logo
代表の矜持を。フランス代表、厳格なチーム内ルールとともに始動
RWC2023時のフランス代表、ファビアン・ガルチエ ヘッドコーチ。今回こそ期待に応えたい。(撮影/松本かおり)

代表の矜持を。フランス代表、厳格なチーム内ルールとともに始動

福本美由紀

Keyword

 10月28日(月)、フランス代表が11月のテストマッチに向けて始動した。
 その翌日、フランス協会は『フランスラグビーのためにさらに強化されたパフォーマンスプロジェクト』を発表した。7月の南米遠征でのメルヴィン・ジャミネの差別発言(34週間の謹慎中)、さらにオスカー・ジェグとユーゴ・オラドゥが性的暴行で起訴された事件(公訴却下申請中)で傷ついたフランス代表のイメージ回復のため、代表選手とスタッフが守るべき憲章で、フランスラグビー界を変革するための20の具体的なアクションと28の施作を提案している。

 プロクラブ、アマチュアクラブ、選手組合、コーチ組合、すべてのフランス代表チームのスタッフを集めて会議を実施した。

 また、元フランス代表キャプテンのファビアン・プルースやティエリー・デュソトワール、2011年W杯時のフランス代表HCマーク・リエーヴルマン、現代表HCファビアン・ガルチエ、アントワンヌ・デュポンや、トップ14のクラブのHC、会長にも意見を求め、さらにイングランド、南アフリカ、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、NZの各国ラグビー協会からもヒアリングし、フランスハンドボール協会、サッカークラブ、そしてNBAからも話を聞いた。

「責任」、「模範」と言う言葉が多く見られ、「リスクのある行動を避け」、「ラグビーとフランス協会のイメージを守る」ことが目的となっている。そして、アルコールに関する条項が多い。

 合宿所、移動のバスや飛行機、スタジアム、ロッカールームでの飲酒は禁止。試合後のロッカールームの風景が変わる。この禁止令は試合のある週の月曜日にスタートする。また、チーム内の飲酒を伴う余興も禁止され、ゴルフ大会などアルコール無しのチームの親睦会を増やす。
 U18など未成年が参加しているチームでは、スタッフや同行する協会役員も、ホテルの自室で飲むことも禁止。大会終了後の打ち上げは、「貸し切りスペースで、適切なセキュリティー体制のもと」おこなわれる。

 また、チーム関係者とその家族以外の宿泊施設への立ち入りは共同スペースに制限され、家族には適宜部屋が手配される。

 そのほかにも、新たに代表チームに加わった選手に経験のある選手がついてサポートするメンター制度の導入で、新人が過ちを犯すことを防ぐだけでなく、メンターになった選手も責任ある行動を取ることを期待する。
 合宿中にSNSの利用やアルコール・薬物などのパフォーマンスへの影響、差別、暴行、ハラスメントなどに関する講習を受講する。受講後にクイズ形式のテストを実施し、「テストの結果が代表選考に影響を与えることもあり得る」という。

 地域で社会活動に従事しているアマチュアクラブにアンバサダーとして代表選手を参加させることで選手の責任感を持たせる。
 15人制男子代表選手は若い年齢別カテゴリーの代表チームにも随時介入する。

 選手のメンタルヘルスを管理するプログラムを設けることも挙げられている。

 この憲章には、選手もスタッフも毎年サインすることになる。憲章を守らなかった場合は、その度合いに合わせて賞与から(罰金を)差し引かれる罰則も設けられる。

「選手たちは受け入れている。先週、合宿メンバーの発表後に(その内容は)選手たちに送られており、一緒に送られた質問票に『ウイ』か『ノン』で答えるようになっていたが、全員が『ウイ』だった。この憲章が必要だった。理にかなった進化だ。これでラグビーでも難しい局面を超えることができるようになる」とガルチエHC。

 フランス協会のジャン=マーク・レルメ副会長も「選手は全てに快諾した。彼らは利害関係者なのだ。これはパフォーマンス向上に向けた進化だ」と説明する。

「私たちはスタッド・ド・フランスでフランス代表のブルーのジャージーを着てラグビーをしたくてたまらない。私たちはフランスラグビーを代表する。なんて素晴らしいことなのだろう。誰もが全力を尽くしたいと思っている」とガルチエHCが来週からのテストマッチへの意欲を語った。

SO起用があるかもしれないトマ・ラモス。本人はFBでの出場を望む。(撮影/松本かおり)


 昨年のW杯準々決勝敗退、そして今年のシックスネーションズでもファンの期待に応える内容も結果も残せていないし、選手やスタッフにとっても満足できるものではなかった。
 この秋は、なんとしても自国のファンの前で強いフランス代表を再び見せなければならない。

 水曜日の午後の練習を終えて42人の選手のうち19人がリリースされた。彼らは所属クラブに帰って週末のトップ14の試合に出場し、来週の招集メンバーが発表されるのを待つ。
 その中に、FLシャルル・オリヴォンが含まれており、現地では驚きの声があがっている。ガルチエ体制になってから初めてのことだ。11月9日の日本戦メンバーに選ばれる可能性が高いのは、もちろん合宿に残された23人だ。

 また、フランス代表はビブスの色と背番号で、その週の試合メンバーを見せてくれる。水曜日の練習でスタメンのビブスをつけていたのは、以下の15人だ。

1.ジャン=バティスト・グロ、2. ペアト・モヴァカ、3. テビタ・タタフ、4. チボー・フラマン、5. エマニュエル・メアフー、6. フランソワ・クロス、7. アレクサンドル・ルマット、8. グレゴリー・アルドリット、9. アントワンヌ・デュポン、10. トマ・ラモス、11. ルイ・ビエル=ビアレ、12. ガエル・フィクー、13. エミリアン・ガイユトン、14. ダミアン・プノー、15. レオ・バレ

 ロマン・ンタマックが負傷した時から噂はあったが、SOが本職のマチュー・ジャリベールを控えにして、本来FBのラモスを10番にするのか?
 ラモス本人は先週出演したラジオ番組で「シックスネーションズではマチュー(ジャリベール)が怪我をしてしまったから、最後の2試合はピンチヒッターで僕が10番に入った。でも、今の僕に言えるのは、僕は15番だということ。僕の目標はフランス代表で15番になることだった。そしてこれからもそうでいたい」と訴えていたのだが。
 しかもジャリベールはで、今季開幕以来ボルドーでとても良いパフォーマンスを続けている。

 現地では、この選考についてファンやメディアの間で大いに議論されているが、これはンタマック不在のたびに繰り返される。負傷で1年以上代表を離れていても、フランスの10番はやはり彼なのだとあらためて思わされる。


ALL ARTICLES
記事一覧はこちら