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2025年度のスーパーラグビー・パシフィックが2月14日、クルセイダーズ×ハリケーンズのニュージーランド勢の対決で幕を開ける。
昨季までNZ 5チーム、オーストラリア(以下、AUS) 5チーム、フィジー1チーム、パシフィック1チームの合計12チームが競い合っていた。しかしレベルズ(AUS)の財政難でチームが解散となり今季から11チームに削減されておこなわれる。
開幕を目前にNZフランチャイズのチームを紹介する。前回のブルーズ、チーフス、ハリケーンズの3チームに続いて、今回はクルセイダーズ、ハイランダーズと、NZを本拠地として活動しているモアナ・パシフィカの3チームだ。
◆クルセイダーズ/脱落した王者の巻き返しなるか。
昨季は開幕5連敗スタート。その後も波に乗れず、レギュラーシーズン9位でプレーオフ進出を逃した。2017年から7連覇した面影は全くなかった。2023年の優勝後にチームを去ったスコット・ロバートソン(前HC)、LOサム・ホワイトロック、SOリッチー・モウンガの存在が偉大だったと言わざるを得ない。
カリスマ的存在のロバートソンのあとを引き継いだロブ・ペニーHCは、成績不振によりメディアの標的にされた。チーム内でも選手起用について疑念を抱く声もあり解任濃厚の声も挙がったが結果的に続投となった。
ペニー体制2季目は、昨季以上にプレッシャーがかかる。復活はあるのだろうか。鍵を握るのは、昨季に続きモウンガの抜けた10番のポジションとチームの安定剤的存在だったホワイトロックのようなリーダーシップ、そして指揮官の選手起用になるか。
10番問題は、新加入の元ワラビーズのジェームズ・オコナーがプレシーズンで流石のプレーを見せた。クルセイダーズの救世主となれるか。
注目のキャプテンは今季からCTBデイヴィット・ハヴィリが就任。王者復活をかけてハヴィリがリーダーシップを発揮できるか。
スコッド全体を見れば、今季も代表クラス(ABs/ABs XV)の選手が名を連ね、引き続き充実している。それだけにチームが波に乗れば王者に返り咲く力は充分にある。昨季、比較的大人しかったCTBリーヴァイ・アウムアが今季こそチームにマッチできれば、自然と結果もついてくるだろう。
復活に重要視されるのは序盤戦。ただ、シーズン直前でHOコーディー・テイラー(序盤数試合を欠場見込み)をはじめ、フロントローの選手に複数のケガ人が出ていることが気になる。
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●注目選手 : SHカイル・プレストン
SOオコナーにスポットライトが当たっているが、紹介したい選手がいる。25歳の遅咲きながらスーパーラグビー初参戦。エリート街道のラグビー人生ではなく、クラブラグビーから地道に這い上がってきた男がカイル・プレストンだ。2024年のNPC(ウェリントン)で8トライを挙げるなど優勝に貢献。その結果、クルセイダーズから真っ先に声がかかり、念願のスーパーラグビー選手となった。
トライが取れるだけでなく、左右から繰り出すキックにも定評がある。同ポジションのミッチェル・ドラモンド、ノア・ホッザムのキャップホルダー相手にレギュラー争いに挑む。
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◆ハイランダーズ/注目は指揮官ジョセフの復帰。リクルート成功で上位を狙う。
長年上位に食い込めてないハイランダーズ。今季は前日本代表ヘッドコーチのジェイミー・ジョセフが指揮官復帰となりメディアを賑わせている。
選手以上に注目されている指揮官は、昨年に引き続きNZ国内の他チームで出場機会に恵まれてない有望選手のリクルートに精を出した。ブルーズからHOソアネ・ヴィケナとWTBケイリブ・タンギタウ、ハリケーンズからFLのTK・ハウデンなどの有望選手を獲得して選手層に厚みを持たせることを試みた。
高いリーダーシップと渾身的なプレーでチームを引っ張ったFL/NO8ビリー・ハーモンがチームを去り、今季はFL/NO8ヒュー・レントン、CTB/WTBティモジ・タヴァタヴァナウイの共同キャプテン制となった。指揮官は彼らの情熱、献身的な面を評価してリーダーに任命した。両者のワークレートの高さは半端なく、リーダーシップと同時にパフォーマンスにおいてもチームの大黒柱的存在になるだろう。
