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オールブラックスの日本代表戦メンバーは「バランスをとった」。FWの圧力、若手のエナジーで襲いかかる。
都内で取材に応じたスコット・ロバートソンHC。(撮影/松本かおり)
2024.10.22
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オールブラックスの日本代表戦メンバーは「バランスをとった」。FWの圧力、若手のエナジーで襲いかかる。

田村一博

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 横浜での日本代表戦の前日(10月25日)には、欧州ツアーの初戦、イングランド戦での先発が濃厚な10数人は現地へ向かって旅立つそうだ。
 10月22日、オールブラックスの日本代表戦の出場予定メンバーが発表された。

 キャプテンを務めるLOパトリック・トゥイプロトゥは46キャップ。100キャップのFLサム・ケインがバイスキャプテンとして支え、87キャップのTJ・ペレナラもベンチに控える。CTBのアントン・レイナートブラウン(副将)も79キャップと、経験豊富なメンバーも含まれているが、経験を積み上げている途中の若手や、初めてテストマッチに臨む者もいる。

 都内のホテルで出場予定メンバーについて取材を受けたスコット・ロバートソン ヘッドコーチ(以下、HC)は、10月26日に日本代表戦、11月2日にイングランド代表戦と、離れた場所でテストマッチが続くことを踏まえ、「バランスをとった」とした。
 オールブラックスは、その両試合に向けてチームを分けて練習している。日本戦は前述のように、最強布陣外で組んだ中でのベストメンバーとなっている。

 スコッド全体が日本戦後の移動となると、イングランド戦前の練習機会が2回減る。2チーム制は、それを避けるためだ。
 試合の4日前にメンバー発表となったのも、10月22日正午過ぎの練習がメディア公開となったため、2チーム体制が公のものとなったからだった。

 ロバートソンHCは、SHキャム・ロイガード、SOダミアン・マッケンジーのハーフ団を組んだ理由を、「はやいプレーができてチャンスが作れる。ロイガードの左足のキックも有効に使いたい」とした。
 また、出場選手に求めることとして「スペースをうまく使ってほしい。作った好機を、スキルを使って得点にするところを見たい」とした。
 大柄なFWを多く起用する。「セットで圧倒したい」とも話した。

 日本代表の速さを警戒している。「勇気を持ってプレーしてくる」とし、チャンスを与えると厄介だと身構える。
 また、エディー・ジョーンズHCの手腕も、「予想外のことをしてくるし、選手の力を最大限引き出す」と評価した。日本ラグビーの印象について質問を受けると、「(直近の試合で)若い選手が起用されているし、その選手たちが活躍しているのも把握している」と答えた。

ビリー・プロクター(左)とルーベン・ラヴ。(撮影/松本かおり)

 7月のフィジー戦で初キャップを得たCTBビリー・プロクターと、今回出場すれば初キャップとなるルーベン・ラヴも取材に応じた。

 プロクターは、ウェリントン代表でともにプレーしたことがあり、遠征で同部屋になったこともある日本代表のWTB、マロ・ツイタマを警戒すると話した。
「日本でもたくさんトライを取っているのも知っている」
 昨年オールブラックスXVの一員として来日したラヴは、その時に日本代表と対戦した記憶から、CTBディラン・ライリーに気をつけるとした。

 プロクターは初キャップのフィジー戦以降はオールブラックスでの試合出場はなかった。国内州代表選手権の試合に出場し、試合勘を鈍らせないようにしてきた。
 兄・マットもオールブラックス経験者。兄弟で黒衣を着た感激について、「ふたりとも幼い頃からの夢を叶えられた。先にオールブラックスになった兄を追いかけて、自分も(代表に)届いたことは嬉しいし、家族も誇りに思ってくれていると思う」と話した。
 兄の初キャップは2018年、味の素スタジアムで戦った日本代表戦だった。兄弟揃って、この国と縁がある。

 ラヴはクリケットでも豊かな才能を発揮し、U19ニュージーランド代表に選ばれた過去を持つ。アスリートとして優れている。
 クリケットではバッター。当時は、「大谷翔平のようになりたかったよ」と笑わせた。相手バッターの後方を守るキーパーもしていた。野球でいうファールチップのような打球を瞬時にキャッチする役だ。
「左右への機敏さが求められる。その瞬間的な動きはラグビーでも活きている」と笑う。

 ふたりとも、日本戦でつかんだチャンスを、その後の飛躍につなげたいと腕をぶす。他の出場選手たちも同じ気持ちだろう。
 ヨーロッパツアーで主力に食い込みたい者たちの熱いエナジーが赤白ジャージーに押し寄せることになりそうだ。

【オールブラックス 日本代表戦メンバー】
①タマイティ・ウィリアムズ クルセイダーズ  196 140 24 14
②アサフォ・アウムア ハリケーンズ 177 108 27 15
③パシリオ・トシ ハリケーンズ 193 140 26 3
④サム・ダリー ブルーズ 203 110 24 5
⑤パトリック・トゥイプロトゥ◎ ブルーズ 198 120 31 46
⑥サミペニ・フィナウ チーフス 193 115 25 4
⑦サム・ケイン○ 東京サントリーサンゴリアス 189 103 32 100
⑧ウォレス・シティティ チーフス 187 113 22 5
⑨キャム・ロイガード ハリケーンズ 183 88 23 5
⑩ダミアン・マッケンジー チーフス 177 78 29 56
⑪マーク・テレア ブルーズ 186 94 27 15
⑫アントン・レイナートブラウン○ チーフス 185 96 29 79
⑬ビリー・プロクター ハリケーンズ 187 96 25 1
⑭セヴ・リース クルセイダーズ 179 87 27 30
⑮スティーヴン・ペロフェタ ブルーズ 181 85 27 5

⑯ジョージ・ベル クルセイダーズ 183 107 22 1
⑰オファ・トゥウンガファシ ブルーズ 195 122 32 63
⑱フレッチャー・ニューウェル クルセイダーズ 186 121 24 20
⑲ジョシュ・ロード チーフス 205 106 23 6
⑳ピーター・ラカイ ハリケーンズ 186 108 21 -
㉑TJ・ペレナラ リコーブラックラムズ東京 184 90 32 87
㉒デービッド・ハヴィリ クルセイダーズ 184 88 29 28
㉓ルーベン・ラヴ ハリケーンズ 183 90 23 -

※左から背番号、名前、所属、身長、体重、試合当日の年齢、キャップ数。
※◎は主将、◯は副将。

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