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NZ国内州代表選手権決勝で紙森陽太メンバー入り。BOP倒し、ウェリントンを頂点へ導けるか。
ウェリントンに欠かせぬ戦力となった紙森陽太。(撮影/松尾智規)

NZ国内州代表選手権決勝で紙森陽太メンバー入り。BOP倒し、ウェリントンを頂点へ導けるか。

松尾智規

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 10月26日(土)。横浜でオールブラックスが日本代表と対戦する日だ。
 2年前と同様、たくさんの観客がスタジアムに集い大いに盛り上がる事だろう。

 同日、ニュージーランド(以下、NZ)では、NPC(NZ国内州代表選手権)の決勝がおこなわれる。キックオフは、NZ現地時間3:05 PM(日本時間11:05AM)。
 決勝は、レギュラーシーズン1位のウェリントン、同4位のベイオブプレンティー(以下、BOP)が対戦する。

 決勝まで勝ち上がってきた両チームは、プレーオフではタフな試合が多かった。
 ウェリントンは、準々決勝でカウンティーズマヌカウと対戦した(10月11日)。
 9月27日のレギュラーシーズンでウェリントンは、カウンティーズ・マヌカウに12-51で大敗していたが準々決勝では、29-14でリベンジに成功。HOアサホ・アウムア、SHのTJ・ペレナラ、CTBビリー・プロクター、FBルーベン・ラヴらオールブラックス勢の活躍が際立ち、粘るカウンティーズを退けた。

 ウェリントンの準決勝(10月19日)は、ワイカトと対戦した。
 ワイカトの10番、元オールブラックスのSOアーロン・クルーデンの上手いゲームメイクもあり、試合は最後までもつれた。終盤に逆転を狙うワイカトに対してディフェンスで粘ったウェリントンが29-24の激戦を制し決勝行を決めた。
 この試合で最も印象的だったのは、ウェリントンの主将FLデュプレッシー・キリフィ。終盤に訪れたいくつかのピンチの場面でジャッカルを連発。試合を通じてキリフィのパフォーマンスは圧巻だった。

 一方のBOPは、準々決勝で苦しんだ。ホークスベイとの対戦(10月12日)は最後までもつれ、残り時間1分を切る。その状況からBOPはモールをまっすぐ押して見事な逆転トライ。19-17で勝ち、準決勝へ進んだ。 

 BOPの準決勝(10月19日)は、プレーオフにピークを持ってきたカンタベリーとの対戦だった。
 カンタベリーは、クルセイダーズを中心に多くのスーパーラグビー選手、キャップホルダーの選手も複数含んだメンバー構成だった。
 カンタベリーは前半を13-8とリードして折り返すも、後半に入ると、大事なところでミスを多発した。後半に入り、先にトライを奪って勢いに乗ったのはBOP。カンタベリーを突き放し、32-20の勝利で決勝進出を決めた。

◆2年ぶりの優勝を狙うウェリントンのメンバーは充実。紙森が決勝でもベンチ入り

 決勝はNZの首都、ウェリントンでおこなわれる。スカイスタジアムが舞台だ。両チームの決勝戦メンバーが10月24日に発表された。

 ホームのウェリントンのメンバーを見ると、ハリケーンズを中心としたスーパーラグビーの選手がずらりと並ぶ。PRザヴィア・ヌミア(1番)、FLキリフィ(7番)、CTBライリー・ヒギンズ(12番)は、決勝後に欧州に遠征するオールブラックスXVのメンバーに入っている。

 その他のメンバーを見ると、HOレニ・アピサイ(2番)、FLケイレブ・デレイニー(6番)、SOジャクソン・ガーデン=バショップの3人はマオリ・オールブラックス経験者だ。
 イングランド代表経験のあるFL/NO8ブラッド・シールズ(8番)をはじめ、キャップホルダーが数人いる。CTBピーター・ウマガジェンセン(13番)とWTBジュリアン・サヴェア(14番)は元オールブラック。先発メンバーは充実している。

 ベンチを見ると16番に元オールブラックス、HOヒカ・エリオットがSOSを受けて急遽メンバー入りをしている。
 そしてPR紙森陽太(かみもり・ようた / 日本ではクボタスピアーズ船橋・東京ベイ所属)が17番を付けて決勝でもベンチ入りを果たした。紙森はレギュラーシーズンの9月1日のカンタベリー戦の記事で紹介した後も、毎試合メンバー入りをしていた。
 サイズのある対面相手に低いスクラムで対抗、ディフェンスやブレイクダウンにおいても毎試合、真摯な姿を見せている。結果、チームの信頼を得て決勝でもメンバー入りした。
 決勝の登録メンバーに入った事に対して紙森は、「凄く楽しみで、勝利に貢献したい」と語る。「とても明るくいい雰囲気です」と、チームの様子を伝える。
※紙森も度々登場するチームのインスタグラムを見てもチームの雰囲気の良さが画面から伝わってくる(決勝のメンバーひとりひとりの動画投稿)。

Bunnings NPCの公式 Xより


◆ベイ・オブ・プレンティーのメンバーも充実。1976年以来の優勝を目指す。

 対するBOPのメンバーは、HOカート・エクランド(2番)、LOナイトア・アクオイ、NPCではWTBではなく、CTBでプレーしているエモニ・ナラワ(13番)など、決勝後に欧州へ向かうオールブラックスXVの選手が先発メンバーに入っている。これらの選手が、今シーズンのBOPが決勝まで勝ち進んだ原動力になったことは言うまでもない。

 他のメンバーに目を向けると、ハリケーンズでプレーしたあとに欧州に渡りウエールズ代表としてもプレーした事があるベテランCTBウィリス・ハラホロ(12番)の存在が光る。
 腰の強さを活かしたボールキャリーで準決勝でチームに勢いをつけるトライも挙げた。決勝でもハラホロが目立てば面白くなりそう。

 ウェリントンよりはスター選手は少ないものの、PRエイデン・ロス(1番)、SHテトイロア・タフリオランギ(9番)、CTBナラワ(13番)は、NZ代表のキャップホルダーだ。充実したメンバーで1976年以来、48年ぶりの優勝を目指す。
 準決勝後のインタビューでは、涙ぐんでいたBOPのキャプテン、HOエクランド。決勝を前に「ここ数週間、私たちは本当に愛を感じてきました。スティーマーズ(BOP)のラグビーは現時点で非常に良い状況にあり、明るい未来があると思います」(Sun Media)と語っていた。
 そして、チームが今年受けたサポートの感謝も忘れなかった。
 決勝当日の気象予報は悪天候。風も強い事からキッキングゲームとFW戦が鍵になる。準決勝でも見応えのあった激しいブレイクダウンの攻防を、決勝でも見ることができそうだ。
 スーパーラグビーの選手が多いウエリントン有利の声が多い。しかし、BOPには粘り強さがある。
 同日おこなわれる、オールブラックスの試合に負けないくらい熱い試合になるだろう。

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