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勝って歴史を変える。
そう宣言しているオールブラックスとの一戦を2日後に控え、日本代表を率いるエディー・ジョーンズ ヘッドコーチは、「緊張している」と胸の内を隠さなかった。
10月24日の午後、横浜市内。10月26日に日産スタジアムでおこなわれる日本代表×ニュージーランド代表に出場するメンバーについての記者会見時だった。
ジョーンズHCは過去に、オーストラリアやイングランド代表チームの指揮官として、オールブラックスと対峙した経験が16試合ある(豪州代表で5勝8敗、イングランド代表で1勝1敗1分け)。
2013年に日本代表が戦った際もHCを務めていたが、病に倒れ、その試合で指揮を執ることはできなかった。
常勝チームと何度も戦った経験があり、勝利した試合も少なくないジョーンズHCだが、今回の戦いに臨むにあたり「寝られないぐらい緊張している」と話した。
「実は昨晩、まったく寝られず午前1時半頃に一度目を覚ましました。寝ようとしたのですが、そこから結局寝られませんでした」
さらに、「ナーバスです」と言葉を継いだ。
「しかし、これはあえて普通のことかなと思っています。緊張していなければ、そっちの方が心配になる。私はコーチとして、プレーヤーのためにできる準備は、すべてしてきたと自覚していますし、自負しています。プレーヤーたちも、いい準備をしてきたことが自信につながっているでしょう。いい緊張感を持っていると感じています」
大一番を控えた人の心が揺れ動くことは長年の経験で知っている。
「ここからの36時間については、プレーヤー、コーチは同じような気持ちになるでしょう。緊張もする。(そういう時は)自分たちがどれだけいい準備をして、準備万端かを思い返すといい」
イングランド代表を率いていた頃の話をした。
「オールブラックスとの(歴代通算対戦)勝率は40パーセントほどです。しかし私が指揮を執った間の3試合は、最初は1点差で負け(15-16/2018年11月)、次は(RWC2019の)準決勝で勝ち(19-7)、ドロー(2022年11月/25-25)でした。歴史を変えた。自分たちはできる、とイングランドの選手たちの考え方が変わりました。ジャパンでも同じ取り組みをしたい」
万能なチームに勝つ。そのためには、「攻め続けることが大事。そして、相手に隙を与えない」ことが求められる。
それをキックオフ時からフルタイムまで続けなければいけない。
相手を追い詰めていくための準備を積んできた。「自分たちからプレッシャーをかけ続けることができないと決して勝利は得られない」と覚悟を決める。
「集団的なスピードでアタックし続ける」
ただ、そうはいってもボールは相手にも渡る。ディフェンス時も自分たちが圧をかけ続けることが求められる。特に黒衣の10番、ダミアン・マッケンジーを警戒する。
「ひらめきがある選手です。ターンオーバーの際、そのチャンスをものにする。だからこちらはコネクトし続け、アグレッシブに守らないといけない」
相手は大型FWを組んできた。しかし、若い選手たちもいる。プレッシャーをかけて混乱させたい。
「若いチームが新しい歴史を作る大きなチャンス」とするこの試合を、「今シーズンでいちばん重要な試合」と位置付ける。
強度の高い練習を、集中力高く重ねてきた。「最高の準備ができた」と話し、「80分間、決して止めることができないプレーをする。日本らしいプレーをする。選ばれた23人なら必ずやれる」とした。
試合前のハカに留意する。
「どのチームも相手のハカを見てしまい、その後、試合開始まで呆然としてしまい、ハッと気づいて試合に入る傾向がある」
また、オールブラックスの迫力のある舞いに観客たちが惹きつけられ、スタジアム全体が黒衣びいきとなるケースもたびたびある。
そんな空気に巻き込まれぬためにも、ジョーンズHCと立川理道主将は、ハカとの対峙の仕方を考え中という。
主将は、SH藤原忍とのコンビで「自分たちのテンポを作り、適切なところへボールを運びたい。相手に対してリスペクトもあるが、受け身にならず戦って勝ちたい」と話した。
歴史を変える準備をやり尽くしてキックオフへ向かう。
【日本代表関 オールブラックス戦メンバー】
①岡部崇人(横浜キヤノンイーグルス/関西学院大/29歳/180cm、105kg/4)
②坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ/帝京大/31歳/180cm、104kg/46)
③竹内柊平(浦安D-Rocks/九州共立大/26歳/183cm、115kg/10)
④サナイラ・ワクァ(花園近鉄ライナーズ/NZ・ヘイスティングスボーイズ高校/29歳/202cm、120kg/7)
⑤ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京/流経大柏/22歳/201cm、117kg/18)
⑥ファカタヴァ アマト(リコーブラックラムズ東京/大東大/29歳/195cm、118kg/10)
⑦姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ/帝京大/30歳/187cm、109kg/32)
⑧ファウルア・マキシ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/天理大/27歳/187cm、112kg/12)
⑨藤原 忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/天理大/25歳/171cm、76kg/6)
⑩立川理道◎(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/天理大/34歳/180cm、94kg/60)
⑪マロ・ツイタマ(静岡ブルーレヴズ/NZ・スコッツカレッジ/28歳/182cm、91kg/4)
⑫ニコラス・マクカラン(トヨタヴェルブリッツ/帝京大/28歳/188cm、93kg/4)
⑬ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ/豪・ボンド大/27歳/187cm、102kg/24)
⑭ジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京/摂南大/30歳/177cm、95kg/13)
⑮矢崎由高(早大2年/桐蔭学園/20歳/180cm、85kg/4)
⑯原田 衛(東芝ブレイブルーパス東京/慶大/25歳/175cm、101kg/7)
⑰茂原隆由(静岡ブルーレヴズ/中大/24歳/187cm、116kg/5)
⑱オペティ・ヘル(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/豪・ニューイントンカレッジ/26歳/190cm、127kg/-)
⑲エピネリ・ウルイヴァイティ(三菱重工相模原ダイナボアーズ/FIJI・ラトゥ カダヴレヴスクール/28歳/196cm、122kg/2)
⑳下川甲嗣(東京サントリーサンゴリアス/早大/25歳/188cm、105kg/10)
㉑小山大輝(埼玉パナソニックワイルドナイツ/大東大/29歳/171cm、74kg/4)
㉒長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ/早大/24歳/179cm、90kg/14)
㉓松永拓朗(東芝ブレイブルーパス東京/天理大/26歳/172cm、82kg/-)