ハイランダーズで現オールブラックスはPRイーサン・デグルート1人のみ。この数字が近年のスーパーラグビーの成績にも比例する。しかしPRサウラ・マウ、LOファビアン・ホランド、SHフォラウ・ファカタヴァ(NZ代表2キャプ)、CTBトーマス・ウマガ・ジェンセン、ユーティリティーBKのサム・ギルバートなど、能力の高い選手は何人もいる。
毎年ケガ人に悩まされている傾向がある。新加入の選手や若手の成長で乗り越えたいところだ。
FWのデキは悪くないだけにBK陣のパフォーマンスが鍵となる。2023年を最後にレジェンドのSHアーロン・スミスがチームを去り、SHの選手層、司令塔(10番)も毎年定まっていない。依然としてそこに不安が残る。SHファカタヴァ、SOキャメロン・ミラーら若手選手のレベルアップが待たれる。
ジョセフHCの影響で才能ある選手が開花すれば、今年のハイランダーズは面白い存在になるだろう。
●注目選手 : WTBケイリブ・タンギタウ
速くて強い。スペースを与えたらデンジャラスなWTBタンギタウは、タレント揃いのブルーズで出場機会に恵まれなかった。NZ南島最南端のフランチャイズに活躍の場を求めた。
プレシーズンマッチでも再三ビックゲインを見せるなど、すでにインパクトを残している。得点力不足のハイランダーズの悩み解消に期待がかかる。試合に飢えている。ディフェンスを切り裂くランが炸裂し、大暴れする姿が今から目に浮かぶ。
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◆モアナ・パシフィカ/アーディー加入で初のプレーオフも視野に。
スーパーラグビーに参戦して4季目となるモアナパシフィカ。2022年のデビューシーズンのメンバーの多くはスーパーラグビーの下のレベル、NPC(NZ国内州表選手権)である程度活躍している選手たちだった。いわゆるNZフランチャイズのスーパーラグビーチームとの正契約に届かなかった者たちでのチーム編成とあり、最初の2季は最下位に沈んだ。
あの時から月日が経ち、格上のチームとの対戦を経て徐々に経験値を高めている。
昨季はNZフランチャイズからWTBジュリアン・サヴェア(元ハリケーンズ)、FL/NO8シオネ・ハヴィリ=タリトゥイ(元クルセイダーズ)、CTB/WTBペペサナ・パタフィロ(元クルセイダーズ/ハリケーンズ)らの移籍がチームの底上げをもたらして4勝を挙げ、最下位脱出となった(11位)。
今季はオールブラックスの大黒柱であるFL/NO8アーディー・サヴェアを筆頭に、オーストラリア代表経験のある196cm、 130kgの大型PRポネ・ファアマウシリ(元レベルズ)、SOジャクソン・ガーデンバショップ(元ハリケーンズ)、昨年ラグビー・リーグ(13人制)でプレーしていたWTB/ FBソロモン・アライマロ(元チーフス/ハイランダーズ)と言った経験豊富な選手の加入があった。プレーオフも視野に入ってきたと言える。
毎年下位に沈みながらも格上相手にアップセット勝利をするなど、勢いに乗った時の爆発力は半端ない。今季は集中力を継続できるか。そこがプレーオフ進出の鍵となる。
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●注目選手 : FL/NO8アーディー・サヴェア
2023年の世界最優秀選手に選ばれたアーディーが昨季サバティカル(日本でプレー)から帰国した。しかし前チームのハリケーンズには戻らず、モアナ・パシフィカと契約したことはNZメディアを大きく騒がせた。
オールブラックスで最も頼りになる男の加入により、モアナ・パシフィカの戦力アップは確実だ。経験の浅い選手たちにとってアーディーは雲の上のような存在。注目選手と言うには当たり前過ぎる。他の選手に与える影響こそ期待される点だ。キャプテンに任命され、アーディー自身もこれまで以上に精力的なプレーを見せてくれるだろう。
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