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トップ14(フランス)、お金の話。
LNR(フランスプロリーグの運営団体)は増収も、トップ14の各クラブの経営状態は苦しいまま。

トップ14(フランス)、お金の話。

福本美由紀

 12月18日に開かれたLNR(フランスプロリーグの運営団体)の総会で、2023-2024シーズンの決算が承認された。売上高が前年から1000万ユーロ(約16億2000万円)増の1億7700万ユーロ(約286億7400万円)だった。

 LNRが運営する決勝ステージの試合がすべてチケット完売だったことや、大型のスポンサーを新たに獲得したことも増収につながった。トップ14、プロD2のフランス国内での独占放映権を持つCanal+と新たに締結された4年間(2023-2027)の契約で、それまでの年間9700万ユーロ(約157億1400万円)から17%増の年間1億1360万ユーロ(約186億320万円)に増額されたことが大きな要因だと考えられている。

 これにより、当初予算に対して540万ユーロ(約8億7480万円)がクラブへ追加支給される。すでに200万ユーロ(約3億2400万円)が振り込まれており、残りの340万ユーロ(約5億5080万円)は、2025年初頭に各クラブに振り込まれる。従来通り、トップ14のクラブに70%、プロD2のクラブに30%の割合で配分される。

 クラブにとっては嬉しいボーナスだ。
 しかしLNRの好調な財務状況とは逆に、クラブの財務状況は厳しい。プロ選手権統制委員会の2024年の報告書によると、2022-2023シーズンのトップ14の14クラブの累積営業赤字はほぼ6000万ユーロ(約97億2000万円)に達している。

 黒字を出しているのは3つか4つのクラブだけで、「毎年数百万ユーロ出資している」とモンペリエのモヘド・アルトラッド会長が言うように、ほとんどのクラブがメセナ的なオーナー、もしくは会長が損失を補填して収支のバランスをとっているのが現状だ。

 この状況に危機感を持った一部のクラブの会長たちが、サラリーキャップの減額を提唱した。当初は、2020年の1130万ユーロ(約18億3060万円)から、段階的に2026年までに1000万ユーロ(16億2000万円)に下げられる予定だったが、多くのクラブ、特に財力のあるクラブの会長からの強い要望で2027年までは1070万ユーロ(約17億3340万円)が維持されることになっている。

 選手への報酬がクラブの支出の60%に達するクラブもある。コスト削減が求められる状況でサラリーキャップの見直しを求めるのは当然の流れだろう。

 しかし、選手との契約もすでに交わされており、当面は現状維持とし、2027年以後の改訂については今後あらためて議論される。

 今回、サラリーキャップの減額より論点となったのは、フランス代表に招集された選手のクラブでの不在を埋めるためのシステムだ。毎年、年末にフランス協会が『プレミアム選手』のリストをクラブとLNRに発表する。その年の招集回数が多い、つまりクラブを留守にした期間が長い選手から45名がリストに入り、クラブはリストに入った選手1人につき18万ユーロ(約2916万円)、サラリーキャップの上限を超えることが認められる。

 これがクラブ間の不均衡を生み出している。この5年間、代表チームはトゥールーズの選手が多く占めている。この年末に発表されたリストでも、45人のうち11人がトゥールーズの選手で、次いでボルドー、ラ・ロシェル、ラシン92が6人、トゥーロンが4人、リヨンが3人、クレルモン、ポー、スタッド・フランセが2人、カストル、モンペリエ、ペルピニャンが1人。昇格してきたヴァンヌは0である。

「サラリーキャップの追加枠を調整し、どのようにクラブ間の差を縮めるかについては議論の余地がある」とカストルのピエール=イヴ・ルヴォル会長は自身の見解を示している。

「追加枠を与えるよりも、サラリーキャップは固定のままで、代表選手の不在を埋めるために、その選手の給料を上回らない選手を追加でリクルートすることを許可するのはどうだろうか? サラリーキャップの格差が広がると、試合の成績にも影響を及ぼし、強いチームだけがどんどん強くなり、経済的な格差も拡大する」とあるクラブの経営者は『レキップ』紙に漏らしながらも、「フランス代表チームに貢献しているクラブへの補償を否定するつもりは決してない」と付け加えた。

 ここで標的になっているのはトゥールーズだ。トップ14でもチャンピオンズカップでもタイトルを獲得し、多くの代表選手を輩出した。圧倒的な強さを示しているが、それは早くから若手の育成に力を入れ、今では黄金世代と呼ばれる選手たちを育ててきたクラブの取り組みが身を結んだ結果である。他のクラブのコーチからも、「我々の模範であり、リーグのレベルを引き上げてくれる」と評価されているが、格差ができているのも確か。今後、解決案が探られる。

高給と見られるラ・ロシェルのLOウィル・スケルトン(オーストラリア代表キャップ32)。203センチ、135キロ。(Getty Images)


 今回のサラリーキャップに関する議論が高まる中で、ネクシアS&A監査法人の調査により確認されたデータを『ミディ・オランピック』紙が入手し、一部掲載した。

 その記事で、2023年のトップ14の選手520人の平均年俸額は25万9000ユーロ(約4195万8000円)で、プロD2の5倍、またイングランドのプレミアシップや日本のリーグワンより33%高いと報じられている。

 27%の選手が年俸6万ユーロ(約972万円)以下で、レスポワール(アカデミー)の選手と見られる。トップ14では1チーム平均で55人の選手が登録されており、そのうち18人(32%)がレスポワール契約の選手になる。

 33人の選手が年俸48万ユーロ(約7776万円)を超えており、そのほとんどがフランス代表選手だ。さらに10人ほどの選手が60万ユーロ(約9720万円)を超えており、『ミディ・オランピック』は、移籍市場で評価が高いとされているSOオーウェン・ファレル、SHアントワンヌ・デュポン、NO8グレゴリー・アルドリット、LOウィル・スケルトン、SOマチュー・ジャリベールの名を挙げている。

 ポジション別では、左プロップ、フッカー、フランカー、ウィングが他のポジションに比べて低くなっているが、「良い選手が豊作のポジションだから」とあるエージェントが説明している。10年前は最高額だった右プロップがもはや上位に入っていない。逆に、フランスでは体格的に希少価値の右ロックが最も高い。

【トップ14 ポジション別平均年俸】
・左プロップ:19万〜20万ユーロ(約3078万〜3240万円)
・フッカー:19万〜20万ユーロ(約3078万〜3240万円)
・右プロップ:23万〜24万ユーロ(約3726万〜3888万円)
・左ロック:25万〜26万ユーロ(約4050万〜4212万円)
・右ロック:27万〜28万ユーロ(約4374万〜4536万円)
・フランカー:21万〜22万ユーロ(約3402万〜3564万円)
・NO.8:26万〜27万ユーロ(約4212万〜4374万円)
・スクラムハーフ:22万〜23万ユーロ(約3564万〜3726万円)
・スタンドオフ:25万〜26万ユーロ(約4050万〜4212万円)
・ウィング:19万〜20万ユーロ(約3078万円〜3240万円)
・センター:25万〜26万ユーロ(約4050万〜4212万円)
・フルバック:22万〜23万ユーロ(約3564万〜3726万円)


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