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【PASSION! HANAZONO】仲間と再会できる場。いつか、母とも。田代未空レフリー
かつて一緒にプレーした仲間たちも大勢いるU18花園女子15人制でレフリーを任された。(撮影/松本かおり)

【PASSION! HANAZONO】仲間と再会できる場。いつか、母とも。田代未空レフリー

田村一博

 1月7日、花園ラグビー場で第104回全国高校ラグビー大会の決勝戦がおこなわれる。
 桐蔭学園(神奈川)と東海大大阪仰星で争う頂点。その戦いで大会の幕が閉じられる。

 2024年の12月27日に開幕した同大会。おこなわれた全50試合の激戦の前に実施されたのがU18花園女子15人制。同試合でレフリーを務めた田代未空(みく)さんは、自身で笛を吹いた後も大会に何度も足を運んだ。
 弟が東福岡高校ラグビー部に在籍していることもあり、同校の試合を中心に、4日間の観戦で多くの試合を見つめた。

 田代さんは福岡・筑紫女学園高校に学ぶ3年生。高2の時にC級レフリーの資格を取得した。
 弟のラグビースクールについていっていたのをきっかけに、かしいヤングラガーズに入った。福岡レディース、福岡県女子代表や九州女子ブロック合同の一員として、全国ジュニアやコベルコカップ、U18女子セブンズといった大会にプレーヤーとして出場した経験もある。

大会中は観戦のため4日間、花園ラグビー場を訪れた。先輩たちのパフォーマンスを見て、「皆さんのように、少しでもはやく、観客にも選手にもストレスが少ないレフリングを目指したいです」。(撮影/松本かおり)


 高校卒業後は看護の勉強をするため、令和健康科学大学へ進学する。
 プレーヤーとしての活動は高校までにしようと思っていたが、やっぱりラグビーが好きだ。選手以外でこのスポーツと関われるものを考えた時、レフリーが思い浮かんだ。

 母・智香子さんもレフリーとして活躍している。
「母や周囲のレフリーの方々から話を聞く機会もありました。皆さん、選手とは違う立場、見方でラグビーと関わることができる楽しさがある、と」
 長くラグビーと歩いていくと決めた。

 21-12で西軍が勝った、今回のU18花園女子15人制。開会式直後ということもあり、注目もされる。
 そんな中でキックオフの笛を吹くのだ。当然ナーバスになっていた。

 実際は、思っていたよりリラックスしてその時を迎えられた。インカムを装着したり、慌ただしく動いたことで緊張がほぐれた。お陰でいい感じに気が張って、プラスに作用したと思っている。
「観客席から見るグラウンドは、とても大きいように感じていたのですが、実際に立つと、楽しい雰囲気でした」
 心が躍った。

 セブンズの試合で笛を吹く機会が多かったが、この日のレフリーを務めることが決まってからは、試合やアタック&ディフェンスなどを通して、15人制への対応力を高めて準備を進めてきた。

 しかし実際のレフリングを振り返り、ミスもあったと反省する。また、福岡レディースや選抜チームでともにプレーした選手もいたことで、「厳しめに吹いてしまったかもしれません」。
 瞬時にプレーを見て、判断し、根拠を持ってジャッジすることを考えているが、それが簡単でないことは身をもって理解している。

 選手に負けないスピードは自分の長所のひとつ。「ショートに入るのが得意でした」と加速に自信を持つ。
 ボールキャリアーが防御を破り、抜け出した時にその速さが生きそうだ。

母・智香子さん(左)と。(撮影/松本かおり)


 自分の担当試合だけでなく、多くの試合をチェックする研究も怠らない。持ち前のスピードに実地経験と知識を重ね、レフリーとしての土台を確かなものに近づけている。
 目指すオリンピックやワールドカップは遠い。近道がないのは分かっているから、地道に歩を進める。

 レフリーを志す理由のひとつを、「一緒にプレーしていた選手たちとグラウンドで再会すること。一番近くでしてあげられることがあると思う」とする。
 選手たちがストレスなく、お互いに力を出し切れる試合を実現できたら最高だ。

 母は、子どもたちのラグビースクールへの送迎時に楕円球を持って走る機会に恵まれたことがきっかけでレフリーに誘われ、現在B級のライセンスを持っている。
 立命館大4年時に空手でユニバーシアード3位(60キロ以下級/組手)となったこともあるアスリートが39歳でレフリーを始め、いまも成長し続けている事実は、娘にとっても励みになる。

「一緒に(レフリーとアシスタントレフリーなど)マッチオフィシャルをやれたらいいですね」と、親娘は揃って言う。
 自分たちのパフォーマンスチェックをひとつの試合で同時にできる日は、もうすぐだろうか。



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