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「ナオトはすぐに溶け込んだよ」。初先発つかんだ齋藤直人(トゥールーズ)をモラHCが高評価
モンペリエ戦で初先発。20-11の勝利に貢献した。(Getty Images)

「ナオトはすぐに溶け込んだよ」。初先発つかんだ齋藤直人(トゥールーズ)をモラHCが高評価

福本美由紀

 今季、トゥールーズに移籍した齋藤直人(27歳)が、第1節のアウェーのヴァンヌ戦、第2節のホームでのラ・ロシェル戦で後半途中出場し安定したプレーを見せ、続く第3節、敵地に乗り込んでのモンペリエ戦(9月21日)ではトップ14で初の先発出場を果たした。

 前半、ハーフウェイラインでのスクラムからボールを持ち出した相手SHレオ・コリーに引き寄せられ、モンペリエにトライへの扉を開いてしまった齋藤だが、後半開始早々、同じくハーフウェイラインでのラックから自らサイドを突いた。相手ディフェンスを突破して大きく前進し、味方WTBアンジュ・カプオッゾのトライのきっかけを作った。

 齋藤はその後も60分にポール・グラウと交代するまで、常にボールにつき、素早く正確な球出しを続けた。ディフェンスでも健闘し、現地ラグビー紙の『ミディ・オランピック』、そしてスポーツ紙の『レキップ』のどちらでも、「今週のXV(フィフティーン)」に選ばれた。
『レキップ』は「もう何年もトゥールーズでプレーしているようだ」とコメントしている。

 試合後の会見で、FWコーチのジャン・ブイルーは、「うちのシステムでは9番が大きな責任を担っているが、彼は賢い選手で、私たちがどのようにプレーしているのかすぐに理解した。ボールにつき、流れるようにスムーズにプレーし、スピードを上げ、またラック周辺の状況を読むこともできる」と評価した。

 トゥールーズではプロチームの練習にエスポワール(アカデミー)の選手を参加させ、またプロの試合にも積極的に起用している。
 このモンペリエ戦では出場メンバー23人中3人がエスポワールの選手だった。昨季のモンペリエ戦では10人のエスポワールの選手を起用し、しかも勝利を挙げた。若手の育成に成功しており、トゥールーズで育った選手がそのままプロになる。

 それゆえ外部からのリクルートの数は少ない。しかしリクルーターの目は確実だ。
 スコットランド代表FB/WTBブレア・キングホーン、イングランド代表FLジャック・ウィリス、アルゼンチン代表FBフアン=クルス・マリーア、同CTBサンティアゴ・チョコバレスと、誰もが初戦からトゥールーズのラグビーにフィットする。ここでさらに成長し、今やこのクラブに欠かせない戦力になっている。

 今季の新規加入は、レンタル移籍から戻ってきた2人を除けば齋藤だけだ。

周囲とのコミュニケーションもうまくとれている。(Getty Images)

 齋藤のどういうところを評価してリクルートに至ったのか、ユーゴ・モラ ヘッドコーチ(HC)が答えてくれた。
「彼のスピード、そしてチームのリズムを維持し、時にはテンポアップできる能力を評価しました。彼のプロフィールはチームに完璧にフィットします」

 チームメイトやコーチとのコミュニケーションを含め、チームにどの程度溶け込めているのかも気になるところだ。
「スタッド・トゥルーザンはメンバーがほぼ変わっておらず安定しています。そこに持ってきて彼の人柄なので、とてもスムーズに選手のグループに溶け込むことができました。また、英語をマスターしているので、言葉やコミュニケーションの問題はありません。9月からフランス語の授業も始まっています。私たち、コーチも選手も全員オープンで、これまでもナオト(齋藤)のような外国人選手を受け入れてきています」
 このクラブは、あらゆる点で一流なのだとあらためて感じさせられた。

 齋藤のパフォーマンスに対しては、「最初の2試合は途中出場でとても良いプレーをしました。彼が入ることによって、チームに良い影響を与え、勝利に貢献してくれた。モンペリエ戦での先発出場で、彼を私たちのチームに加えた選択は間違いではなかったと確信できました」。満足している様子が伝わってくる。

 トゥールーズのSHには、まずアントワンヌ・デュポン(27歳)がいる。そして、昨季デュポンがW杯に出場し、続いて7人制ラグビーに挑戦していた期間、留守を守っていたのがポール・グラウ(27歳)だ。
 グラウは2022年に2部リーグのアジャンからトゥールーズに入団した。2年目にあたる昨季、28試合に出場。トップ14ばかりだが19試合で先発し、1497分プレーした。時には「デュポンがのり移っているのか」と思わせるような試合を見せた。

 今季開幕前に現地地方紙『ラ・デペッシュ・デュ・ミディ』から齋藤について問われ、「彼とはたくさんコミュニケーションをとっている。質問されれば喜んで答えているよ。言葉の壁があって新しいクラブに加わるのは簡単なことじゃないと思うけど、彼はチームに馴染めるようにとっても努力している。優れた選手だから、チームにとって大きなプラスになるよ」と答えていた。

 ここまではグラウと齋藤でプレー時間を分け合ってきたが、10月上旬にはデュポンが復帰して3人体制になる。
 フランスの長いシーズンを選手のコンディションを維持しながら戦い抜くには3人のレベルの高いSHが必要だ。昨季、トゥールーズは、トップ14とチャンピオンズカップを合わせ、36試合を戦っている。

 さらに今季、トゥールーズはチャンピオンズカップで初めて南アフリカへ移動して試合を行う。
 トップ14でアウェーのラ・ロシェル戦の翌週、南アフリカのダーバンに渡ってシャークスと対戦、次の週はホームでイングランドのレスター・タイガースを迎え撃つ。

 昨季59人の選手を起用してクラブを2冠へ導いたモラHCが、この3人のSHをどう起用していくのか、その中で齋藤がどのように成長していくのか、非常に楽しみである。

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