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ラグビー日本代表は、2024年のテストマッチ(代表戦)を4勝7敗と負け越した。
特に秋のキャンペーンではニュージーランド代表、フランス代表、イングランド代表といった強豪国にそれぞれ19-64、12-52、14-59で屈した。
このタフなレッスンを「励まし合って、自分たちで積み重ねていったような期間」と振り返ったのが竹内柊平。約9年ぶりに代表指揮官へ復帰したエディー・ジョーンズヘッドコーチのもとで多くの出番を得て、昨年まで通算「3」だったキャップ数(テストマッチ出場数)を「13」に伸ばした。
12月9日には、所属する浦安D-Rocksの一員として国内リーグワンのプレスカンファレンスに出席した。代表の話をしたのはその時だ。
身長183センチ、体重115キロの27歳。無名の九州共立大出身でおもにロック、ナンバーエイトとしてプレーしながら、2019年に当時あったトップリーグのトライアウトでいまのポジションの右プロップへ挑んだ。
ここでフィールドプレーでのインパクトと勤勉さが買われ、D-Rocksの前身であるNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安(最終年度の名称)に入部。いまに至る。
——長旅、お疲れ様です。
「ありがとうございます!」
——帰国後はどう過ごされましたか。
「最初の1週間くらいは(故郷の)宮崎に帰って心身ともにリフレッシュして、チームに合流しました。(日本代表のキャンプ地でもあるため)地元なんですけど、約半年間、頑張ってきたところなので、感慨深かったです」
——あらためて、秋のキャンペーンを振り返ってください。
「本当に難しい期間だったと思っています。自分たちは勝つために準備をしてきて、きついこと、苦しいこともたくさんやってきたのですが、それが結果として出ずに、選手たちもどうしていいかわからないような状態が続いていた。けど、選手たちのコネクションが取れたと思っていて、励まし合って、自分たちで積み重ねていったような期間でした」
——一般論として、大敗が続くと自分たちのやっていることを信じられなくなる向きがあります。
「うーん…めちゃくちゃ難しいところだと思っていて。けど、(スコッドの総)キャップ数はがらりと違っていて、相手のそれが何倍ということも。エディーさんも言っていましたが、やはり魔法というものはないと思っていて。積み重ねが必要。代表に行って、あらためて準備の大切さ、経験の大切さがわかりました」
——「経験」。例えば。
「僕が学びになった試合は最後のイングランド代表戦だと思っていて。正直、イングランド代表戦では、スクラムで自分が100パーセントを出せないような試合でした。対面のエリス・ゲンジは世界有数のルースヘッド。少しイリーガルなことをされても自分の100パーセントを出せるかどうか(という状況)では、経験が出る。このインターナショナルの経験は個人としても大事ですし、D-Rocksでも還元できるものがたくさんあるなと」
——日本代表が目指す近い間合いでのヒットができなかったのでしょうか。
「間合いも詰めさせてもらえないですし、その遠い間合いでちょっと(前に圧を)かけに行ったらわざと引かれて、レフリーの(合図より早く組んだとして)フリーキックになったり、逆に、相手が来るのを待っていたら、後ろの体重を使って思いっきり(プッシュを)かけてきたり…。
いままで組んだことのないような相手で、すごくやりづらかったです。それでもテストマッチは勝たないといけなかった。結果が出なかったのは、凄く不甲斐ないです」
——向こうには、大舞台で駆け引きをするだけの余裕があったのですね。
「自分たちもそれまでの試合ではスクラムでモメンタムを作っていたシーンが結構あって、この日もスクラムをしっかりしないといけないと思っていたんですけが、こう…うまくいかなくて…逆に、焦ることもあって…。やっぱり、向こうのほうが上手だったなと」
——試合後のロッカールームでは、どんなことを考えていましたか。
「めちゃくちゃ悔しかったですね。もう、点差も点差ですし。満員のスタジアムへ勝つ準備をしてきて、でも、セットプレーで自分たちのモーメントを出せなくて…。本当に悔しい思いをしました」
——帰り際、エディー・ジョーンズヘッドコーチに言われたことはありますか。
「『凄く大きな学びになったね。TKはまだ若い選手だから、学びが今後に活きるよ』ということを話してくださいました」
その「経験」を活かす場は、近くにある。
リーグワンの新シーズンは12月21日に開幕する。今季1部初昇格のD-Rocksは、翌22日、神奈川・相模原ギオンスタジアムで前年度9位の三菱重工相模原ダイナボアーズと初陣を迎える。
竹内はこうだ。
「D-Rocksも2部から1部に上がったばかりの経験のないチーム。経験がないなかでの戦い方は、代表シリーズで嫌というほど学びになった。それを、出せればな、と思います」