アーリーエントリーで三重ホンダヒートに加わったのが2024年2月1日。3月1日の横浜キヤノンイーグルス戦に途中出場してリーグワンデビューを果たすと、そこから入替戦も含む7戦に先発し、すぐにチームを走らせるテンポの発信源となった。
スピード感満点のプレーが光る北條拓郎(SH)は、初めて過ごす開幕へ向けてのプレシーズンをバックスリーダーとして過ごしている。
チームが作ったメインビジュアルに起用される選手の一人にも選ばれた。そんな面からも、期待の大きさが伝わる。
北條のような昨季途中のアーリーエントリー選手も含めると20人が新しく加わり、21人が外へ出た今季のヒート。チームの陣容は大きく変わったものの、リーダーの一人として、「プレシーズンにゲームを重ね、まとまりも出てきたように感じています」と手応えを言葉にする。
「キアラン(クローリー ヘッドコーチ)のやりたいラグビーもできてきています」と話す若きSHは、自分についても「プレシーズンの試合にはあまり出ていませんが、開幕に向けていい準備ができています」とする。
順調に前へ進んでいる様子が伝わる。
天理大からヒートに加わってまだ1年も経っていないのにバックスリーダーに指名された。力が入る。
しかし、「それをプレッシャーに感じると硬くなってしまうので、自分本来のノビノビした、迷いのないプレーをしたい」と話す。
そのためにも「楽しみながらプレーします」。
ともにバックスリーダーを務めるのはレメキ ロマノ ラヴァ(ユーティリティーBK)。
「マノさんはオープンで明るい性格なので、チームを盛り上げてくれる。僕は、ゲーム中に(周囲を)コントロールしたり、声をかけるのが役割かな、と思っています」と役割を自覚する。
若さも活かす。
「(実質)1 年目なので、若手選手や同期の意見も採り入れながら、チームに新しい風を入れたり、いい影響を与えられたら」。
また、「リーダーシップを発揮するのは簡単ではない」と肝に銘じ、パブロ・マテーラ(NO8/アルゼンチン代表)など世界の舞台で主将経験がある人たちから「学びたい」と意欲を示す。
プレーオフに進出できる上位6チームに入ることが、今季のヒートが掲げる目標だ。
しかし、いくら大型補強をしたとはいえ、昨季11位のチームがそこに到達するのは簡単ではないと分かっている。
高く設定したターゲットを射るには、「勝ち負けもそうだけど、チームビルディングをちゃんとやっていかないといけない。そこも、経験ある人たちがたくさんいるので、頼りながら、一緒にやっていきたいと思っています」。
集まった才を束ねなければ大きな力にはならない。
10月中旬からの約2週間、チームがパートナーシップ契約を結ぶ英・プレミアシップのハーレクインズで過ごした。SO中尾隼太と共に渡英し、トレーニングやミーティングに参加。ラグビーに対する考え方に刺激を受けたという。
自分の課題でもあるキックのスキルについて、キッキングコーチから指導を受ける機会もあった。
「昨シーズンはチャージされたり、ダイレクト(タッチ)もありました。スキルを学び、自分の感覚をつかみかけているので、練習を続けています」と話す。
新加入で、コンビを組むことも多くなると思われる中尾と、いろんなことを話す時間を持てたのも良かった。
「日本代表にもなった人です。どんなことを考えているのか、いろいろ教えてもらいました」
その中尾に加え、チームにはサラセンズからマヌ・ヴニポラも加わった。
「スキルフルなスタンドオフが加わったので、これまで以上に速い展開、力強いラグビーができると思っています」と、頭に新しいスタイルのラグビーが浮かぶ。
新シーズンは12月21日(土)、鈴鹿でのリコーブラックラムズ東京戦で始まる。
トップ6に入るにはホームでの8戦すべてに勝つことが必要と考えているから、開幕戦にはマストウインで臨む。
相手の9番を背負うのはオールブラックスとして89キャップを持つTJ・ペレナラ。対峙するワールドクラスの相手を「フィジカル、スピード、キックとすべてうまく、相手にしたくないタイプ」と見る。
だからこそ、「やりたいプレーをさせないことが大事」と言う。
「絶対に負けられない」と強く思う開幕戦に向け、「しっかりコンディションを整えていきます」と言う23歳は、チームを引き上げる働きを誓う一方で、自分自身がより上のステージへステップアップするためのシーズンとも考えている。
今季の日本代表には、多くの天理大出身者がいた。「刺激をもらっています」と言う。「日本代表になりたい。そのための今シーズンとも思っています。チームが勝つことが代表(選出)にもつながってくると思います」と明言する。
「(自信のある)フィジカルの強さやディフェンスをさらに磨いて勝負していきたい」
同じポジションの藤原忍(キャップ10)は大学1年時の4年生で、「すごくお世話になったし、いまも連絡してくれます」という存在。CTBシオサイア・フィフィタ(キャップ16)は「1年生の時の部屋長でした」と話す。
リーダーの一人としてチームの先頭に立ち、力を束ねる。シーズンを通して9番のジャージーを着続ける。
そんな充実した日々を過ごすなら、目指すベスト6や、憧れるステージとの距離は確実に縮まる。