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【アジアセブンズシリーズ/杭州(中国)観戦記②】突然の幕切れあり。必死の追い上げも。男女日本代表ともに2位も奮闘
中国代表⑥王婉钰選手のお父さん。気合いの入った応援。(撮影/萬井 淳、以下同)
2024.09.25
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【アジアセブンズシリーズ/杭州(中国)観戦記②】突然の幕切れあり。必死の追い上げも。男女日本代表ともに2位も奮闘

萬井 淳

 9月21日から杭州(中国)でおこなわれていたアジアセブンズシリーズは、9月22日に決勝戦を含む順位決定トーナメントがおこなわれた。

◆男子日本代表、ファイナルで香港に屈す


 前日とは大幅に観客の増えたスタジアム。1000人は超えている情況。
 決勝は香港が相手である。前夜、JAPANが逆転勝利した中国を1トライに抑えて勝ち進んできている侮れない相手だ。
 大会側の手配ミスか香港の国旗が二回りくらい日本の国旗より小さい。隣に座っている観客が「なんだあれは! 屈辱だよ!」とつぶやいていたが、試合前の国家斉唱では国歌のボリュームが2割程度大きく放送されている気がしたので、おあいことしよう。
 ちなみに香港は中国領ゆえ、国歌は中華人民共和国の国家が演奏される。スタジアムの観客は各国選手と筆者を除けば全員が中国人。2割増のボリュームを上回る声量の全員合唱だった。

確かにサイズに違いのある国旗

 開始早々JAPANがアタックを仕掛けるも、ボールが浮いた所で香港にわたってしまい、右に展開されてトライを奪われる。さらに香港がもう一本。会場は楽勝を感じた観衆が沸き始める。(0-12)
 しかしJAPANも負けてはいない。前半5分、ラックから⑥中野剛通が一人で相手2人をめくりあげる殊勲のターンオーバーでボールを奪い、⑫高井良成が右から抜けてポスト下にトライ。(7-12)
 さらに前半終了間際、敵陣22mでパスを受けた⑥中野がステップ、ハンドオフ、と3人を振り切った。最後は片手でボールを掴んで跳び込み、技ありのトライ。同点で折り返した。(12-12)

ターンオーバー(写真上)から高井良成が激走してトライ(写真下)
技ありトライの中野剛通

 後半も香港が先行した。
 JAPANもすぐに⑥中野が左隅にトライを決めたように思われたが、TMOにて判定は覆されてノートライの判定。しかしその後、ライン裏への絶妙なパントを⑧志和池豊馬が押さえ、17-17の同点に追いつく。
 難しい角度のゴールも成功し、19-17と逆転。

 再開後、⑤ケレビ ジョシュアにイエローカードが提示される。JAPANは6人となった厳しい所を突かれてトライを許す。手元の時計ではまだ充分に時間があるはずだったが、その後すぐにホーンが鳴り、試合終了となった(19-24)。

 若いメンバーで挑んだ今大会、JAPANは惜しくも優勝を逃した。しかし充分な機動力を発揮した。今後の成長に期待したい。

 特筆すべきは今大会で主将を務めた④吉澤太一だ。あっけない幕切れに口惜しさが残る試合直後にもかかわらず、すぐに相手ベンチに向かい、香港チームの選手、スタッフ一人一人と握手を交わしていた。ノーサイド精神を忘れない、これぞJAPANの目指すラグビーとも言えよう。心の中で大きな拍手を送った。

大阪府警魂! 志和池豊馬

◆女子決勝は中国×日本。サクラセブンズ粘るも敗れる


 直前の香港勝利で興奮冷めやらぬスタンドのボルテージがさらに上がった。中国女子代表の入場だ。香港が「中国の一部分」とすれば、観客にとって女子代表は、まさに「我々の代表」であり、「中国!加油!(がんばれ中国!)」のコールが何度もスタジアム中から沸き起こった。

国歌斉唱のサクラセブンズ

 いきなり中国がトライを2本先取(0-10)。やはり女子セブンズアジアの盟主、中国の壁は高いか、と思わされそうになった。
 しかしサクラセブンンズは、獲得したペナルティから縦! 縦!と強く攻め上がり、右に展開。⑫秋田若菜がタックルを振り切ってトライ。一本取って終わりたかった前半終了間際に得点を挙げた。

 さらに後半開始直後にさらに一本、またもや⑫秋田がトライ。コンバージョンは惜しくも外れたが、10-10の振り出しに戻した。

疾走する秋田若菜

 試合を終えたJAPAN男子が全員で日本コールを送るも、すぐさま熱狂の中国コールがそれをかき消す。興奮のスタンドの後押しを受け、中国15番が個人技で40mを走り切り、更に一本追加する。(10-17)

 その後日本はイエローカードを1枚受けて6人の苦しい時間も守り切り、前半残り時間僅かとなった時、⑤辻崎由紀乃が大きく縦に突進した。そのプレーで出来たギャップから右に展開。③大橋聖香が右端にトライを奪い、かなり厳しい角度のコンバージョンキック(谷山三菜子)も成功して17-17と再度追いついた。
 しかし最後の1秒、ホーンが鳴る直前に中国に一本とどめを刺されて試合は終了した(17-24)。

終盤の反撃。大橋聖香がトライを挙げた

 残念ながら準優勝に終わったサクラセブンズだが、体格、パワー、スピードにまさる中国女子を相手に、最後まで声の切れない連携の良さで互角の戦いを挑めていたと感じた。個で上回る中国、絆で勝負するJAPAN。アジアの闘いはまだまだ続く。

◆「娘は俺の誇りだよ!」


 大会初日の予選時、「勝つためには声援送らなくちゃ!」と周囲に国旗を配っていたお父さん。話を聞くと、娘さんが中国代表⑥王婉钰選手とのことだった。道理で熱心に応援しているわけだ。

「娘が国家隊(ナショナルチーム)に入っているのは誇りだよ。え? ラグビー? 娘が代表に選ばれて観るようになったけど、激烈なスポーツだね。怪我しないか心配するけど、娘が打ち込んでるスポーツに反対しちゃダメだよ。親なんだから応援しないと」と終始ニコニコ笑顔で話してくれた。
 ピッチに立つ娘さんに声かけるとしたら? と尋ねたら「中国必勝!」と大きな声と笑顔で締めくくった。
 夜はさぞかし美味い酒を飲んだのだろうな。

子どもたちも熱心に応援

◆アジアラグビーセブンズシリーズ中国大会第2日/男子日本代表試合結果
カップ準決勝 日本 35-12 韓国
決勝戦 日本 19-24 香港

◆アジアラグビーセブンズシリーズ中国大会第2日/女子日本代表試合結果
準決勝 日本 10-7タイ
決勝 日本 17- 24 中国

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