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【Just TALK】「信じあえば、素晴らしいラグビーができる。これは共通点」。池透暢[車いすラグビー日本代表主将]
秩父宮ラグビー場の芝、空気は気持ちよかった。(撮影/松本かおり)

【Just TALK】「信じあえば、素晴らしいラグビーができる。これは共通点」。池透暢[車いすラグビー日本代表主将]

向 風見也

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 車いすラグビー日本代表の主将として今夏のパラリンピック パリ大会で金メダルを獲得した池透暢(いけ・ゆきのぶ)が、9月15日、東京・秩父宮ラグビー場でのパシフィックネーションズカップ準決勝前のセレモニーに登場。直後に会見した。

 この日に先立ち、男子15人制日本代表の活動拠点でスピーチもしていた。伝えたメッセージは。

——帰国からスピーチに至るまでの経緯は。

「廣瀬さん(俊朗=現日本代表チームディレクター補佐)が車いすラグビーの認知をして下さっていて、代表戦でも試合会場の一部でブースを設けていただくなどの関わりがありました。そして、僕たちのパラリンピック決勝戦の前に 15人制の日本代表の皆様から頑張れというエールのメッセージビデオが届き、それを皆で共有。つながりを感じ、力をいただいて、金メダルを獲ることができました。感謝の気持ちを持っていたなか、(15人制日本代表側から)『スピーチをしてくれないか』とお声がけいただき、私が伺いました。

 スピーチでは、交通事故からの半生を話させていただきました。自分は何もできない人間になってしまった。どん底だった。そこから2 年で 40 回の手術を経て、そこから嫌いだった自分を好きになるためのステップアップ…。困難…。努力をして目標達成するまでの道のり…。また、海外と戦うにはどんなマインドセットを持つ(ことが大事か)についても。

 主将の立川(理道)さんとも、少し話をさせていただきました。(会見後に観戦予定の試合では)キャプテンシーに注目したいです。

(スピーチ後は)4名の選手と食事をしながら、色んな話をしました。皆から『会長』と呼ばれている…そう、松岡(賢太)選手が後半から出てくるとのこと。試合途中から、チームにどんな働きかけをするのかも見ていきたいです」

——秩父宮の芝へ入って。

「体育館とは雰囲気が違いました。こういった環境で選手たちは戦っているんだな、幸せな瞬間だな、という風に思いました。これから日本代表の試合を生で見ますが、初めてです。

いろんなラグビーがあって、ハンディがあってもラグビーができるし、ラグビーによって受傷された方も(車いすラグビーへの挑戦は)諦めずにできる。簡単ではないですが、社会復帰して、またファンの方に自分の頑張っている姿を見せられるという最高の形もある。つながりを大事にさせていただきたいと思っています」

——15人制日本代表を率いるエディー・ジョーンズヘッドコーチとはどんな話を。

「私の試合を見て下さっていて、褒めていただきました。エディーさんが(その場で)話すすべての英語を聞き取れたわけではありませんが、私のスピーチに感銘を受けたとも言っておられました。以前から私もエディーさんの取り組みに興味を持っていました。メンタルトレーナーの荒木(香織=現体制のジャパンに入閣)さんのお話も聞いたことがあり、(自分たちで)真似たい部分があると思いながら過ごしてきました。素晴らしい出会いに感謝したいです」

すべての努力が結実した金メダル。(撮影/松本かおり)

——ラグビーと車いすラグビーの共通点は。

「(男子15人制日本代表では)全員が日本の文化で育っているわけではないなか、多様性の尊重が大事な要素になっていると感じます。そのなかにリスペクトがあり、信じあう繋がりが切れなければ、最後まで素晴らしいラグビーを展開できる。ここは、(自分たちと)共通点になっていると思います。

 今回は(15人制日本代表の)スタッフの方からも、(チームの)今後の進むべき方向、悩みについて聞かせていただきました。いずれは、自分も選手を支える立場になるかもしれない。そんななか、選手に何を大事にしてほしいのかを考える機会になりました」

——これから望む展開は。

「選手たちに『ラグ車』に乗ってもらうと、僕たちは彼らとラグビーができるんです。僕らは生身の身体だけではラグビーはできないけど、彼らに車いすに乗ってもらうだけで、僕たちは日本代表とラグビーができる。こんなに幸せなことはない。そうすることでお互いにいろんな気づきがあり、相乗効果を生み、社会にインパクトを示していけると強く思っています。社会には、当たり前にハンディのある人がいる。その事実を、スポーツを通して見せられたら。ともに何かをすることが、とても大切だと思います。ファンも交えて、『知る』という機会を増やせたら素晴らしいと思います」

——自身の今後は。

「自分はスポーツを通して成長させてもらった。スポーツの色んな場面で自分の感じたことを話しながら、スポーツの発展に貢献していきたいと思っています。

(パラリンピックが)終わったばかりで、本当にまずは休みたい。その言葉が心のなかから出てきて、メディアへもそう答えさせていただきました。ただ、歩みと挑戦を止めては衰退が始まるとも思います。やったことがない新しいことに挑戦したいです。

 パラスポーツにはいろんな競技がある。それらに関わりを持ち、知り、学校や企業で伝える。また、外国の方と接するために、英語などの学びにも取り組んでいきたいです」

 この日は日本代表がサモア代表に49-27で勝った。

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