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佐藤大地は、「明治らしく」より、自分らしいロックに。
2003年1月26日生まれ。183センチ、102キロ。國學院栃木高校出身。法学部に学ぶ。(撮影/松本かおり)

佐藤大地は、「明治らしく」より、自分らしいロックに。

田村一博

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 激しくボールキャリーする数が、いつもより多かった。
 チームは2トライを許し、前半は26-15。勝負を決めるのにやや手間取った。しかし後半は31-0。結果的に57-15と完勝した。

 10月12日、太田市運動公園陸上競技場(群馬)で立教大を破り、今季開幕からの連勝を4とした明大。
 背番号5の佐藤大地は、「前半はミスが多かったけど、後半は改善していい終わり方ができたと思います」と語った。

 今季はロックとして全試合に先発している。
「ラインアウトディフェンスが良くなかったのですが、修正した後半は相手にプレッシャーをかけることができました」

 春から夏と、決して順調ではなかったチームの足取りもピッチが上がってきた。
「FWはスクラムも安定してきて、成長が感じられます。でも、もっとやれると思う。練習すれば、さらによくなる」と手応えを言葉にする。

 ボールを持っていない時の意識が、みんな高まっていると感じる。全員がハードワークできるチームになりつつある。
 4年生。ラストシーズンにかける思いは強い。

 3年生だった昨季は、大学選手権も含め、全10試合中9試合に出場した。
 欠場したのは早明戦だけ。試合の2日前に肩鎖関節を痛めた。

チームのホームページ、選手紹介の欄でも目標とする人物を「佐藤優奈」としている。「昨シーズンの大学選手権は観にきてくれました」。(撮影/松本かおり)

 2年生時は怪我で秋シーズンを棒に振った。1年生時は、大学選手権準決勝に数分出ただけだ。
 早明戦に出場できるチャンスは、残すところ1回だけ。2024年12月1日(日)、100回目という伝統の一戦に立ちたい気持ちは大きい。

 その思いの根っこにあるのは感謝だ。
「おばあちゃんや母、家族に支えてきてもらいました。大きな試合に出られたら、恩返しできるかな、と思って」
 優しさが言葉ににじむ。

 宮城県出身。古川ラグビースクールには、姉・優奈さんと一緒に入った。小1のときだった。
 姉はサクラフィフティーンとして活躍する。ポジションは同じLOだ。

 日本代表キャップ20を持つ姉をリスペクトし、「追っかける存在。姉の活躍は自分も頑張るモチベーションになる」と言う。
 家族のグループラインを通じて連絡を取り合うことはあっても、ラグビーの話はあまりしない。言葉にしなくても、それぞれの頑張っている姿が互いを刺激し合う。

 183センチ、102キロ。國學院栃木高校出身。明大の中では、決して大きい方ではない。
 重戦車と呼ばれる伝統のFWだ。その真ん中に位置する者たちは、伝統的に猛者揃いだ。
 佐藤も、「明治のロックは、デカくて、破壊力がある。そんなイメージ」を持ってきた。

 しかし自身は違う強みで勝負する。
「僕は大きくない。そして大学に入って、ボールキャリーやタックルが強い選手はたくさんいると分かりました」

 だから、「明治らしさというより、自分らしいロックになろう、と。オフ・ザ・ボールの動き。ブレイクダウンでの細かなプレーや、地道な動きの積み重ねで頑張ろうと思いました」とこだわりを口にする。

 派手なプレーの方が、活躍はコーチ陣に伝わりやすいだろう。それでも「積み重ねるしかない」と、できることを積み上げて出場機会を重ねている。
 信頼されている証拠だ。

ワイルドな髪型は、行きつけの明大前メンズバーバーにてカット。(撮影/松本かおり)

「もちろん勝敗は大事。だけど悔いが残らないように、持っている力を一戦一戦出し切ることに集中しています」
 そのためにもコンディショニングに注力する。平日の練習は午前6時半スタート。夜10時から10時半には寝るようにしている。

 右目の瞼に傷があった。慶大戦でタックルした際、味方の頭とぶつかりカット。7針縫った。
「いろんな髪型は学生時代しかできないと思うので」と、現在はマレットヘアー。サイドを刈り上げ、襟足は長い。
 ワイルドな髪型とあいまって迫力満点に見えるも、話すと穏やかさが伝わる。

 卒業後は仕事もラグビーも思いっきりやれるリーグワンチームへ進む。
 目の前のことを全力でやり切ることが早明戦出場につながる。その舞台でのプレーは、より自分を大きくしてくれる。


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