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学生クラブ日本一の明大MRC、圧倒的強さの芯を貫くもの。
感激の時。全員で徳竹悠主将を胴上げ

学生クラブ日本一の明大MRC、圧倒的強さの芯を貫くもの。

田村一博

 赤黒と真紅。1月13日、全国大学選手権決勝の早大×帝京大が秩父宮ラグビー場でおこなわれる。
 全国の多くの大学ラグビー部が目指した大学日本一の座。しかし、そこに到達できるのは1チームだけだ。王者となるチーム以外は、頂点に届かぬままシーズンの活動を終える。

 明大もそうだ。
 2023-2024シーズンは大学選手権のファイナリストになり、もう一歩のところまでは勝ち進んだ。
 しかし今季は同選手権準決勝で帝京大に敗れた。

創部は1952年。現在は明大中野や明大中野八王子のOBも多い


 2023年に創部100年を迎えた明大ラグビー部は2018-19シーズン以来頂点から離れている。しかし、こちらのメイジは頂点に立った。
 明治大学体同連和泉ラグビー部(以下、MRC)は第23回東西学生クラブ対抗試合に勝ち学生クラブ日本一となった。

 その試合は神戸総合運動公園ユニバー記念競技場補助競技場で2024年12月22日におこなわれ、近畿大学理工学部ラグビーフットボール部ドルフィンズに64-21で勝った。
 10トライを奪い、7年ぶり4回目の栄冠を手にした。

 東西学生クラブ対抗試合は、学生クラブの関東王者と関西王者が戦い、頂点を争うものだ。
 MRCは1952年から活動を始めた。創部70年を超える歴史を誇る。

 今回の頂上決戦では、圧倒して勝ったと言っていい。NO8の徳竹悠主将も「得点通りの圧勝だったと思います」と話す。
「FWはコンタクトもセットプレーも圧倒して、やりたいことがすべてやれました」との体感を考えれば、的確なプレーを重ねての勝利だったと分かる。
 キャプテンは「アドバンテージが出ているときの判断も、全員が共有して動けていた」と言い、余裕を持ってプレーできたことが大勝につながったようだ。

ピッチ内外で先頭に立つNO8徳竹悠主将


 試合は前半3分に徳竹主将が挙げたトライで動き始めた。
 その直後に5点を返されるも、10分にPR佐野颯、16分にFB二反田幸介、LO管谷陽斗がトライを重ね、試合の主導権を握った。
 前半28分にインゴールに入られるも、34分にCTB齊藤颯太郎がトライラインを越える。33-14とリードしてハーフタイムを迎えた。

 MRCは後半に入って、さらにギアを上げた。
 5分にFL田中陽幸がトライを挙げると、それも含めて5トライを重ねる。相手の反撃を1トライだけに抑えて歓喜の時を迎えた。

 試合を振り返り、「自分たちの強みを出し、やりたいことを全部やれた試合でした。FWがスクラム、接点、ディフェンス、そしてボールキャリーで前へ出てくれた。そのお陰でできたいいリズムを活かし、タテにも外にも攻めることができて楽しい試合になりました」と話したのはSOでBKリーダーの中村太陽だ。

 副将を務めるWTB藤川純平は追い風の前半、最初は普段通りにエリアをとることも考えたが、「ボールを持つと走れていたので攻めた」と状況を把握してプレー選択したと言った。
 自分がボールを手にしたのは3回だけ。内側の選手たちがどんどん走ったからだ。

スマートに全体を動かしたSO中村太陽


「FWが前に出てできたスペースを、BKのフロントスリーがクレバーに、的確に使ってくれたので15人全員で動けました」と体感を語り、自身は外からディフェンスをコントロールしたという。

 後半5分にピッチに入ったFL久保大貴は、「入ったときの点差は広がっていましたが、実は防御の時間は短くなかった」という。
「だからディフェンスでミスを誘い、そこで起こったターンオーバ―から攻め切った。フィジカルの強みを活かし、運動量でも上回りました」

 久保は、「今季は新チーム発足時から日本一が頭にあったので、優勝した瞬間は安心した感じでした。全員が自信を持って臨んだ試合。徳竹(主将)が『負ける気がしない』と言っていた通りになりました。練習通り、これまでやってきた試合通りにプレーできました」と笑顔を見せた。

 週に3回の練習を和泉キャンパスの人工芝グラウンドでおこなっている。日曜には試合もある。多くの時間をラグビーに注いでいる集団だ。
 在籍人数は98人。やりたいことや授業を優先するクラブだが、常時50人ほどが練習に参加する。その層の厚さも今季の強さの秘密だ。

スクラムを牽引した1番の菱沼祐星(写真右)


 決勝で圧倒したスクラムを牽引したひとり、PRでFWリーダーの菱沼祐星が、その原点を話す。
「自分たちのスクラムの強みは低さがカギ。そこを意識しながらヒットもできた試合でした。例年よりフロントローの層が厚く、クラブ内で高めあうことができた結果です」と胸を張る。

 関東学生クラブ選手権で優勝して東西学生クラブ対抗試合に進出したMRCは、関東での早大GW戦、山梨学院大グリーンイーグルス(GE)戦に勝って自信を深めていったという。

 特に体育会の下部チーム、山梨学院大GE戦に47-19と勝ったのは自信になった。夏の練習試合にも勝っていたので連勝。特にFWは手応えをつかんだようだ。
 PR菱沼が振り返る。
「前年は雨の中での試合でサイズに上回る相手にやられました。パワーでゲインされ、スクラムで反則を取られた。しかし今季は改善して戦い、ディフェンスでドミネートできた」

 SO中村も「最初は陣地を取られ、FWにも前に出られましたが、焦らず、ディフェンスでボールを取り返してエリアを取り、連携して攻めることができました。サインプレーも決まった」と、自信を大きくした試合を語った。

ボールを持つCTB五十川大地の周りには多くのサポート


 徳竹主将は日本一の背景にあるものを、ラグビーそのものだけでなく、今季全員で高めたチーム力全体と話す。
「練習メニューもメンバー選考も自分たちでおこなうチームです。全員の仲のよさも強み。学年に関係なく意見を言い合える空気を作りました。仲がいいだけでなく、下級生からの意見も吸い上げてチーム力を高めました」

 副将の久保は功労者の一人だ。
 強豪・報徳学園の出身。高校時代に膝の怪我が重なったこともあり、大学ではラグビーから離れようと考え、一般受験で進学した。
 しかし2年生になる時、友人に誘われてMRCの練習に参加。その雰囲気を気に入って再びグラウンドに立つことにした。

 チームビルディングを担当し、部員同士の結びつきを深めたのが、日常の練習、試合中の連係を高める下地になった。
 その日だけの強さでないもので手にした学生クラブ日本一のタイトルには価値がある。


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