![府中ダービーで2季ぶり復帰の仁熊秀斗[サンゴリアス]、先発をつかむ。](https://www.justrugby.jp/cms/wp-content/uploads/2025/02/KM3_5176_2.jpg)
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巡ってきたチャンスをつかんだ選手の存在は、チームにエナジーを与える。
2月23日に山梨・JITリサイクルインクスタジアムで浦安D-Rocksと戦う東京サントリーサンゴリアスの先発メンバーに、前節の東芝ブレイブルーパス東京戦で今季初めて出場した仁熊秀斗(にぐま・ひでと)が選ばれた。
重い肉離れもあり、昨季はリーグワンの舞台に立てなかった仁熊。その前のシーズンも、ジョーンズ骨折(第5中足骨骨折)で3試合に出場しただけだった。
2月15日のブレイブルーパス戦は約700日ぶりの舞台。ベンチスタートながらトライも奪う活躍だった。
CTB中野将伍のアクシデントもあり、前半16分にはピッチに立つことになった。
本人は、「いつ(試合に)入ってもいいように、ベンチに座らず、体を動かし続けていました。いつでも出られるように準備していた」と振り返る。
その言葉通り、前半28分にはトライを挙げた。
敵陣右ラインアウトからの攻撃だった。ピッチ中央で作ったラックでSH流大がゴール前にキックを蹴り上げる。チェイスしたWTB尾崎晟也が再獲得すると、黄色いジャージーがトライライン前に殺到した。
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FWでさらに前に出たラックの横に、逆サイドから鋭角に走り込んだのが背番号23、左WTBの位置に入っていた仁熊だった。
流からのショートパスを受け、防御を破ってインゴールにボールを置いた。
「チャンスだと思ったので、ゆたかさん(SH流)に声をかけました。得意なエリアで、自分のプレーができました」
コミュニケーションと判断が光るプレーだった。
仁熊は後半にも持ち味を出した。7分、FB河瀬諒介のトライを呼ぶ走りを見せた。
自陣左でのスクラムで圧力をかけ、NO8箸本龍雅が前へ出た。そこから右へ展開。外に開いたSO高本幹也から打ち返しのパスを受けた仁熊は、巧みなコース取りで好走を見せる。最後は4人のディフェンダーを引き付け、ここしかないタイミングで外を駆け上がる背番号15へパスを送り、チームに5点を加えた。
ラストパスのタイミングを「見えていたし、(河瀬の)声もあった。最後は自分の判断」と話した仁熊は、自分の強みを、「いろんなところに顔を出す。小さいので、相手に気づかれないところからボールをもらう」と説明した。
この日のトライとアシストは、まさに強みが凝縮されたものだった。
石見智翠館高校から筑波大を経て、2021年の春にサンゴリアスに加入した。
リーグワン元年と重なったルーキーイヤーには9試合に出場(先発3試合)するも、翌年から怪我に苦しんでいた。
より飛躍しようと思っていた矢先のアクシデントに、最初は落ち込んだ。しかし、這い上がれたのはチーム内に漂う空気のお陰と感謝する。
「先輩や仲間の声が力になりました。サンゴリアスは競争も激しいですが、みんな仲がいい。ゆたかさん、尾崎晟也さんも本当によく声をかけてくださったので、リハビリやらないといけないな、と頑張れました」
気持ちが落ちたのは最初だけだった。
プレシーズンマッチではプレーしていたけれど、久々の出番は府中ダービーという舞台。正直、「めちゃくちゃ緊張しました」。
覚悟を決めた。
「自分のできる仕事をする、と決めました。派手なプレーはいらない。ボールキャリー、オーバーと、精度高くプレーしようと思った。気持ちを出し、まずタックルから、と」
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試合には33-43と敗れたものの、手応えは得た。
相手のブレイクダウン周辺の圧力を受けて外を破られるなど防御面に改善点が見つかり、「練習で直していかないと」と話すも、「満足はしていませんが、久しぶりに出て、活躍できたことは自信になります」。
いい表情だった。
小野晃征ヘッドコーチはブレイブルーパス戦後の記者会見で、仁熊や今季初先発で力強くプレーしたNO8箸本の名を挙げ、「チャンスを与えられた選手たちがハングリーに、いいパフォーマンスを出してくれた」と評価。そして、次戦のD-Rocks戦に先発で起用した。
第3節から5戦続けて負けなしと調子を上げていたものの、府中ダービーの敗戦により、8戦を終えたところで3勝3敗2引き分けの7位。なかなか加速できないサンゴリアスだが、苦闘していた選手たちの上昇が仲間たちに与える力は小さくない。
仁熊も箸本もそう感じ、もっと暴れる。