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2035年のW杯再招致へ視界良し? ワールドラグビー、ロビンソン新会長が来日、10年後について話す
南半球出身者で初のワールドラグビー会長となったブレット・ロビンソン氏。オーストラリア代表キャップ16を持つ。クインズランド大で医学学位、オックスフォード大で臨床整形外科学の博士号を取得。クインズランド大の脳研究所で脳震盪研究に参加した経験もある。ヘルスケア、金融サービス、スポーツ分野で20年以上のCEOおよびエグゼクティブ経験がありビジネス面にも強い。55歳。(撮影/松本かおり)
2025.02.04
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2035年のW杯再招致へ視界良し? ワールドラグビー、ロビンソン新会長が来日、10年後について話す

田村一博

 10年後にまたあの熱狂がやって来る予感が強くなった気がした。
 2月3日、来日中のワールドラグビー(世界のラグビーの統括団体)の新会長、ブレット・ロビンソン氏が都内で記者会見を開いた。

 ロビンソン氏は2024年11月に実施された会長選を経て現職に就いた。会長就任後の海外ユニオン訪問(会談)は今回が初めて。
 その理由について同会長は、昨秋の会長戦時に「日本ラグビー協会から多大なる支援を受け、支えていただいた。新会長になった私が日本を最初に訪れるのは当然のこと」と話した。

 ワールドラグビーのアラン・ギルピンCEOも同時に来日し、この日の会見にも同席した。
 2人は日本がホスト国となって開催した2019年のラグビーワールドカップ(以下、RWC)について、あらためて賞賛の声をあげた。

 大会前には日本での開催について懐疑的な声があった。しかし成功するだけでなく、大きな利益を出して不安視していた人たちを黙らせた。
 そしてその結果、大きな信頼を得たと語った。

 今回の来日については、「過去のことだけでなく、日本ラグビー協会と将来のワールドカップについて話をしている」と明言した。
 日本ラグビー協会は2035年大会、2039年をターゲットに、できるだけ早く開催したい意向を持ち、女子ワールドカップやセブンズの国際大会も視野に入れているとした。

左からロビンソン会長、日本ラグビー協会の土田雅人会長、ワールドラグビーのアラン・ギルピンCEO。(撮影/松本かおり)


 RWCの開催地決定は、以前は、招致を希望する各国ユニオン、政府から入札のような形がとられていた。
 しかし、その方式は2020年に廃止された。競争→招致決定の中で多くの費用が発生するからだ。現在は、長期的な普及、強化、経済など多方面の計画性を重視してワールドラグビーが決定し、年次総会での承認を得るスタイルとなっている。

 その決定方式により2022年5月には、イングランドでのRWC2025(女子)、オーストラリアでのRWC2027(男子)、RWC2029(女子)、アメリカでのRWC2031(男子)、RWC2033(女子)の開催が決まった。
 アメリカにとっては開催まで多くの時間がある時点での決定により、準備、成長に十分注力できるという考え方だ。

 2035年大会以降の開催地についても長期的視点により、財政的にどこで開催するのがもっとも意味があるのか、競技的(普及)にどこでプレーをするのがもっとも効果的なのか、両面を踏まえて決定されることになる。

 2035年大会の開催地については、RWC2027の開幕前までに決まることも明言された。
 現在日本以外に招致の意思を明確にしているのは、スペイン、イタリアで、UK&アイルランドも関心を持っているようだ。

 世界のラグビーは動き続けている。
 例えばRWC2027は、参加国が前回大会より4つ増えて24か国となる。6プール×4チームでプールステージが実施され、各プールの上位2チームと3位の中の上位4チームが16チームで争うノックアウトステージに進出するフォーマットになった。

 同大会は10月1日から11月13日の間で開催される。オーストラリア国内での開催地は1月30日に発表された。
 開幕戦はパース、ファイナルはシドニー。その2都市も含めたブリスベン、メルボルン、アデレード、ニューカッスル、タウンズビルの7都市で全52試合がおこなわれる。
 選手たちのウェルフェアやエンターテインメント性を踏まえて大会期間は前回大会より1週間短くなる。試合の組み合わせの抽選は2026年の1月に実施予定だ。

2027年の開幕戦はパースが舞台に。同地ではプールステージでの4試合とラウンド16の2試合が実施される。©World Rugby


 会見では2026年から始まる新しい国際大会(ラグビー・ネーションズチャンピオンシップ)についても触れられた。RWCとブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズの遠征の実施年を除き、隔年での開催となるものだ。

 シックス・ネーションズ参加の6チームと、ザ・ラグビーチャンピオンシップの4チームに日本、フィジーを加えた計12チームで1部が構成される見込みだ。また、2部も12チーム。
 1部の対戦形式(組み分け)などはワールドラグビーも交えて現在協議中で、2030年からは1部と2部の入れ替えもおこなわれる。

 ロビンソン新会長は現役時代はバックローとして活躍し、オーストラリア代表キャップ16を持つ。スーパーラグビーではブランビーズの初代キャプテンを務め、同チームとともに来日、プレー経験もある。
 1998年からヘッドコーチに就いたエディー・ジョーンズ氏とはともに戦った仲だ。その経験から現在低調な成績を残している日本代表指揮官について、「エディーのことをリスペクトしています。能力も経験もある。ただ短期的にいろいろ変えることが好きなので、がっかりするようなことが起こる可能性はあります。しかし長期的な視野に立っていると私は信じています」と話した。

 オックスフォード大に学んだ時はケンブリッジ大とのヴァーシティーマッチにキャプテンとして出場。強いリーダーシップを持つロビンソン会長は、英・プレミアシップのサラセンズでのコーチ経験もある。現日本ラグビー協会の岩渕健輔専務理事は、その当時の選手。
 日本ラグビーと縁が深い同会長の存在は、今後の支えとなりそうだ。




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