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競るけれど勝てない。その展開は、この大会で始まったことではない。
10月5日に南アフリカでおこなわれた『WXV2』(女子世界大会)の日本代表×スコットランドで、日本は13-19と僅差で敗れた。
サクラフィフティーンは、この試合も含む直近の7テストマッチで、イタリア代表に8-24と敗れた以外は最大で9点差。
1勝5敗1引き分けで、前戦の南アフリカ戦は24-31だった。
日本はこの試合、前半に風下に立ったとはいえ、常にリードを許す展開となった。
試合後、選手たちは「前半は我慢して後半勝負」とチームでプランを立てていたと話したが、得点(リードして)で圧力をかけていかないと、サイズとパワーで上回る相手に勝つのは難しくなる。
この試合、日本はキックオフから2分が過ぎた頃、先制トライを許した。ピッチ中央でのラックで、逆サイドから走り込んできたWTBにディフェンダー間を破られ、そのまま走り切られた。
その後も、失点こそなかったものの自陣で戦うことが多かった。
18分過ぎにFB西村蒼空の50/22キックで敵陣に攻め込んだが、直後のラインアウト→モールでボールに絡まれ、好機を逃した。
サクラフィフティーンが5点を返したのは29分だった。防御で粘ってターンオーバー。スクラムを得た後だった。
相手の反則で得たFKから速攻。SO大塚朱紗が敵陣深く蹴り込んだボールを相手14番がライン際で内側にタップして残した。
そのボールを確保したのは、忠実にキックチェイスしていたWTB今釘小町。そこに仲間が殺到し、トライラインに迫った。
最後はFL齊藤聖奈がトライを奪った。
ただ、5-7だったハーフタイム直前、スコットランドに攻められた。
ラインアウトからフェーズを重ねた濃紺のジャージー。赤白は必死にダブルタックルで止めるも、最終的に左サイドで1対1の状況を作られる。オフロードパスを連ねられ、一気に攻略された(前半5-12)。
最初の40分、ボールを手にする機会は多かったものの、なかなか敵陣に入れなかった日本。パスを重ねても、自陣から中盤でしか戦えない。その状況は、ポゼッション60パーセントながら、テリトリーで40パーセントというスタッツにも表れた。
SH津久井萌は、「スコットランドはスペーシングがしっかりしていて、穴がなかった。(防御の)ウラを狙っていたが、そこにもなかなかチャンスはなかった」と振り返った。
フェーズを重ねて好機を待ったが、大きなチャンスは少なかった。
風上に立った後半は、スコットランドに自陣深くまで攻め込まれる時間は少なくなった。
12分にはCTB古田真菜がパスダミーからラインブレイク。敵陣ゴールライン近くまで入り込み、チャンスをつかんだ。
しかしラインアウトで確保できず、得意のモールに持ち込めなかった。
18分に日本がPGを決め、8-12と迫ったサクラフィフティーン。しかし23分にトライ、ゴールを許して8-19とリードを広げられた。
この時もラインアウトから攻められ、9フェーズを重ねられた。ダブルタックルで対応できている間はいいが、最後は1対1のシチュエーションを作られてインゴールに入られた。
66分過ぎ、敵陣ゴールラインに迫り、ショートボールを素早く投げ入れたラインアウトからモールを組み、FL長田いろは主将がトライを奪い、13-19と追いかけたが、残り3分を切って得たゴール前10メートルのラインアウトでは、モールを押し切れなかった。
その後も、試合終了時までファイトし続けたけれど押し切られた。
クロスゲームを勝ち切るには、プレーの精度に欠けていた。
細分化された各スタッツに大きな差はない。テリトリーで劣っても、ポゼッションで上回っているから得点差も大きくない。
ただ、ボールを多く持っているからチャンスもあるのに、パスの乱れなどで崩し切れない。
ラストチャンスのラインアウトもそうだ。
しっかり組めれば押せる自信は持っている。しかし、スローイングがぶれるからクリーンキャッチできず、ボールセキュリティーが緩くなった。結果、モール内でボールを奪い返された。
試合後レスリー・マッケンジー ヘッドコーチは、「成長中のチーム。学ぶことしかない段階」と前置きした上で、結果については悔やんだ。
ディフェンスのセットアップなどを評価するも、自分たちのミスから好機を逃したことを認めた。
長田主将も、「ディフェンスの面では前に上がれたので(今後も)継続していきたい」としながらも、「ミスから(点を)取られたところは修正したいし、トライを取り切らないといけない」と反省した。
次戦は10月11日のウェールズ戦。先手を取り、好機でのプレー精度を高めたい。
自分たちの形に持ち込めば戦える力はついている。圧力の中での遂行力こそ、テストマッチでの勝敗を左右する。