない」とスロースタートとなったチームに厳しい評価をした。
 しかしながら、強力なスクラムを始めセットピースは安定しており、代表勢を多く抱えたメンバーたちの活躍ぶりと若手の成長を見ると、連覇する可能性が高そうだ。

 今季ブルーズに加入したWTBポーシャ・ウッドマン・ウィクリフは、まだまだ健在なところを見せつけた。ボールを持てばスピード、パワー、そして巧みなランニングスキルで相手を抜き去る。前半18分、自陣から60メートルを走り切るトライを挙げたシーンは圧巻だった。
 セブンズ、15人制とも代表から引退を表明しているポーシャだが、まだまだ高いレベルでも充分に通用する事を証明した。ワールドカップイヤーでもある事から、引退を撤回するのか注目される。

 一方のハリケーンズは、個々の突破力があるなど魅力的なチームではあるものの、特に後半フィットネスが落ちてくると失点が増える。その課題は、今年も変わらない印象だ。ケガ人の復帰で今後どこまで他チームに対抗できるか注目されるが、開幕戦を見ていると、今年も厳しいシーズンになりそうだ。

 開幕週という事もあり、各チームにミスが目立った。しかし、男子顔負けの激しいコリジョン(衝突)がたくさん見られる、白熱した試合だった。第2節以降は各チームとも徐々にフィットし、さらにエキサイティングな試合を見せてくれるだろう。

 開幕の2試合は、男子のスーパーラグビー・パシフィックの前座試合の開催だった。今年は男子チームの試合に合わせてダブルヘッダー開催を昨季より多くする日程を組んでいる。毎年少しずつではあるが、女子ラグビー認知の拡大を試みている様子がうかがえる。
 女子ラグビーの発展にも注目しつつ、今年もスーパーラグビー・アウピキを見守りたい。





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