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【ラグビー日本代表と征く欧州2024/DIARY⑧】美しく、ラグビーの根付いた場所で試合をさせてくれて、ありがとう。
満員となったシャンベリー・サヴォワ・スタジアム。最高の雰囲気。(撮影/松本かおり)
2024.11.18
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【ラグビー日本代表と征く欧州2024/DIARY⑧】美しく、ラグビーの根付いた場所で試合をさせてくれて、ありがとう。

田村一博

 前日は暖かな陽気だったのに。
 日本×ウルグアイのテストマッチ当日(11月16日)の朝はどんより曇っていて寒かった。
 試合前、ホテル近くの店で「70%オフ」のマフラーを購入してスタジアムへ向かった。

 シャンベリー・サヴォワ・スタジアムは、シャンベリーの街の中心から徒歩で約20分と便利。地元クラブ、『SOC RUGBY』の本拠地だ。
 収容人員は明確ではないが、クラブのHPによると、立席や室内のVIP席なども合わせて、約8000。2023年に完成した人工芝のグラウンドだ。

西日が強かった。遠くの山々が幻想的


 曇り空はやがて晴れ渡り、この日もポカポカ陽気となった。
 14時30分のキックオフ時には、すでに太陽はかなり西に傾いており、メインスタンド側は強い西日を受ける。
 こちらはフットボールスタジアムも、西日に関しては『スピアーズえどりくフィールド』と似た感じだ。

 人口5万5000人の地方都市だ。
試合前は観客数が心配だったが、キックオフ時にはゴール裏の立席も含めて満員の入り。街を囲む壮大な山々も綺麗に見えて、これまで見てきた日本代表のテストマッチの中でもトップクラスの眺望と雰囲気だった。
 エディー・ジョーンズ ヘッドコーチも試合後の会見で、「ワールドラグビーの皆さんには、シャンべリーという素晴らしい地で試合を開催していただき感謝します。とてもロケーションが良く、また、ラグビー(への愛情やホスピタリティ)に富んだ地で試合ができてうれしく思います」と言った。

夕日に染まる山。落ち着いた街、シャンベリー


 選手たちもシャンベリーの印象は良かったようだ。滞在したホテルにはサウナやプールもあり、「素晴らしい環境」との感想を口にした。
 美しい湖を訪れ、こぢんまりとした街に出る時間もあった。一生に一度の地となる可能性も高い場所の記憶は、とても良さそう。

 途中招集により、この地でチームに合流した伊藤耕太郎(リコーブラックラムズ東京)はジュネーブ経由で現地入りしたらしい。スイスも近く、空気も澄んでいる街だった。

シャンベリーの街の象徴でもある「象の噴水」。東インド会社出身で、インドからフランスに戻り、この地のために私財を投じたボアーニュ氏を称えたもので、街のあちこちに象をあしらったものがある


 ダブルヘッダーでおこなわれた日本×ウルグアイ、トンガ×アメリカは、オータム・ネーションズシリーズ(ANS)に含まれていない。

 ANSはシックスネーションズラグビーリミテッドの管轄でおこなわれているが、シャンベリーでの2試合については、同地での『RUGBY DAY』の位置付けで、パリに本拠地を置くアップ&アンダー社がワールドラグビーからプロモーター兼オーガナイザーに任命されての開催となったからだ。
 当日の仕切りも同社で、記者席などには社名入りのバナーが置かれていた。

 スタジアムには、子どもたちが遊べるスペースも用意され、ビールを売るスタンドには多くの人が並んでいた。

魅力的なマルシェの一角。たまらん


 運営のマイナス点は記者席がなかったこと(それらしきものは、両チームのスタッフ用などに使われていた)。また試合後の記者会見がおこなわれた部屋には、ひっきりなしに場内アナウンスが響きわたっていた。
 通常の音響システムの故障で非常用のシステムが使われていたため、会見場だけ音声を切ることなどができなかったようだ。
 話を遮るような放送に、会見に出たヘッドコーチや選手も苦笑いだった。

 日本×ウルグアイの取材を終えたあとは、午後9時キックオフのフランス×ニュージーランドの中継を見るため、日本からの数人の取材者らとスポーツバーへ。店内にはラグビーファンが溢れていた。
 仕方なく、DJがいるフロアへ。そこでも映像は見られるもののラグビー音声はなく、DJ選曲のミュージックが流れる中での試合観戦となった。

グリーンロケッツのエンブレムにしか見えない教会


 日本代表の選手たちはウルグアイ戦の翌日(11月17日)、イングランド戦がおこなわれるロンドンへ向かった。
 日曜移動は電車代が高額だったため、こちらは、この日もシャンベリーに滞在。オンライン取材や原稿書き、近所の散歩で一日を過ごした。

 日曜はほとんどのお店が閉まっており、普段以上に人通りも少ない。仕方なく教会や、併設の博物館のようなところで時間をつぶした。
 穏やかな一日。『SOC RUGBY』の試合があれば観戦に行ったのになあ。

近所の博物館で撮影。中世の顔とはかけ離れているようで、まったく馴染んでいない


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