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勝ち方を求めるのは、若いチームには酷なのか。
しかし、圧倒して勝ってほしいと願うのが多くのファンの本音だっただろう。
常に先手を取り、17点差をつけた。トライ数は相手の3に対して5。
勝敗の行方に心配はなかったものの、またも満点のパフォーマンスではなかった。
9月7日(土)、熊谷ラグビー場。パシフィックネーションズカップ2024の日本代表にとっての第2戦、アメリカ戦は、41-24で赤白のジャージーが制した。
エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ(以下、HC)率いる日本代表は、今季ここまでのテストマッチ全4試合で、試合の序盤を制してきた。
しかしこの日は、ミスもあって超速ラグビーがぶつ切りとなった。
前半4分過ぎに相手反則によりPGで3点を先制するも、なかなか本来のテンポでゲームを進められなかった。
14分過ぎ、ラインアウトからSO李承信が防御裏にショートキックを上げ、それをCTBディラン・ライリーがダイレクトキャッチ。CTBニコラス・マクカランにつないでトライを挙げた。
コンバージョンキックも決まり10-0とするも、17分にはスクラムでの反則から3点を返された。
その5分後には敵陣深い位置でのスクラムから高速でフェーズを重ね、LOサナイラ・ワクァがインゴールにねじ込んで、さらに2点も追加。17-3と差を広げた。
それでもペースは上がらない。
30分には反則後のPKで自陣深くに入られて、ラインアウト後のモールを押し切られる。
難しい位置のGも決められてスコアは17-10となった。
日本も38分にスクラムから攻め、反則を誘う。その後の速攻からHO原田衛が右隅に飛び込んだ。
SO李承信のGも決まり、前半を24-10で終えた。
後半4分、パスが乱れてボールをうしろに下げられたところから、CTBディラン・ライリーが70メートル近くを走り切った。
Gも決まり31-10としても一気に突き放すことはできなかった。
11分と18分にアメリカのWTB、ネイト・オウグスバーガーにインゴールに入られた。
反則から攻め込まれたのは両局面とも同じ。ラインアウト後のモールやFK後にFW戦で圧力を受けて、ショートサイドを攻略された。
31-24まで迫られた。
日本は22分にPGでリードを広げ、26分にはラインアウトからの攻撃でSOに入った立川理道が突破。オフロードパスをつなぎ、CTBライリー、WTBツイタマでトライラインを越えた(Gも含め7点追加)。
41-24のファイナルスコアを刻んだ。
勝利も、スッキリしないのは、相次いだミスと、同じ失点パターンの繰り返しからだ。
暑さでボールが滑りやすい。キックを使ったことは奏功した。
エディー・ジョーンズ ヘッドコーチは、課題がまだまだ山積みと認めた上で、SH藤原忍、SO李が良いプレーを見せてチームを一歩先に進めてくれたと話した。
藤原自身も試合直後のインタビューで「アメリカはフィジカルが強い。受けるのではなく、自分たちから攻めるマインドセットでプレーした」と話した。
ただ、モールを押し込まれた後にショートサイドで2トライを奪われたことについては、SHが状況を見て周囲を動かす必要があるとした。
「前を見て、相手のアタックの枚数を数えるなど、そこは9番の役割。藤原はアタックが得意なプレーヤーとして起用しています。ディフェンスのオーガナイズは今後の本人の課題でもあるし、チームとしても取り組みたい点です」
李はキックを巧みに使い、精度も良く(5G2PGすべて成功)、距離も出た。さらに、試合途中からFBも経験できたことはチームにとっても収穫だった。
所属チームで15番を付けてプレーした経験が生きたという本人は、「コミュニケーションを取りながら、これからも10番以外のポジションでもプレーしていきたい」。キックについては、「練習から継続がうまくいかないときにはどんどん蹴っていこうと話していたのでうまくいった」と説明した。
マン・オブ・ザ・マッチのライリーについてジョーンズHCは、「もっともっとどう試合に絡んでいくか考えてほしい」と話すも、「ウイングのようなスピード、センターのストレングスもあり、世界一の13番になれる」と、チームに何度も勢いをもたらしたミッドフィルダーを高く評価した。
後半12分からピッチに入った立川理道主将は、7点差に迫られた後のラスト20分をハードに戦ったフィニッシャーたちのパフォーマンスを称え、自分の仕掛けから生まれた後半26分のトライについては、こう説明した。
「前半にも一度やったプレーでした。相手がどう動いてくるか、と考えていて、自分の前が空いたので出ました。うまくいってよかった」
スピードで振り回すプレーもいいが、このシーンのように、駆け引きとコンビネーション(周囲の呼応)で奪うトライは魅力的。
超速以外の日本らしさも、さらに積み上げていってほしい。