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思い続けていれば届く。それを実践しているのが日野レッドドルフィンズのスクラムハーフ、畑田康太朗だ。
鹿児島大学出身。加入2シーズン目の今季、開幕から9番のジャージーを着ている。
1月11日(土)のNECグリーンロケッツ東葛戦でも出場予定選手に名を連ねている。
レッドドルフィンズには自らアプローチして練習に参加させてもらい、加わることができた。
小1の時に福岡・太宰府少年ラグビークラブに入り、筑紫丘高校、鹿児島大を経て、リーグワンの舞台にたどり着いた。
夢を諦めなかったからだ。
高校3年時は国体出場の福岡選抜などに選ばれたが、目指した筑波大への進学は、浪人してチャレンジしても縁がなかった。
しかし、教員になれる学校を探して鹿児島大へと道を変えたのが奏功した。
同大学のラグビー部に入った。練習に参加した初日、「チームのまとまりを感じたんです」と当時の記憶を回想する。
志の高い選手や技術のある選手がいて、すぐに「入ってよかった」と感じた。
1、2年生の頃は、その部活で精一杯取り組むことを楽しんでいたけれど、上級生になって、卒業後はもっと上のステージでプレーしたい気持ちが首をもたげた。
周囲が言ってくれた、「やれるんじゃないか」の声が背中を押してくれた。
部の卒業生で、現在は三重ホンダヒートで活躍する中尾隼太(前東芝ブレイブルーパス東京)の存在も、自分に前向きな心を持たせてくれた。
同じ境遇から日本代表にまでなった人の歩んだ道は、勇気を与えてくれるものだった。
共通の知人を通して中尾先輩とつないでもらい、アドバイスをもらったこともある。「(自分も)チャレンジできるのかな」と描いていた淡い期待が、はっきりと目標になっていった。
レッドドルフィンズでのプレーが決まった後の先輩は、喜んでくれて、食事にも連れていってくれた。
人と違った階段を昇ってきた25歳はいま、目指していた舞台に実際に立ち、望んでいた環境でプレーできることに喜びと刺激を感じて過ごしている。
ルーキーとして過ごした昨季は、途中出場の1試合だけで、短いプレータイムに終わったけれど、パスやキックのスキルを高めたことで、自分でボールを持って走るオプションも持てるようになった。「(技術の向上により)そこに判断を割けるようになった」と表現する。
入団当初は、フィールドの上で周囲との技術や実力の差を痛感しただけでなく、ウエートトレでもパワーに違いを感じた。
そんな状況から這い上がれたのは、休日にもグラウンドに立ち、周囲の声に学んだからだ。
「篭島さん(優輝/前静岡ブルーレヴズ。2023年9月から日野RD)にパスやキックを教えてもらいました。苑田さん(右二/ヘッドコーチ)もハーフ出身なので気持ちの部分を伝えてくれるし、他の先輩たちもいろいろ言ってくれる。アンドレ(プレトリアスBKコーチ)もアドバイスしてくれるので、自分の形を作ることができました」
畑田の場合、ただ与えられるだけに終わらなかったから成長できた。大学時代、自分たちで練習メニューや試合での戦術を考えていた。
「そうやってきたことがあるので、すごい経歴のある方から教わったことに自分の考えも加えるようにしています」
苑田HCも畑田の成長を感じているひとり。「真面目で常に成長したいという向上心が感じられる」と評価する。
今季第2戦では、昨年はディビジョン1で戦っていた花園近鉄ライナーズと38-38と引き分けた。
開幕戦の清水建設江東ブルーシャークス戦には24-25と敗れており今季はまだ勝利を手にできていないけれど、チームの調子は上向きと言っていい。
ライナーズ戦、相手の9番、10番は、ウィル・ゲニア、クウェイド・クーパーと、それぞれオーストラリア代表キャップ110、76を持つレジェンド的存在だったが、臆することなく堂々と戦った。
「スクラムの横で並んだ時には筋肉質の体と大きさ(174センチ、82キロ。畑田は168センチ、69キロ)を感じましたし、サポートコースはさすが、と思いました。でも、一緒にプレーし、勝負できたことは自信にもなりました」と頼もしい。
社員選手として、練習を終えた後は会社へ向かう。仕事量が多い時には大変な時もあるけれど、職場の人たちのあたたかい応援が力になる。
「調子に乗らず、謙虚に、自分のプレーを出し続けたい。もっといろいろ教わって成長もしないと」の言葉に、いろんな人がサポートしてくれる理由が詰まっていた。