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開幕から3戦連続で背番号14を背負い、第3戦の浦安D-Rocks戦ではトライも挙げた。
横浜キヤノンイーグルスの石田吉平が背番号14を背負い続けている。
明大卒業後、2023年の春に横浜キヤノンイーグルスに加入も、セブンズ日本代表の活動に専念した。そのため、今季開幕戦となった東芝ブレイブルーパス東京戦がイーグルスでのデビュー戦となった。
1月11日におこなわれる静岡ブルーレヴズ戦にも14番で先発予定となっている。
開幕から2連敗だったイーグルスは、1月4日のD-Rocks戦に40-12と勝って今季初勝利を挙げた。
その試合の前半8分、石田は先制トライを挙げた。
相手反則で得たPKからSHファフ・デクラークがタップキック。速攻を仕掛けて前進した後、ボールは右へ動いた。オーバーラップ状態でFB小倉順平からのパスを受けたのが石田だった。
相手FBが懸命に守ろうとする中、自分の外にはFLビリー・ハーモンがいた。そのシチュエーションをパスダミーで走り抜け、右中間にボールを置いた。
この試合での石田の得点はそのトライだけだったものの、スコアシートには記されぬファインプレーもあった。
自分でトライを奪いはしなかったが、それに匹敵するプレーだ。
前半25分過ぎ、自陣でターンオーバーボールを手にしたD-RocksのCTBシェーン・ゲイツが防御を突破し、ピッチ中央を約50メートル走ったシーンがあった。
そのまま走り切られてもおかしくなかった局面で、反応良く戻ったのがイーグルスの背番号14だった。
ゲイツの足首に刺さり、倒すと、すぐに立ち上がり、ボールを奪い返す。その後ボールは、味方の手に渡り、最終的にはデクラークの50/22キックを呼び、敵陣でのマイボールラインアウトを得た。
そのシーンを振り返り本人は、「セブンズは7人しかいないので、ああいう抜かれた場面でも、最後まで諦めずにプレーする」と話し、積み重ねてきた経験が生きたことを伝えた。
パリ五輪で男子セブンズ日本代表の主将を務めた男は責任感も強い。
初勝利となったD-Rocks戦についても、「自分たちのミスでキツイ場面もありましたが、最終的にはボーナスポイントも取って勝つことができてよかった」と言うにとどまり、浮ついたところはない。
自分が挙げたトライについても、「みんながパスを回してくれたので取れたトライ。リーグワンで初めてのトライを取れて、はじめの一歩を刻めたのはよかったと思いますが、自分ができるのはひたむきにプレーし続けることだけ。チームのために何ができるかということを常に考えてプレーしています」と淡々としていた。
D-Rocksの試合に向けての準備の途中で、ミーティングがあった。その中で出たのが「戦士になれ」という言葉だった。
「チームのためにどけだけ体を張れるかを求められていたので、そういうプレーを遂行しようと思っていました」
トライを防いだタックルは、まさにそれ。そう言うと、「ああいうプレーを出せてよかった」と少し表情を崩した。
チームのために戦う姿勢を示す。「そこがラグビーの好きなところ」と言い、「一人で場面を変えられるようなプレーヤーを目指しています」と高みを見つめる。
仲間たちから信頼される存在を目指す。
WTBというポジションで言うなら、ボールを手にした時、必ずゲインできるならボールは、より自分に集まるだろう。
そんなプレーができる選手ということは、今季開幕からの短い期間でも実証できていると言っていい。トライこそ3戦目で初めてマークしたものの、ボールタッチのたびに前へ出る姿があった。
それは本人も感じている。
「自分のアグレッシブな点、強みを出したらゲインできることは3試合で分かりました。ただ、トライを取り切るところを、もっと追求していかないといけない。3試合中2試合に負けたことを考えれば、チームのためにできていないこともある、ということ」と話す。
初勝利が、本当に手にしたいものへのスタート地点だ。「ここから、ステップアップして優勝に近づいていきたい」と決意を口にする。
そのためにも、「(セブンズに取り組んでいる時より)体重は2、3キロ増やしましたが、あと2キロは重くして、接点で負けないように、もっとフィジカリティも強くしたい」。
167センチ、74キロという現在のプロフィールは、シーズン中に変化していきそう。
梶村祐介主将(CTB)は、石田について「年齢層が高めのイーグルスのバックスの中でフレッシュな勢いを生んでくれる存在」と実感を言葉にする。
この先、ファンを沸かせるシーンの増加に比例して、チームの上昇スピードも高まっていく予感もある。