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【ラグビー日本代表と征く欧州2024/DIARY⑫】敵地の大声援に打ち勝つ。「それがラグビーの最高の瞬間」
熱い気持ちを吐露するベン・ガンター。ピッチに立ったらインパクトを与える。(撮影/松本かおり)
2024.11.24
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【ラグビー日本代表と征く欧州2024/DIARY⑫】敵地の大声援に打ち勝つ。「それがラグビーの最高の瞬間」

田村一博

 曇天に小雨。11月23日には冬のロンドンらしい天気も、寒さは少しやわらいだ。ただ、風が強い。

 テディントンの宿からバス停まで約200メートル。そこから281番の路線で、『トゥイッケナム スタジアム』へ(アリアンツスタジアムになってもバス停名は変わらず)。約20分の乗車時間だった。
 メトロなどの近距離電車と同じように、クレジットカードのタッチ決済を使えるのが便利だ。

 試合前日のキャプテンズランは、イングランド、日本の順でおこなわれた。
 イングランドは午前10時30分に練習スタート。報道陣への公開は冒頭の15分に限られたが、ウェアやテーピングの様子を見ると、おそらく軽めに体を動かしただけのはずだ。

キャプテンズラン時のイングランド。軽めのトレーニング。(撮影/松本かおり)


 日本は13時30分過ぎから練習開始。ウォームアップ後、アタック時のボールの動かし方などを確認した。
 前日は体調を崩し、オンライン会見への出席も回避したエディー・ジョーンズ ヘッドコーチの姿もあった。

 トレーニングを終えて、ベン・ガンターが取材に応じた。
 今回は背番号21でベンチスタート。試合に出場すれば、2023年8月のイタリア戦(トレヴィーゾ)以来のテストマッチとなる。

「緊張しています。ただ、いい緊張です。それは、自分のこの試合にかける思いの強さからくるもの。日本代表のジャージーを着ることは、自分にとってすごく大事なもの」と話した。

 リーグワンのファイナルで肘を痛めた。左右の肘を何度も痛め、治す経験を繰り返してきたのは、ジャッカルする際、相手のプレッシャーを受けるからだ。
 ボールハンターの宿命と言っていい。

 しかし、いまは万全。ツアー途中の招集も、所属する埼玉パナソニックワイルドナイツがレッズ(スーパーラグビー)との試合をおこなうなどトレーニングを重ねていたから戦う準備はできていた。
 代表合流後、コーチ、スタッフからのサポートを受けて「ジャパンのプレースタイルは自分のものにできている」と断言する。
「それを披露できるチャンスをもらえて嬉しいです」

体調不良から回復のエディー・ジョーンズ ヘッドコーチ。(撮影/松本かおり)


 現チームの印象を、「日本代表としてのマインド、DNAは(前体制と)変わらないと思います。ただ、(それに対する)視点、マインドセットが、選手、コーチが変わったことで、フレッシュな視野によってチームが進んでいると思う。ワールドカップ、将来に向けて作り上げている(途中にある)チームです」と話した。

 FWに強みを持つイングランドに対し、タフな気持ちを持って対峙する。
「相手のFWが強いとか下馬評は一切関係ない。相手も一人の人間。自分はそれに対して、より強いフィジカルを出す。ただ速いだけ(のラグビー)ではなく、フィジカルの強さを持っているところを、まず自分から見せます」

 日本のラグビーの中に入って9年目。テンポの早さに体は慣れ、アダプトできている自信がある。
 その中でも、フィジカリティーの強さを出していけるのが自身の特長と理解している。

 27歳のハードワーカーは、若い仲間たちの成長も体感する。「タフな試合はチームの成長に欠かせない」と言う。
 ウルグアイ戦の勝利はチームにモメンタムを与えた。
「若いチーム。ウルグアイのようなフィジカルの強い相手に対し、イエローカードもレッドカードも出た中で勝てたのは大きい。体のタフさだけでなく、マインド的な成長につながったはずです」

 敵地でのイングランド戦は、8万大観衆の声援が、逆風のように襲ってくるだろう。しかしガンターは、そういう逆境に打ち勝つためにラグビーをやっていると語気を強めた。
「そのためにラグビーをやっている。それがラグビーの最高の瞬間。明日の試合前のロッカールーム、試合に出る23人だけでなく全員が、同じ気持ちになっている」

スクラムを押す気満々のPR竹内柊平。(撮影/松本かおり)


 オンライン取材に出席したPR竹内柊平は、「スクラムで相手をドミネートするのが自分たちの目標」とし、「低く、(相手に)近い、ジャパンのスクラムを組む」と宣言した。

「相手のFWは強く、1番のエリス・ゲンジなど有名な選手もいますが、リスペクトするのではなく(するだけでなく)、準備してきたことでスマッシュしたいと思います」
 今季初戦でイングランドと戦った時はペナルティが多かったが、その数は試合を重ねるごとに減っている。5か月ぶりの同じ相手との試合、スクラムで、自分たちの進化を示すつもりだ。

勝敗の鍵となるキックの攻防に挑む長田智希。(撮影/松本かおり)


 14番で先発する長田智希は、相手が多用してくると予想されるハイボールへの対策について、「取る人、サポートする人、こぼれ球に対応する人と、それぞれの役割が明確になり、準備してきました」と話した。

 10番の位置に初めてその背番号を背負うニコラス・マクカランが入ることに関しては、「他にもこれまでとコンビネーションが違うところもありますが、グラウンドの内外で、ディテールの部分をより密に確認してきました。ニックはもともと12番で相手と近いところでプレーするのは得意で、自分で持っていくプレーもできる」とした。

 誰もが、それぞれの思いを胸に挑む今季最終戦は、小雨、強い風という気象条件が予想されている。

メディアのワーキングルームに用意されたサンドイッチ。うまい、うまい。


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