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【ラグビー日本代表と征く欧州2024/DIARY①】フランス戦メンバー発表。笑顔のフィフィタ。下川は「大袈裟なイメージで」
笑顔のシオサイア・フィフィタ。息子の前で暴れる。(撮影/松本かおり)
2024.11.08
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【ラグビー日本代表と征く欧州2024/DIARY①】フランス戦メンバー発表。笑顔のフィフィタ。下川は「大袈裟なイメージで」

田村一博

 フランス・ラグビーの英雄、アントワンヌ・デュポン(SH)が2023年のワールドカップ以来、テストマッチの舞台に帰ってくる。
 11月9日、パリ郊外のサン=ドニ、スタッド・ド・フランスで行われるフランス代表×日本代表のテストマッチは、大観衆のもとでおこなわれるだろう。

 その一戦に出場するメンバーが、11月7日に発表された。
 SO立川理道主将とともにチームをドライブするSHには、2024-25シーズンからトゥールーズ(仏・トップ14)でプレーする齋藤直人が入った。
 2季目となったボルドーで力強くプレーしているテビタ・タタフはベンチスタート。試合途中で、インパクトを与える役を担う。

トゥールーズでの経験をチームに還元するSH齋藤直人。(撮影/松本かおり)


 12番にはシオサイア・フィフィタが入った。昨年W杯のアルゼンチン戦以来の出場に、本人は「これまでの人生の中でいちばんコンディションがいい」と話す。
 105キロあった体重は今回の活動の中で102キロに落ち、体型がシャープになった。

 11月7日、日本代表はヴァンセンヌの森に隣接する国立スポーツ体育研究所(INSEP)内のグラウンドで練習。セットプレーからの攻防を想定しての動きの中では、「デュポン、デュポン」の声が飛び、相手のキーマンを意識しながら自分たちのスタイルを遂行する準備が進められていた。

 その練習を終えたフィフィタの表情が明るかった。
 7月に生まれた長男が奥さんとともに、前日パリに到着。スタジアムで応援してくれるというから、エナジーがあふれる。
「この試合に絶対に出ると思っていたので(家族のために)前からチケットを用意していました」

 エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ(以下、HC)から、「ボールキャリーで激しくプレーすることと、タックルで相手を仰向けに倒して、と言われています」という。
「超速ラグビーにはモメンタムが大事。それを自分が(タテに出ることで)作ります」
 天理大出身者が先発に3人、23人に計5人いることも嬉しい。

ディフェンスと運動量の多さで評価を得るFL下川甲嗣。(撮影/松本かおり)

 6番で先発する下川甲嗣は、「今日も課題が見つかりましたが、当日まで成長を続けている状態で試合に入る」と話した。
 本人は、前戦のオールブラックス戦こそ後半途中からの出場も、パシフィックネーションズカップでは全4戦に7番で出場と進化を続けている。

 ディフェンスリーダーを務める25歳は、対フランスの防御について、「デュポン、ラモスというキーマンをしっかり見て、特にデュポンをラックのまわりなどで動かさないようにしないと。(相手の)フォワードはビッグパックで重い。2人でのタックルを繰り返して、相手のやりたいことをやらせない」と話した。

 自身の成長については、対戦相手のレベルが上がっていく中でも、タックル成功率が上がっていることに手応えを感じているとした。オールブラックス戦は30分強の出場時間だったため、タックル機会が1桁と少なかったけれど、100パーセント相手をとらえた。

 また、チームディフェンスをオーガナイズする力も高まっている。世界のトップレベルと戦うことで、「いい経験を積み上げられているので充実しています」と話す。
 例えばオールブラックスは、「試合の中で変化する。こちらのやることへの対応力が高い」と感じた。そういった感覚を自分の力にもしていきたい。

 大観衆の前でプレーする気持ちも整えている。「個人的に、フランスと敵地で戦うのは初めてでスタジアムの雰囲気は分かりませんが、大袈裟なイメージを持って試合に臨みます」と、平常心でピッチに飛び出す準備を進めている。
「自分たちのいい時間を伸ばしていきます」

国立スポーツ体育研究所(INSEP)内には、多くの競技の強化がおこなえる施設がある。(撮影/松本かおり)


 フランス時間の17時からフランス戦の出場メンバーに関する記者会見に臨んだジョーンズHCは、「とてもいい準備ができている。選手たちは日本とは違うフランスのコンディションにもうまくアジャストできている」と話した。

