今度こそファンへ勝利を届けることができるだろうか。
今季からリーグワンに新規参入したルリーロ福岡が、2024年12月22日の開幕戦以来2戦目となる中国電力レッドレグリオンズ戦を1月5日に戦う。
歴史の一歩目となったヤクルトレビンズ戸田戦には敗れ(17-25)、久留米総合スポーツセンター陸上競技場に集まった2418人のファンの前で勝つことはできなかった。
しかし、いろんなバックグラウンドを持った選手が新たな夢を胸に抱いて集い、誕生してまもないチームが未来へ進むエナジーとなっている姿は人々の心に響いた。
その中にいた一人が屋宜ベンジャミンレイだ。
リーグワン元年の2022年シーズンを最後に活動休止となった宗像サニックスブルースのラストシーズン、主将を務めた。この3月には37歳になる。
レビンズ戦には先発で後半31分までプレー。ボールタッチも多く、高いランニングスキルでゲインしてスタジアムを沸かせた。
今回のレッドレグリオンズ戦では22番でベンチスタート。勝負どころで出番が回ってくる。
ブルースでプロ選手として活躍していた屋宜は、同チームが休部となった後、ルリーロにプレーの場を移した。
1年目はチームスタッフとして働きながらプレーするなど、それまでとは違う環境に身を置いた。
芝の立派なグラウンド、そしてクラブハウスと、恵まれていたプロ選手としてのブルース時代の生活。
いまは浮羽究真館高校の校庭、土のグラウンドで主に練習している。環境は大きく変わった。
しかし屋宜にとっては、その変化がプラスになった。
「プロ時代もそうでしたが、1年1年が勝負、というのは変わりません。でも、それは不安ではなく、もっと大事にしていこうというモチベーションになっています」
現在、仕事もしながらプレーしている。それも自分にエナジーを与えてくれている。
障がいを持つ子どもたちと過ごす施設、放課後等デイサービス『All Peace』(オールピース)の宗像オフィスで広報兼スポーツ指導員として働く。
「練習に向かう時、子どもたちが『ベン先生がんばってね。試合、見に行くね』って言ってくれます。きょうは、会社の人たちが応援に来てくれた。そういう、これまでと違ったところにモチベーションを感じている自分がいます」
チームは今季が初参入も、自身にとっては2022年シーズン以来、3季ぶりのリーグワンだ。
シーズンを迎えるにあたり、昔から応援してくれているファンから「お帰りなさい」と連絡が入った。
トップリーグ時代を含め、長く国内最高峰のステージでプレーしてきた経験がある。
それだけにディビジョン3とはいっても、勝利を手にすることが簡単でないことはよく知っている。初戦の戦いを振り返り、「いいプレーもたくさんありました。しかし、やはり大事なところでミスや反則をしてしまっている」と冷静に自己分析をした。
「ディフェンスの時、前に出られて反則をしてしまう。後手を踏んだらそうなります。自分たちから出て守らないと。アタックは、取り急ぐところがありました。もちろん簡単にトライを取れたらいいですが、ラグビーは少しずつ前に出て、ここという時に攻め切ることが大事。我慢して、判断しないといけない」
参入が決まった時から、そんなことを伝えてきた。しかし、実際の試合で体感しないとわからないことがある。
「いい選手がたくさんいます。そういうことを学んでいけば、勝てるようになると思います」
多くの経験をしてきた者として、若い選手たちに前向きになれる要素を与えられたらいいと思う。
「人前で、全員に話すというより、気になったことがあれば個人的に話しています。聞いてきてくれた選手にもアドバイスします。自分のプレーや背中が、誰かのモチベーションに繋がったらいい」
自然体でリーダーシップを発揮する。
ひとつのチームが活動を終える中にいた。寂しくてたまらなかったけど、いま、誕生してまもないチームとともに歩んでいる。
「それだけで幸せなのに、開幕戦で先発メンバーにも選んでもらえて嬉しいですね」
頑張って当たり前、と笑う。
絶望と希望と未来を見て、「なかなかない、おもしろい人生だと思います」と言った。
「意外と真面目なところもあるので、いろいろ考えて不安になったこともありますが、結果的に、人生なんとかなるのかな、と楽しく生きています。おもしろいことに足を突っ込んだら、2年でこうなった」
「これからもなにがあるか分かりませんね」と笑顔のベン先生は、「まずはラグビーをいつまでやれるか、チャレンジします」と、走り続ける意志を明るく口にした。