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タックルの人が走った。
立教大学の背番号6、石川洋志郎(ようじろう)は、9月22日に熊谷ラグビー場でおこなわれた関東大学対抗戦、筑波大戦で2つのトライに絡んだ。
23-29。惜しくも敗れたものの、近年力をつけている濃紺のジャージーは、3勝して大学選手権に出場することを目指している。
この試合で、開幕から2連敗となった。しかし、あらためて自分たちの力に自信を持つことができた試合になった。
トライを呼んだ3年生の石川の好走は、前半16分と後半34分だった。
前半のプレーはラインアウトから始まった。石川は1次攻撃でブレイクダウンに入り、振り戻しのアタックに備えた。4フェーズ目に、SO中優人のフラットなパスを受けた。
ディフェンダー間に走り込んでいた背番号6はクリーンブレイク。約30メートルを走った。
トライライン直前でタックルを受けるも、丁寧にボールを置いた。SH伊藤光希からLO日野幹太にパスが渡り、先制トライが生まれた。
後半34分は、16-29のスコアになっていた。
ここもラインアウトからだった。石川は、1次攻撃でパス→ブレイクダウンと働いた。そして、左端まで動いたボールが戻ってくるのに備えた。ラックから出たボールを手に自ら仕掛けたSO中の動きに呼応した。
背番号10のオフロードパスに寄り、防御裏を走る。約10メートル走ってタックルを受けたが、ゴール前でサポートのSH川畑俊介にパスをつないでトライが生まれた。
もっともキツイ時間帯だったが、背番号に関係なく全員が動き続けて挙げたトライ。立大の充実が伝わるプレーだった。
この日のパフォーマンスについて、「個人的にはタックルミスもあり、味方に助けられたところが多かった」と振り返った。
しかし、アタック面については「練習してきた成果が出た」と相好を崩した。
「この試合に向け、ああいうプレーをしていこう、と準備してきました」
ショートパスを受けて抜くイメージ通りのプレーができた。
一連のプレーの中で複数回の仕事をする。2つめのトライ時は、半身前に出た仲間に寄って抜けた。FLらしい運動量と嗅覚が感じられる動きだった。
上級生と呼ばれる学年になって、気を引き締める。
「対抗戦は続きます。いまはどうか分からないけど、周囲を引っ張る存在にならないと」
「(アタックより)ディフェンスの方が好き」というバックローは、東京高校の出身。シャローディフェンスを生命線とする学校で、前に出ることを叩き込まれた。
いまも立大の約束事を守りながら、高校時代からの意識でいる。
NO8は、FLより深いコースを走るチームが多いだろう。しかし、森秀胤監督(現・総監督)が築き上げた東京高校の防御では、8番も迷いなく前へ出る。
「誰が自分のターゲットか。周囲とコミュニケーションを取り、ターゲットを絞ることが大事です」
高校3年時、花園予選(準決勝)で早実に敗れて聖地に立てなかった。その悔しさは、いまも忘れていない。
大学でもラグビーをやろうと思ったのは、その思いもあったからだ。母校はそれ以来晴れ舞台を踏めていない。
今季対抗戦の初戦、早大戦は燃えた。チームの一員として勝利に直進したこともあるが、高3時に敗れた早実出身の選手(現4年生)もメンバーに入っていたからだ。
リベンジの気持ちが強かったからなのか、「いい動きができた」。試合には6-57と敗れるも、個人的にはいい感触が残った80分だった。
理学部化学科に学ぶ。
理系の勉強が得意で、立大のひたむきなラグビーに惹かれていたから、一浪して入学、入部を実現した。
実際に部の空気を吸い込んで、自分の思いが間違いなかったと確信した。
「みんな、すごく真面目です。ウエートやフィットネスなど、一つひとつのトレーニングにこつこつ取り組む。それがチームの強さだし、強みを作っていると思います」
日によって170〜172センチで96キロ。ヘッドギアを着用しているのは、昨シーズン脳震盪に苦しんだからだ。
結果、プレータイムが短くなってしまったから、今季から黒いキャップで思い切り突き刺さる。
筑波大戦では、残り4分でピッチを出た。2つ目のトライに続く激走をした後、足がつった。エナジーが空っぽになった感覚だった。
描く立教ラグビーをとことんやり切ったら、こうなる。やり切ったら、強豪からの勝利も遠くないとあらためて分かった。