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開幕から15番を背負い続けられている喜びはある。
しかしチームはここまで2敗2分け。その成績に責任を強く感じる。
1月12日におこなわれたクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦はCTB中村亮土のサンゴリアスキャップが100に到達する試合だったからどうしても勝ちたかったのに、勝利で祝うことはできなかった。
河瀬諒介(りょうすけ)が前節のトヨタヴェルブリッツ戦(30-30)に続いて、26-26と引き分けた試合後のロッカールームの空気を話す。
「勝つことはできませんでしたが、亮土さんが積み上げてきた100キャップがなくなるものではないので、ちゃんとお祝いしよう、と」
それでも、「勝ちたかった」の言葉が何度も出た。
「80分間、エフォートし続けられたのはよかったし、チームは試合ごとに伸びている」と言いながらも、なかなか勝利をつかめない状況がもどかしそうだった。
早大から加入して3シーズン目。今季は初めて開幕戦スタメンの座を得た。
その試合以来毎試合FBとして先発を続けている。1月19日に三重・鈴鹿でおこなわれる三重ホンダヒート戦の出場予定選手にも名を連ね、これで5戦連続先発となる。
しかしチームは、今季まだ勝利を手にできていないから胸中は複雑だ。
「試合に出て調子は上がっていますし、いいプレーも出ていますが、勝ちにつながっていない。チームに勢いを与えるプレーをしないといけない」と自分に向ける目は厳しい。
ディフェンス突破25は、第4節終了時でリーグワンD1最多。自身の好調さは数字も示しているけれど、チームが勝たなければ、それはただの数字に終わる。
チームを勝たせる選手になりたい。
過去2シーズンの試合出場は合計12戦。そのうち先発は4試合だけと、プレータイムは短かった。
その状況に、チームの勝敗より、「自分が試合に出たいという気持ちの方が大きかった」という。
今季は変わった。
「チームの代表として試合に出ています。勝たないといけない。その責任がある」
ピッチに立つ自分の状況を以前とは違うと話す。
「カウンターに自信を持ってプレーできています。ボールを持ったら常にスペースを探し、ゲインできるところを探しながら動けています」
試合に出続けることでしか成長できないものもある。自分の仕事を頭では理解している気にはなっていても、実際にピッチに立って気づくことはいくらでもある。
実際、河瀬は今季出場を重ねて「やるべきことが、チームとしても、自分としても、より明確になっていっています」と話す。
「カウンター(アタック)も、どこでキックをキャッチすると、より効果的に走れるかなど感覚をつかめてきています」
キックを蹴り出すのか否かなど、状況を瞬時に判断する力も高まっている。
その結果は、実際の各試合でのプレーにも表れる。ボールタッチも増えた。スピードあるランでチャンスを作ることも多い。
4試合で3トライは、チーム最多となっている。
しかし、その3トライを挙げた第2節のリコーブラックラムズ東京戦は、感情の起伏の激しい試合だった。
前半20分にラインアウトからの攻撃を左ライン際の好走で仕上げると、後半に入って2トライを追加する。ゴール前で強さを見せた後の3本目は、40メートル以上を走り、スピードでディフェンダーを振り切ったものだった。
しかし、32-33で迎えたフルタイム直前、河瀬は相手ゴール前の左端でロングパスを受け、インゴール左スミにボールを置いたように見えた。
TMOでのチェック後、相手タックルを受けて左足がグラウンディングより先にタッチラインに触れたと判定される。歓喜はすぐに落胆に変わった。
大きく先行されながら、チーム全員で追い上げ、最後の最後にひっくり返したと思ったのに、結局届かなかった。
80分の間に力を出し切り、負けそうになっても諦めず、逆転の喜びを感じたあとに沈む。
それらをすべてピッチの上で、自分のこととして受け止める。それ以上に成長の糧となる経験があるだろうか。
河瀬自身、「そういった心の動きが成長を促すと思っています。そのためにも、毎日の練習からやり切らないといけない」と、以前より大きな責任を感じる日々の中に身を置けている充実を話す。
前シーズンを終えた後、オフにニュージーランドに滞在する機会を得た(2024年6月、7月)。
オークランドのワイテマタクラブに所属し、WTB、FB、そして時には SOとしてもプレーし、7試合に出た。言葉の壁がある中で苦労もしたが、仲間に助けられながら全試合にフル出場した。逞しくなった。
オークランド代表のトレーニングにも参加し、そこでも刺激を得た。
現地での体感をもとに、帰国後もウエートトレーニングに力を入れた。ステップ後にもスピードが落ちないようにするトレーニングにも取り組んだ。
オフの間に積み重ねた国内外での時間のすべてが、現在の下地にある。
まだシーズン序盤。苦しむサンゴリアスが上位に浮上する時間は、十分残されている。
チームが上昇気流に乗る中にも身を置きたい。その勢いを自分が作りたい。