 オールブラックス戦のスクラムで巧みな舵取りを見せたHO坂手淳史が怪我でスコッドを離れるなど、いくつかのアクシデントはあるものの、「いちばん強い23名を選出しています」とした。
 齋藤、タタフ、そして久々の出場となるフィフィタらが「チームに付加価値を与えてくれる」と話した。

 ワールドランキング4位のチームとの対戦を、「大きなプレッシャーがかかる」と覚悟している。
「しかし、そのプレッシャーを楽しみながら日本らしくプレーします」の言葉に続け、いつも通りにぶれることなく、「日本の代表チームなので、それを、コーチ陣も選手たちも望んでいます。集団的なスピード、個々のスピードをもってアタックすることが相手にとって脅威となる」と話した。

地下鉄にフランス代表WTBダミアン・プノーの姿あり。


 また、オールブラックス戦を振り返り、トライキャンセルでチームの勢いが沈んだことと、前半20分過ぎからハーフタイムまでに大量失点を喫したことについて言及。
 メンタル面の改善に取り組み、自分たちのスタイルを強く出せる時間を長くしていきたいとした。

 チームは日本を発ってフランスに到着後、南部のブリーヴへ長時間のバス移動。現在はトップ14のひとつ下、プロD2の同地クラブで基礎的なトレーニングに取り組んだ。
 ジョーンズHCは、「ブリーヴはラグビータウンです。そこで、質素なホテルに泊まり、練習をして、移動もきつい。それでもやり続けることが大事」と話し、チームにタフさを植え付け、誰がタフに行動し続けられるかのひとつの試みとした。

 立川主将はフランス戦に向けて、「相手の強みに付き合わないようなゲームプランがある。それを遂行する。スピードと自信を持ってアタックすることが大事。(9番の齋藤)直人とチームをリードしていきたい」と話した。

 この日のパリは曇り空。ときどき小雨もぱらつく空模様だった。
 羽田から香港経由、トランジットも入れて約23時間の旅を終えた足で、日本代表のトレーニングとホテルでの会見へ。体は冷え、さすがに疲れた。時差8時間も辛い。
 夜のビールが美味い。牛のタルタル、鴨のコンフィで生き返った。

鴨のコンフィは、うまい、うまい。

【日本代表 フランス戦メンバー】
①岡部崇人(横浜キヤノンイーグルス/関西学院大/29歳/180cm、105kg/5)
②原田 衛(東芝ブレイブルーパス東京/慶大/25歳/175cm、101kg/8)
③竹内柊平(浦安D-Rocks/九州共立大/26歳/183cm、115kg/11)
④エピネリ・ウルイヴァイティ(三菱重工相模原ダイナボアーズ/FIJI・ラトゥ カダヴレヴスクール/28歳/196cm、122kg/3)
⑤ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京/流経大柏/22歳/201cm、117kg/19)
⑥下川甲嗣(東京サントリーサンゴリアス/早大/25歳/188cm、105kg/11)
⑦姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ/帝京大/30歳/187cm、109kg/33)
⑧ファウルア・マキシ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/天理大/27歳/187cm、112kg/13)
⑨齋藤直人(スタッド・トゥールーザン/早大/27歳/165cm、73kg/21)
⑩立川理道◎(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/天理大/34歳/180cm、94kg/61)
⑪長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ/早大/24歳/179cm、90kg/15)
⑫シオサイア・フィフィタ(トヨタヴェルブリッツ/天理大/25歳/187cm、105kg/13)
⑬ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ/豪・ボンド大/27歳/187cm、102kg/25)
⑭ジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京/摂南大/30歳/177cm、95kg/14)
⑮マロ・ツイタマ(静岡ブルーレヴズ/NZ・スコッツカレッジ/28歳/182cm、91kg/5)

⑯松岡賢太(コベルコ神戸スティーラーズ/明大/27歳/175cm、100kg/2)
⑰森川由起乙(東京サントリーサンゴリアス/帝京大/24歳/180cm、114kg/2)
⑱為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/明大/23歳/180cm、108kg/7)
⑲ファカタヴァ アマト(リコーブラックラムズ東京/大東大/29歳/195cm、118kg/10)
⑳テビタ・タタフ(ユニオン・ボルドー・ベグル/東海大/28歳/183cm、124kg/18)
㉑藤原 忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/天理大/25歳/171cm、76kg/7)
㉒梶村祐介(横浜キヤノンイーグルス/明大/29歳/181cm、95kg/4)
㉓松永拓朗(東芝ブレイブルーパス東京/天理大/26歳/172cm、82kg/1)

◎=キャプテン

フランスでもビールかなあ


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