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三刀流の充実、やり切った。川畑俊介[立教大4年/主務]
明治学院大との入替戦には後半13分から出場。チームは来季も関東大学対抗戦Aで戦う。(撮影/松本かおり)

三刀流の充実、やり切った。川畑俊介[立教大4年/主務]

田村一博

 どれかひとつでも大変なのに、3つのことをやり切った。
 立教大学(関東大学対抗戦A-7位)の4年生、川畑俊介は主務でスクラムハーフ、そしてレフリーとしての活動を続けてきた。

 12月14日に熊谷ラグビー場でおこなわれた関東大学対抗戦の入替戦、明治学院大(関東大学対抗戦B-2位)との一戦にも後半13分から出場。88-21の勝利に貢献した。
 この日の試合に向けても、試合までの準備の中で主務の仕事をこなして当日を迎えた。

「(関東ラグビー)協会への連絡などはいつものことですが、今回は当番校ということもあり、レフリーへの連絡もありました。チームの当日の動きなど、タイムスケジュールを組むのも仕事です」

 流経大柏出身。同校では日本代表、東芝ブレイブルーパス東京で活躍するワーナー・ディアンズと同期。花園でもプレーしている。
 今季は入替戦も含め全8試合に出場。同じSHの伊藤光希主将の存在もあり、先発は1試合だけも、試合を締めくくるフィニッシャーとしてピッチの上でもチームに貢献した。

 1学年上の主将(北川時来)もSHで、昨季までなかなか出場機会に恵まれず心が折れそうになった時もあった。
「そんなときに声をかけてくれて、一緒にパスの練習をしたのが伊藤光希でした。僕にとっては、本当に大きな存在でした」

 最上級生となって、ふたりはキャプテンと主務として支え合い、チームを前に進ませた。
 日頃の練習、アタック&ディフェンスの際には、伊藤がAチームに入っている時にはレフリーを務め、そのあと、自分がSHに入ることもあった。そして、全体練習が終わった後に主務としての仕事に取り組む。

 大学3年時に先輩から副務に指名されたことをきっかけに、4年時は自ら手を挙げて主務を引き受けた。
「立教では、主務とプレーヤーをやる先輩たちもいたので違和感はなかったし、裏方の仕事を経験することもとても大切、いい経験になると思いました」

170センチ、80キロ。流経大柏の出身で、観光学部に学んだ。(撮影/松本かおり)


 なんでも面白がり、チャレンジする。レフリーを志したのも、信頼しているラグビースクール時代のコーチ(千葉市ラグビースクールの飯島正憲コーチ)の影響を受け、やってみたい、やってみようと思い、やり甲斐を見つけた。

 大学に入ってB級レフリーの資格を得て、立教大の活動がないときは、春や夏には外に出て笛を吹いた。
 この秋も、関東大学リーグ戦1部の東洋大×日大でアシスタントレフリーを務めた。
 プレーヤーファーストのマインドを持ってレフリー活動にも取り組む。大学卒業後はトップイーストリーグの上位チームに加わり、トップレフリーを目指す。

 大学4年間を振り返り、「大変なことも多かったのですが、自分なりに目標をしっかり定めて 4 年間を過ごせたと思います」と話す。
「ただ、大学選手権出場というチームが持っていた目標には届きませんでした。それは来年、しっかり達成してほしいですね」

 入替戦が大学ラストゲームとなるのは本意ではなかったけれど、全国大会出場という大きな目標を逃したあとも気持ちを切ることのなかった仲間たちのことを誇りに思う。

「大きな目標を逃しても、後輩たちが来年も対抗戦のAグループで戦うための大事な試合と高い意識を持ち、チームとして取り組めた結果がきょうの勝利だと思います」
 この日でラグビーから離れる4年生も少なくない。そのためにも全員で、最高の形で送り出そうと結束したことも嬉しかった。

 プレーヤー、主務、レフリーと、長い歴史(1923年創部)を持つチームの中でも初めての三刀流をやり切った21歳の4年間は濃密だった。
「一つひとつのことに目的意識を持って取り組み、チャレンジしたからやれた」と言い、チーム(所属先)ファーストのスピリットと周囲との役割分担で高い壁も乗り越えられた。その経験は「これからの人生で生きると思っています」。

「ただ、すべては自分だけの力ではなく、周囲のサポートがあったからこそやれたこと」
 感謝の気持ちは、達成感と同じくらい大きい。

 トップレフリーを目指す。進化のスピードは高まるだろう。
「ワーナーと、レフリーとしてリーグワンの試合で会えたらいちばんハッピーですね」
 立てた計画の実行力には自信がある。

一生の仲間を得た4年間だった。(撮影/松本かおり)


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