![【Just TALK】「きょうはテストマッチ」。田村優[横浜キヤノンイーグルス]](https://www.justrugby.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/KM3_6306.jpg)
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横浜キヤノンイーグルスの田村優は、3月2日、東京・秩父宮ラグビー場にいた。リーグワン1部の第10節に、スタンドオフとして先発フル出場を果たした。
東京サントリーサンゴリアスを33-22で制した。前年度まで2季連続でプレーオフの3位決定戦でぶつかった好敵手を、首尾よく下した。
日本代表として2度のワールドカップに出場してきた36歳の田村は、今度のゲームを「テストマッチ(代表戦)」と見立てていた。今季のプレーオフ行き(6位以内)を争うシビアな80分だったからだ。戦前の順位はイーグルスが12チーム中6位で、サンゴリアスは同7位だった。
田村は当日、高い弾道のキックを多用したゲームコントロールに長距離のペナルティゴールを絡めた。チームに計2枚のイエローカードを出されながらも、5勝目をマークした。順位を5位に引き上げた。
ノーサイドのあとは取材エリアに現れ、囲み取材に応じた。
——2月23日の第9節では、昇格2年目の三重ホンダヒートに負けてしまっています。場所は敵地の三重交通G スポーツの杜 鈴鹿で、スコアは17-20。この敗戦を受け、指令塔として何を改善しましたか。
「いや、敬介さん(沢木監督)から『パフォーマンスはいい』と言われているので、自分の仕事を徹底してやる。それだけです。僕は」
——では、ヒート戦の当日から週明けの活動までの間、意識したことはありますか。
「いや、ないです。自分の準備をしっかりやるってことだけ。この試合がビッグマッチになるので」
——練習の期間はどんな声をかけたか。
「特に喋ってないです。皆が、いい熱量でできて」

サンゴリアス戦に向けたトレーニングは、2月25日に始まった。選手同士が話し合って課題をあぶり出し、全体ミーティングでは沢木敬介監督が「Love for the Eagles」という標語を示した。「ライザーズ」と呼ばれる控えグループの圧力は、一段と激しさが増したようだ。
2020年に指揮官となった沢木は「勝ちにこだわっていかなきゃいけないと、僕もあらためて思った」と語る。
「結局、何かを突き動かすものって、そういう気持ちだと思うんですよ」
田村はこうだ。
——ウォーミングアップの段階で、ムードのよさが伝わってきました。当日までの準備はどうでしたか。
「あの、ライザーズ(控えグループ)にボコボコにされました! …勝たなきゃいけない気持ちも相まって、堅苦しい感じはありました」
そのムードをイーグルスは、パフォーマンスに昇華させてゆく。
キックオフ後は自陣にくぎ付けとなるシーンもあったが、ロックのマシュー・フィリップらが防御で粘った。前半22分までを0-0とした。
スコアの動いた中盤戦以降は、田村が前半29分、42分、後半16分、30分に計4本のペナルティーゴールを決めた。うち2本はゴールポストまで40メートル超の距離ながらも、成功させた。
ペナルティキックでのプレーの選択権がある梶村祐介主将は「僕は正直、(決めるには)遠いと思っていた」と振り返っている。
「でも、優さんが『いける』と言ってくれたので、10番(スタンドオフ)が言うならそうしようと」
当の田村は「…まぁ、こういう感じで勝とうかな、って決めていたんで。はい」とし、こうも述べた。
——長距離のペナルティゴールについては。
「キャプテン、(プレー再開後の)キックオフレシーブが心配だったみたいで、できるだけ長い間敵陣にいたかったみたいです。本当はコーナーに蹴って、ラインアウト、モールで…(トライを狙う)ということ(選択肢)もありました。ただ、勝たなきゃいけない試合だったんで、理想を追い求めていても…と。(ペナルティゴールを)外しても相手のドロップアウトから始まる。どっちにしろ、僕らはずっと敵陣にいられた」
——勝つべき試合に勝てるチームになったと感じますか。
「それはもちろん感じます。ファフ(・デクラーク、現役南アフリカ代表でもある同僚のスクラムハーフ)とも、『きょうは、テストマッチ(代表戦)だね』と(話していた)。これをプレーオフ前に経験できたのはよかった」
——エリア管理の徹底で失点のリスクを防ぎ、得点機を逃さない。前半は、ハイパントも活用していました。
「どうやってプレッシャーかけようか…っていうことで。きょうは、テストマッチをしようよってことで。(テストマッチの)戦い方と言いますか…。きれいじゃないけど、勝てばいいんで」

イーグルスにおける殊勲者のひとりには、ウイングの石田吉平も挙がる。後半36分には貴重なトライを決め、その直前には、味方の蹴った球を高い打点でキャッチしていた。
何より試合終了直前には、自陣ゴール前でロータックル。向こうの落球を誘った。
前半23分に先制トライを与えた時は、自身の真横をランナーに通過されてしまっていた。そのことについて、田村に喝を入れられていたようだ。
「タックルができないなら、代われ、と」
田村も認めた。
「タックルしろ、って言いました。普段、仲がいいんで、1回くらい怒っても大丈夫」
リーグはここから休息週に突入。第6節からの5連戦を白星で終えられたことは前向きか。そう聞かれたプレーメーカーは、「そうすね。…もう、行っていいですか? 暑くて、暑くて。身体に熱がこもっていて」。当日、東京の最高気温は20度超だった。