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火花散るライバル対決。10番マッケンジー、15番ボーデンのオールブラックス、必勝態勢でワラビーズ戦へ
左端からSOダミアン・マッケンジー、FBボーデン・バレット、CTBジョーディー・バレット、HOコーディー・テイラー。(Getty Images)

火花散るライバル対決。10番マッケンジー、15番ボーデンのオールブラックス、必勝態勢でワラビーズ戦へ

松尾智規

 タスマン海峡を挟んでのライバル対決だ。
 ニュージーランド(以下、NZ)代表オールブラックスとオーストラリア代表ワラビーズの対戦は、ブレディスローカップをかけての戦いとなる(ワールドカップを省いて)。

 1932年から始まった伝統のブレディスローカップが近づくと両国とも盛り上がるが、今年は、お互いにここまで良い成績とは言えないから、やや盛り上がりに欠けている。
 特にワラビーズの不調の影響が大きい。ザ・ラグビーチャンピオンシップ(以下、TRC)、第4節(9月8日)では、アルゼンチンに27-67で大敗した。

 一方のオールブラックスも、今季ここまでのテストマッチで4勝3敗と、良い成績とは言い難い。TRC第3,4節では、南アフリカ代表スプリングボックス相手に2連敗(27-31/9月1日、12-18/9月8日)。いずれの試合もオールブラックスは、前半リードしながらも後半に逆転された。

 2戦目は、オールブラックス版のボムスコッドを形成して経験のある選手をベンチに置くなど、大きく動いた。しかし、結果は変わらず。イエローカードをもらうなど規律面で乱れ、そのあとに逆転された。
 2試合連続して同じ内容で敗戦したことから、NZ国内のメディア、ラグビーファンからは、厳しいコメントが飛んだ。

◆新人シティティ6番継続。定まらぬバックスリー


 TRC第5節、ワラビーズとの1戦目は、9月21日、シドニー(オーストラリア)時間の午後3時45分(日本時間午後2時45分)キックオフで開催される。
 この試合に挑むオールブラックスの23人のメンバーが9月19日に発表された。

 オールブラックスのヘッドコーチ(以下、HC)、スコット・ロバートソンをはじめとしたセレクター陣が選んだメンバーは、前節から4人の変更となった。

 FW陣から見ていくと、唯一の変更は、首の負傷が癒えたPRイーサン・デグルートが先発メンバーに戻って1番を付ける。これにより、絶好調のHOコーディー・テイラー、PRタイレル・ロマックスし、不動のフロントローが復活した。

 LOは、キャプテンのスコット・バレット、トゥポウ・ヴァアイのコンビが継続する。
 ヴァアイは今年に入ってラインアウト、ブレイクダウンで成長が見られ、ワンランク上がった。ワラビーズ戦でもアピールすれば、今後もスターターの座を確保できるだろう。

 注目されていたFW第3列のメンバーは、6番ウォレス・シティティ、7番サム・ケイン、8番アーディー・サヴェアを据え置きとした。
 話題となっているのは、新人のシティティだ。前節のスプリングボックス戦で序盤にタックルミスをしたが、その後しっかり立て直す精神面の強さも見せた。初めての先発ながらも、持ち味のボールキャリーで何度もディフェンスの穴をこじ開けた。結果、ロバートソンHCを満足させて6番ジャージを2試合連続で任された。

 新人ながら南アフリカの地で素晴らしいパフォーマンスを見せたシティティに対し、ロバートソンHCは「もう一度やってみろ」と発破をかけるような発言をした。

 BKでは前節に引き続き、9番にコルティス・ラティマ。10番ダミアン・マッケンジのチーフスコンビが継続となった。
 スプリングボックス戦の2試合で、タイトなテストマッチにおいてのマッケンジーの評価はNZ国内において厳しかった。それだけにボーデン・バレットの10番説もあちらこちらで囁かれた。しかし首脳陣は、変わらずマッケンジーに10番を任せた。興味深い判断だ。

 最も注目されたバックスリーは、ケガで前節を欠場したケイレブ・クラークが先発メンバーに戻った。11番を付けることは明るい材料だ。
 前節はベンチに降格となったボーデン・バレットは、ワラビーズとの初戦で再び15番をつける。これにより、前節FB(15番)で先発となったウィル・ジョーダンが再びWTBの位置に戻る。

All Blacksの『X』より

 このセレクションは、ジョーダンには、タイトなテストマッチではFBは任せられないという判断なのかどうかが気になる。ロバートソンHCのバックスリーのセレクションが定まらないことは、NZ国内のメディア、ファンの間で話題となっている。

 それに対してロバートソンHCは、「ケイレブ(クラーク)が復帰して、ボーデン(バレット)をFBに、ウィル(ジョーダン)をWTBに置くのが最もバランスが取れていると我々は考えた」と説明した。
 現時点ではバランスにより、ジョーダンをFBで起用する選択もまだ残っているようだ。

 デグルートの先発復帰によりタマティ・ウイリアムズがベンチに降格となった。しかし南アフリカとの2試合で、十分に戦えることを見せた。後半からのインパクトに期待が持てそうだ。

 ほぼ毎試合ベンチ入りしてきたPRフレッチャー・ニューウェルのふくらはぎの負傷により、今季の新人、パシリオ・トシが2回目のベンチ入りを果たした。トシは、ウイリアムズと同じく140キロのサイズを活かしたボールキャリーが魅力だ。モバイルに動けるPRとしても首脳陣の評価は高い。ぜひ注目したいところだ。

 クラークのケガからの復帰と、FBバレットの先発復帰により、前週はWTBで先発したセブ・リースがベンチに配置された。前戦はベンチスタートだったWTBマーク・テレアは、メンバー外となった。

◆NZ人同士の指揮官対決にも注目


 ワラビーズのHCは今季から、NZ出身の名将、ジョー・シュミットが務めている。同氏は、2013年から2019年の間にアイルランド代表のHCだった。
 シックスネーションズで3度の優勝。2016年にはシカゴで40-29とオールブラックスから勝利するなど、アイルランドを強くしたと言われている名将だ。

 そんな名将のシュミットに対してオールブラックスのロバートソンHCは、「2週間前にアルゼンチンでオーストラリアが記録的な大敗を喫したことは関係ない。同じNZ人でコーチのシュミット氏と直接対決することにエキサイトしている」と語り、「彼はチームの準備の仕方を知っている。とんでもない技の引き出しを持っているし、ラグビーの高い知性を持っている」。
 シュミット氏をとても警戒している発言をした。

 オールブラックスは、2003年に2連勝(50-21、21-17)してブレディスローカップを奪取してから、21年間カップを保持したままだ。
 しかし、1998年~2002年の間はワラビーズが保持していた。その期間は、ロバートソンHCが現役時代、オールブラックスの選手として活躍していた時期と重なる。すなわち、ロバートソン HCは、ブレディスローカップを一度も手にした事がない。その悔しい想いを晴らしたい気持ちは当然あるはずだ。

 オールブラックスが初戦で勝った時点で、今年もブレディスローカップの保持が決まる。そしてそれは、連敗が止まることね意味する。そうなれば、NZのラグビーファンが感じている不安も多少は和らぐはずだ。

 一方のワラビーズがブレディスローカップを奪うには、勝ち越しがマスト(2勝、または1勝1分け)。初戦を勝たないことには、何も始まらない。
 アルゼンチン戦の大敗から名誉挽回も必須となっている。モチベーションの高さは相当なものと予想できる。

 ブレディスローカップの初戦は、毎回凄まじい試合となる。ライバル関係には、それまでの足取りは関係ない。白熱した試合が見られるだろう。

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